久々に見ました。
ゲーリー・フィッシャー、トム・リッチーらと肩を並べるMTBレジェンド、
ジョー・ブリーズです。
ブリーザー号といえば、MTBの歴史を語る上で外せない存在です。……なのに何故これほど他の人間に差を付けられているのか?
まあ、商売が下手なんですね(苦笑)。
10年近く前にも生産拠点を台湾に移し、捲土重来を図ったときがありましたが、こけました。
結局当時の幻影が吹っ切れなかったんですね。そう思うと、リッチーやフィッシャーは早々にスチールに見切りを付けていましたね。出回っていませんが、リッチーの最新作はチタンですし。フィッシャーはとうの昔にカーボンですし。
ロードにせよ、MTBにせよ、良くも悪くもスチールは比較的安価に製作できると言うこと以外、メリットが無くなってきています。『剛性』『軽さ』『振動吸収性』の三大要素を高い次元でこなすことが出来なくなっているのです。
デザイン的に制限を受けているのも、大きな発展阻害の要因です。スチールバイクを望む人は古典的なスタイルを望みます。それは美しいと私も思いますが、オーバーサイズ化や断面積の拡大など性能向上に繋がる工作を拒絶してしまっているのです。これは厳しい。
なにより、自転車の命と言われたフロントフォークをカーボンに置き換えた時点でスチールの性能向上は停止しているのです。ほとんどのメーカーがオフセットが一種類しかないフォークを使っています。本来ならオフセットはフレーム製作者のノウハウの結晶なのです。それがバリエーションがなくなっても尚高機能と言うところに素材間の壁が見えます。
更に言うなら、素材自体の振動減衰性能はスチールはそんなに高くありません。むしろアルミの方が高いのです。では何故スチールは体に優しいと呼ばれるのか? それは偏に靱性のおかげです。この特性がアルミやチタンより優れているのです。ただ靱性は変形の許容量こそ大きいですが、振動減衰性とは関係ありません。ノーマルケージの1インチヘッドスチールバイクに乗った人なら、時速80キロくらいで走るとフロント周りがびびりまくり、安定させるのに非常に筋力が必要であることを知っているはず。これは剛性不足と振動をうまくいなすことができないことに由来します。
こういうところには気をつけたいモノです。
ステンレスや単分子スチールなど未来のある技術はありますが、まだ先の話です。今は機材としてのスチールはほぼ存在しません。趣味的な製品にはありますけど。スチールバイクの全盛期はトーマス・フリシュクネヒトがリッチーバイクを降りたときかな? と個人的には考えています。
とまあ、ちょっとジョーをいじめすぎましたか?
ブリーザーエンドなど優れた製品も作っていましたから、彼の目は曇っているわけではありません。
今回の復帰作はダウンチューブをヘッドチューブ側で曲げて、応力に強い構造にしたり、リヤ三角のなかにディスクブレーキを配置するなどなかなか考えらています。
ですが長いステムが付いていることからも、やはり考え方は少々古いようです(苦笑)。
ピュアクロカンではなく、ホビークロカンとでも呼ぶようなジャンルのバイクを作ってくれればまだ食い込んで行けると思うのですが。