アメリカ研究の大家、故・猿谷要氏によるアメリカ史についての覚書き(筆者は「アメリカの歴史についてのプライベートなノート」とあとがきで書いてます)です。1991年初版ですので、一昔前の本ですが、建国から20世紀後半に至るアメリカ史を、時代ごとの主要トピックスを追いながら、分かりやすく時代の空気を伝えてくれます。
読み物として気軽に読めます(失礼ながら、私はトイレにおいてゆっくり気ままに読み進めてました)。アメリカ研究家としての筆者の裾野の広さを感じます。全編を通じて、筆者のアメリカへの愛情が満ち溢れていて、歴史を書いているのですが、筆者の思いが良く伝わってくる本になっています。
その一方で、そのアメリカ愛ゆえにもう少し厳しい突っ込みがあっても良いのでは思ったところはありました。例えば、「第2次大戦期に収容所に強制的に入れさせられた日系人への差別的待遇」や「何故アメリカは日本に原爆を2度落したか?」と言った点について書かれているのですが、軽く触れたという程度で、批判的な検討や記述は見られません。このあたりはちょっと物足りなかった・・・
ただ、こうした点は差し引いても、アメリカ史の全体像を新書300ページ程度で俯瞰できる本書は、これからアメリカ史を学ぼうとする人や教養として知っておきたいという人に良い本だと思います。
2013年1月31日読了