その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ジョナサン・ノット/ 東京交響楽団/ 東京オペラシティシリーズ

2014-04-28 20:23:46 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 東京交響楽団の新音楽監督ジョナサン・ノット氏のお披露目コンサートに行って来ました。前監督スダーン氏と東響は随分良い関係だったようですが、まだ私は行くチャンスがありません。東響は良く新国立オペラのピットで聴かせてもらっているし、東京ってオーケストラの数、多過ぎで、とてもどれもこれもフォローできないですよね。今回は、ノット氏の就任披露ということで、きっと気合の入った演奏会になるに違いないと、期待感を大にして東京オペラシティ―コンサートホールへ。

 プログラムも魅力的でした。定期演奏会でのお披露目公演が、いきなりマーラーの交響曲9番と聞いて驚きましたが、この日のプログラムはウェーベルン「管弦楽のための5つの小品」、シューベルト交響曲第4番、ブラームスのピアノ協奏曲第1番というドイツ・オーストリア・プログラム。これらの作曲家の組み合わせはありそうですが、曲の組み合わせはあまり無いのではないでしょうか。私は、ウェーベルンの「小品」は生体験済みですが、恥ずかしながら、シューベルト交響曲4番とブラームスピアノ協奏曲1番はともにナマは初めてで、こちらも楽しみにしていました。

 結果は・・・、非常に充実したコンサートで、今後の東響の更なる飛躍を期待させるものでした。ウェーベルンとシューベルトは、「作品のコントラストが明確になり、それぞれの全く違う個性が際立つから」(ノット氏のプログラム挨拶より)という理由で休憩なしで演奏されました。そのせいかは私には分かりませんが、シューベルト4番は聴きごたえありました。ノット氏の指揮は、曲の構造や輪郭が明確で聴きやすい。作曲者が「悲劇的」という副題をつけたとされている曲ですが、私にはむしろ豊かで、若いみずみずしさにあふれている音楽として聴こえました。ウェーベルンが20名弱のメンバーで「点描的」(プログラム「楽曲解説」)に奏でられるのに対し、シューベルトは3~4倍以上のフルオーケストラによる演奏ですが、シューベルトの方がずっと室内楽なまとまり、優雅さを感じるのは不思議でした。

 休憩後の、ブラームスのピアノ協奏曲第2番も、ノット氏の指揮は、ブラームスらしいスケール感や激情を持ちながらも、しっかりコントロールした理知的な風情を併せ持ち、音楽の良さを音楽にそのまま語らせるというアプローチにお見受けしました。ピアノ独奏の佐藤卓史氏を聴くのも初めてですが、柔らかで優しい音ですね。激しいところは激しいですが、過度にアクセントをつけることもなく自然体で、ノット氏の指揮とも合っていました。楽譜が読めない私が言うのも気が引けますが、「あれ、今のはミスタッチでは?」と思うところはあったのですが、熱演の中では気になるレベルではありません。

 空席が目立ったのは残念でした。私は1階席の後ろから2列目に陣取りましたが、私の前の列はまるっきり全部空いていました。全体でざっと7割ぐらいの入りでしょうか?せっかくの素晴らしい演奏会なのに何ともったいない。天気が良すぎて、みんなピクニックにでも行ったのかしら。それでも、終演後の拍手はとても大きいものでした。終演後すぐに席を立つ人もほとんどおらず、聴衆一同からノット氏熱烈歓迎の大きな拍手が続き、ホール全体が暖かい雰囲気に包まれていました。

 チケット大入り完売のコンビになる日は遠くないでしょう。


東京オペラシティコンサートホール
2014年04月27日(日)14:00 開演

出演指揮:ジョナサン・ノット
ピアノ:佐藤卓史
東京交響楽団

ウェーベルン:管弦楽のための5つの小品 作品10
シューベルト:交響曲 第4番 ハ短調 D.417 「悲劇的」
ブラームス:ピアノ協奏曲 第1番 ニ短調 作品15

*指揮者の意向により、ウェーベルンとシューベルトは続けて演奏

Tokyo Opera City Series No.79
Sun.27th April 2014, 2:00p.m.
Tokyo Opera City Concert Hall
Conductor = Jonathan Nott
Piano = Takashi Sato

A.Webern : 5 Pieces for Orchestra, Op. 10
F.Schubert : Symphony No. 4 in C minor, D. 417 “Tragic”
J.Brahms : Piano Concerto No.1 in D minor, op.15




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