気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

河合隼雄先生ご逝去

2007-07-20 10:21:38 | つれづれ
留守電に聞き知らぬ声ご予約の『大人の友情』取り置いてます
(近藤かすみ)

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きのう河合隼雄先生が亡くなられた。去年から闘病されていると聞いていたので、いずれこういう日が来ると思っていたが、とうとう亡くなられてしまった。ゆうべは気がつかなくて、朝刊を見てはじめて知った。

実際に近くでお会いしたことはなく、倒れられる前に国際会館での、家田荘子さんとの対談を聴きに行ったのが、お姿を見た最後だった。あとNHK教育テレビで、鬱病の関連の番組があり、たまたまそれを二回見ていたのだが、「カウンセラーというのは、患者さんと一緒に沈んで、困ったもんですな・・・と共感することが大事。そういう患者さんが俳句や短歌を作って、人に褒められて回復していくことがある」とおっしゃっていた。

子供が小さかったころ、子供を気楽に預けられるところもなく、夫は忙しく、孤独な子育てをしていたとき、河合先生の本がとても励ましになった。ほとんどは図書館で借りて読んでいて、いま手元にあまり本は残っていない。いつか「母親が電話口で、うちの子はダメなんですよと、謙遜して言うと、それを聞いた子供は期待通りにダメになっていくから、そんなことを言っちゃいけない」と書かれていたのが、こころに残って、これは心掛けて来た。子供の愚痴は子供のいないときに、言うのである。

↑の歌は、おととし作った歌で、自分でも気に入っているので、ブログのタイトルの横に置いている。解説をつけていなかったが、この『大人の友情』は河合隼雄先生の著作である。この歌を作ったことがきっかけで、歌のなかに本の名前を読みこむというアイデアを得た。去年の題詠ブログ100首は、この手で〆切ギリギリで100首を詠むことが出来た。

河合先生から、教わったことはたくさんあって言い尽くせない。なにしろたくさんの著作があるから、これからも何度でもくりかえして読み返すことが出来る。そう思うとさみしいが、救われる。心からご冥福をお祈りします。

鶸色のマントを纏つた少年がたうたう迎へに来ちやつたんだね
(近藤かすみ)

雀の帷子

2007-07-20 00:22:44 | つれづれ
おかあさんおやすみなさいと甘き声に息子言ひて去る何のつもりか

梅雨の日に葉桜暗しわがために特濃牛乳買ひて戻り来

鋪道の木の根かた根かたをやはらかくつつみて青し雀の帷子(かたびら)

きれぎれに残るは石けりの線ならず阿弥陀籤なり夕暮れの路地

良からずと思ひゐしうた良く見えてくる晩夏(おそなつ)のこころ弱りに

(花山多佳子 春疾風 砂子屋書房)

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花山多佳子の歌にくり返し出てくるのが、植物と家族。『春疾風』では十八歳の息子さんも、次の歌集では家を出られたようだ。母親にとって息子というのはなんとも厄介であり、可愛い存在。しっかりしてほしいのはもちろんだが、なんとなく、そのままでいいよ・・・と思っている。