
「音響」追求した作品を揃えた、凝りに凝った通向けプログラム。 私はどれも経験ない現代曲でもあり、 いっそ振替えようかとまで考えた演奏会だったが、 ホールに着いてみればなんと完売。 都響の聴衆というか日本のクラシックファンって、「通」 の層が厚いのね。怖いぐらい。
公演は少々私には難易度高すぎだったが、 純粋に響きの面白さは味わえ、 経験値が高まったので行って良かったというのが素直な感想。
冒頭の「ゴンドワナ」は、 SF映画の宇宙空間や海底世界の背景音楽として使われるような印 象で音の響きが異次元的。
二曲目の「重力波」 はステージ中央奥と1階左右の出入口扉前に陣取った( 私からはステージ向かって右側は死角で見えないが)、 3つの大太鼓が様々な音を発してホールの響きの場を作っていく。 「重力波」という標題がぴったりだ。
後半の「涅槃交響曲」は、鐘の響きをオーケストラが再現し、 男性合唱団が念仏コーラスを唄う。 まさに仏教の世界観を交響曲として表現する。オケの音は深遠で、 1階席の中央の横通路に金管やコントラバス、銅鑼も陣取り、 異空間を構築していた。合唱も抑制の効いた「念仏」ぶりで、 美しかった。
ただこれは個人的事情に基づく主観に過ぎないが、 環境的に幼い頃、仏教や念仏が身近だった私( 今は逆に遠ざかってしまったけど)には、 仏教の世界観を交響曲で表現することに、 違和感というほどでもないが、何か不思議な心持ちが湧いた。 マタイ受難曲を和楽器で演奏したら、西洋人はどんな心持ちになるのだろうか、などと余計なことを頭をよぎった。
演奏としては、都響の素晴らしさとともに、 下野さんの捌きが印象的。 リズムや強弱など複雑さ満載の現代曲をきちっと整理整頓して聴衆 に示してくれる。
終演後は、完売の聴衆席から熱い拍手だけでなく、声も飛んだ。 これも凄い。


第1020回定期演奏会Aシリーズ
日時:2025年4月30日(水) 19:00開演(18:00開場)
場所:東京文化会館
指揮/下野竜也
男声合唱/東京混声合唱団*
曲 目
トリスタン・ミュライユ:ゴンドワナ(1980)
夏田昌和:オーケストラのための《重力波》(2004)
黛 敏郎:涅槃交響曲(1958)*
Subscription Concert No.1020 A Series
Date: Wed. 30. April 2025 19:00 (18:00)
Venue: Tokyo Bunka Kaikan
Tatsuya SHIMONO, Conductor
The Philharmonic Chorus of Tokyo, Male Chorus *
Program
Tristan Murail: Gondwana (1980)
Masakazu Natsuda: Gravitational Wave for orchestra (2004)
Toshiro Mayuzumi: Nirvana Symphony * (1958)