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その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

至高の音楽体験! 東京春祭 ヴェルディ〈アイーダ〉(指揮:リッカルド・ムーティ) @東京文化会館

2024-04-21 10:40:55 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

私にとって今年の東京春祭、最後の公演。ムーティ御大によるヴェルディ〈アイーダ〉です。(今回は奮発して1階左側のB席。開演30分以上前から陣取りました。)

厳父とでも呼びたくなるようなムーティのオーラと緊張感溢れる統率の元、歌手陣、合唱、オケどれも超絶素晴らしく、胸一杯の至高の音楽体験となりました。

歌手陣は夫々が実力発揮でしたが、アムネリスを演じたユリア・マトーチュキナさんが演技・歌唱とも群を抜いていました。この方、昨年の春祭の〈仮面舞踏会〉でも占い師ウルリカ役で存在感抜群でしたが、今回は題名役以上に物語の中心に座った感じで、声量たっぷりの美しい歌声と熱い演技を披露し、強い印象を残しました。

アイーダ役のマリア・ホセ・シーリさんは声量的にやや物足りさは感じたものの、最終幕では気持ち入った歌唱で涙を誘います。ラダメス役のルチアーノ・ガンチさんはクロディアン・カチャーニさんの代役での登場。キャラ立ちしたところは無いですが、柔らかく、伸びやかなテノールを聴かせてくれました。

日本人歌手陣では、エジプト国王を演じた片山将司さん、伝令の石井基幾さん、巫女の中畑有美子さん、ぞれぞれ要所をしっかり務め、いい仕事をされていました。特に、中畑さんは私は初めてお聴きする方なのですが、伸びある美しいソプラノで、今後マークしたい歌い手さんです。

個々の歌手陣を上回る存在感だったと感じたのは東京オペラシンガーズの合唱。総勢100名程度のメンバーの個々の歌声が聴きとれると思えるほどの個の歌声と集団の力が掛け合わされて、パワフルかつ美しい合唱を披露。出番が多い上に、盛り上がり処での仕事が多いこの作品。今回の公演の中での貢献度は計り知れません。

そして、ムーティが指揮する春祭オーケストラの演奏も素晴らしかった。緊張感と集中度の高いオケの気合が聴衆にもダイレクトに伝わります。その演奏は、繊細な弱音を奏でるところ、豪快に鳴らす場、場面場面での音楽が日本刀の名刀のように切れ味が抜群で研ぎ澄まされた美しさです。オペラとしてのアイーダは、過去に何度も鑑賞していますが、この場面の音楽はこんな美しい旋律だったのかとか、今更のように気づかされるところばかり。今まで如何に豪華絢爛な演出に目を奪われて、舞台を観てはいるが、音楽はろくに聴いていないことが判明し、目から鱗が取れる体験でした。

ムーティ御大が言う、「ヴェルディを楽譜通りの演奏する」ということが具体的にどういうことなのか全く分かってない私が言うのも変ですが、作品の素晴らしさが浮き出るような演奏でした。音が良く届く1階席を頑張って購入して良かったと心底思いました。

終演後は、最終幕での緊張感が一挙に解き放たれ、文化会館の隅々にまで広がる感動の拍手と歓声。私も言葉にできない万感の思いを抱えて、拍手を送ります。こんなアイーダは今後、体験することがあるのだろうか。一生の宝としたい音楽体験でした。

(2024年4月20日)

 

 

東京・春・音楽祭

《アイーダ》(演奏会形式/字幕付)

 

日時・会場
2024年4月20日 [土] 14:00開演(13:00開場)
東京文化会館 大ホール

出演
指揮:リッカルド・ムーティ
アイーダ(ソプラノ):マリア・ホセ・シーリ
ラダメス(テノール):ルチアーノ・ガンチ
アモナズロ(バリトン):セルバン・ヴァシレ
アムネリス(メゾ・ソプラノ):ユリア・マトーチュキナ
ランフィス(バス):ヴィットリオ・デ・カンポ
エジプト国王(バス):片山将司
伝令(テノール):石井基幾
巫女(ソプラノ):中畑有美子

管弦楽:東京春祭オーケストラ

合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:仲田淳也

曲目

ヴェルディ:歌劇《アイーダ》(全4幕) [試聴]

上演時間:約3時間20分(休憩2回含む)

 

Spring Festival in Tokyo

"Aida"(Concert Style/With Subtitles)

 

Date/Place
April 20 [Sat.], 2024 at 14:00(Door Open at 13:00)

Tokyo Bunka Kaikan Main Hall

Cast
Conductor:Riccardo Muti
Aida(Soprano):Maria José Siri
Radamès(Tenor):Luciano Ganci
Amonasro(Baritone):Serban Vasile
Amneris(Mezzo-soprano):Yulia Matochkina
Ramfis(Bass):Vittorio De Campo
Il Re d’Egitto(Bass):Masashi Katayama
Un messaggero(Tenor):Motoki Ishii
Una sacerdotessa(Soprano):Yumiko Nakahata

Orchestra:Tokyo-HARUSAI Festival Orchestra

Chorus:Tokyo Opera Singers
Chorus Master:Junya Nakata

Program

Verdi:”Aida”

Approx. 3 hours 15 min. including intermissions.

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