
定期演奏会が休止となる歴史的なシーズンとなった今シーズンもいよいよ最終月です。この日は、昨年12月に素晴らしいロシアプログラムを披露してくれた井上道義さん(以下、ミッチー)が再登壇。プログラムにはベートーヴェンの交響曲第3番〈英雄〉があったので、ミッチーがどんな〈英雄〉を聞かせてくれるのか、楽しみ一杯でサントリーホールへ出かけました。席は最近のお気に入りエリアである舞台後ろのP席。
その〈英雄〉ですが、前半の第1、2楽章はペースがけっこうスローだなと思ったぐらいで、意外とスタンダードな王道の〈英雄〉がむしろサプライズ。N響の木管陣のソロの響きが実に美しかった。そしてミッチーらしく、出色だったのは第3、4楽章。これほど軽快で、ノリノリな舞踏的な演奏は、過去に聴いた記憶がありません。曲自体は何回も生、録音問わず聴いていますが、この楽章がこんな舞踏を思わせるような響きと香るような優美さをもって聴こえたのは初めて。もっとも、この日の曲解説には、「この(第4)楽章の「軽さ」は交響曲の終楽章としてはかなり異質」と書かれているぐらいなので、常識の範囲なのでしょうが、今まで私はよっぽど捻くれた聴き方をしていのでしょう。
ミッチーのジェスチャーや表情と一緒に演奏を味わえるのもP席ならではのお値打ちです。体一杯を使って音楽を創り上げる歓び表すミッチーを、同時体験できるのは本当に楽しい音楽体験ですした。
前半のシベリウス交響曲第7番は私自身全く初めて聴く曲です。冒頭から様々な弦楽器、管楽器が奏でる、落ち着いた、やや重い感じの音楽が続き、曲解説で重要なポイントとされるトロンボーンのソロに続きます。この辺りまではしっかり聴いていたのですが、公演前に食した美味しいラーメンによる血糖値スパイクにより、この後、暫し撃沈。直ぐに覚醒したものの、集中力がイマイチで、音楽を捉えきれないままに終わってしまいました。居眠りが見つかって、ミッチーに怒られるんではないかとひやひや。
ワクチン接種を終えた層がホールに戻りつつあるのか、今日は普段よりいい入りでした。ミッチーの盛り上げもあって、終演後には大きな拍手と満足感一杯の笑みが溢れていたサントリーホールでありました。
NHK交響楽団 6⽉公演 サントリーホール
2021年6月6日(日)2:00pm
サントリーホール
指揮:井上道義
シベリウス/交響曲 第7番 ハ長調 作品105
ベートーヴェン/交響曲 第3番 変ホ長調 作品55「英雄」