その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

岡田暁生 『音楽の聴き方 聴く型と趣味を語る言葉』 中公新書

2009-11-28 07:26:58 | 
 最近ろくに本を読んでいないので、良い本に巡り合うわけもないのだが、久しぶりに、今の自分にぴったり腹に落ちる本に出会えました。ひたすら音楽を消費するだけの自分のためにあるような本。
 
 音楽の「語り方」、「聴き方」について、音楽を社会学的、歴史的、文化的に考察しつつ、指南してくれる本です。いちいち、うなずかされる箇所が多く、印をつけながら読んでいたら、印だらけになってしまいました。

 「はじめに」から少し抜粋しただけでも・・・

・「自由闊達に語り合えれば合えるほど、やはり音楽は楽しい。・・・。「聴くこと」と「語り合うこと」とが一体になってこそ音楽の喜びは生まれるのだ。」

・「音楽を語る言葉を磨く」ことは、十分努力によって可能になる類の事柄であり、つまり音楽の「語り方=聴き方」には確かに方法論が存在するのだ。

・芸術音楽の特異性は、単に「聴く」喜びを提供するだけなく、それについて「考え」「語り」「知る」楽しみの次元というものを、つまり「趣味や知恵を深めること」を当初より前提として創られている点にある。・・・批評や理論の次元を最初からある程度想定しつつ、音楽構成されている

・音楽受容には、ありとあらゆる次元における、隠れた「型」がある。・・・音楽形式とか、音楽に対する反応モードだけではない。音楽を上演する場についての型・・・音楽を語るロジックのそれ・・・音楽の文化的背景・・・

・自分自身の聴き方に偏差について幾分自覚的になることによって、もっと楽しく音楽とつきあうことが出来るのではないか

 ブログを通じていろいろな方のコンサート評を楽しく読ませてもらっていますが、この本を読んで改めて、それがなぜ楽しいのかがわかった気がしましたし、逆に自分の「よかった」「感動した」レベルの感想文は、もう少し勉強することによって、語り方が向上する可能性もあり、更に楽しみが深まる可能性があるようです。もう少し、「語り方」について学ぼうかと思い始めました。
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