その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

黒川敦彦『ソフトバンク「巨額赤字の結末」とメガバンク危機』講談社+α新書、2020

2021-02-02 07:30:03 | 

昨年、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)の巨大損失決算の発表があったので、その裏事情が知れるかと思い本書を手に取った。ソフトバンクだけでなく、ANA、日本製鉄、丸紅、イオンと言った日本の有数の企業の苦境もレポートされ、日本経済の厳しさや今後来るであろう金融危機に警鐘を鳴らす一冊である。

SVFについては、たいていは既知の話しであった。投資会社だから上手くいくときもあれば、失敗するときもある。ただ、ソフトバンクがもはやToo big to failとも言えるような規模になっていることや、みずほ銀行が孫氏個人に相当お金を突っ込んでいるということはあまり認識してなかった。よく考えてみれば当たり前だが、創業者である孫さんはソフトバンク等の持株で年間100億円相当の配当金を個人で貰っているという。スケールが桁違いすぎて、笑ってしまう。

私にとって特に新しかった情報は、リーマンショックの原因となったサブプライムローンを使った金融商品CDO(Collateralized Debt obligation:債務担保証券)と似たような金融商品CLO(Collateralized Loan Obligation:ローン担保証券)なるものがアメリカで生まれており、農林中金、三菱UFJ、ゆうちょ銀行ら邦銀が夫々1兆円以上も保有しているとの情報だ。農林中金は8兆円もCLOを持っているという。リーマンショックについては、本や映画で少しかじった程度だが、CLOなる商品がまたもゾンビのように生まれていること自体が「さすが欲望の国アメリカ!」と思うと同時に、手を出している邦銀に危うさを感じる。

これら以外にも、一般会計よりもはるかに大きい特別会計の不透明さも再認識。改めて日本の経済・財政状況の厳しさが良く分かる。我々一般庶民は、一体どうしたらいいのだろうか?

筆者の主張するベーシックインカム制度の導入は、個人的には賛同できるものではないが、週刊誌を読むように読みつつ、今起こっていることを認識できるという点で有益な一冊だった。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« N響 1⽉公演、鈴木優人 指揮... | トップ | 相澤 冬樹『メディアの闇「安... »