私にとっては今シーズン最後のN響定期演奏会。雨で客入りが心配だったが、ブルックナー効果なのか、ぱっと見9割以上の客席が埋まっており喜ばしい限り。最近、寂しい入りの演奏会が続いていたから。
大入りの聴衆に応える素晴らしい演奏が前半から続いた。一曲目のウェーベルン編曲のバッハ「リチェルカータ」は初めて聞いたが、のっけから極上の音楽だった。音楽自体の持つ美しさをパーヴォとN響はそのままに聴かせてくれた。
続いてのベルグのヴァイオリン協奏曲の独奏はシャハムさん。N響とはもう何回も共演をしているようだが、私は初めて。ただ、今となっては殆ど記憶が飛んでいるが、本ブログによると(検索できるのがブログ日記の最大のメリットだ)、9年前にミネソタ管とのコンビで同じ曲をプロムスで聴いていた。
シャハムの演奏スタイルは前後左右に小刻みに動く。指揮者やコンマスとぶつかりはしないが心配になるほど。その落ち着きのない(失礼!)演奏フォームから紡がれる音色は、「強い」「大きい」という類のものではないのだが、良く鳴り、響き、美しい。N響との組み合わせも素晴らしく、ヴァイオリンとオケの音がホールの中で溶け合い、化学反応を起こしながら移ろっていく。ブルグのこの曲は、聴き慣れないとなかなか難しいと思うのだが、至福の時間だった。
アンコールでバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番から「ガヴォット」が演奏された。もうヴァイオリン演奏の王道ともいうような堂々たる演奏に、観衆一同固唾をのんで聞き入り、大感動。終演後は大きな大きな拍手が寄せられた。
後半はブルックナーの交響曲第3番。ブルックナーはどちらかと言えば苦手科目な私には、初めて聴く曲。印象に過ぎないが、パーヴォはいつもながら、明快に交通整理して、オケがそれにしっかり反応している。クリアかつ明快で聞きやすいので、初めてでも迷子にならない。N響も個々のパーツでは外したところもあったように聴こえたが、合奏力の強さを見せつけた。今日はゲストコンサートマスターとして、ミュンヘン・フィルのコンサートマスターロレンツ・ナストゥリカ・ヘルシュゴヴィッチさんが入っていたが、この方の音色も際立っていた。さらに、これまたゲストの外国人トップであったビオラも素晴らしく第3楽章など大いに盛り上げてくれた。終演後の大きなコールや拍手を聴く限り、ブルオタさん達も満足していた様子である。
シーズンエンドの演奏会にぴったりの迫力ある熱演で締めくくってくれたパーヴォ、N響には感謝で一杯だ。ほぼ満員のホールからの拍手はここ数回の演奏会よりも一回り大きく、やっぱり入りの良い演奏会は気持ちよいと思った。SNSを眺めているとパーヴォの指揮は好き嫌いが分かれる傾向もあるような気がするが、私個人は、N響は確実にレパートリーを広げ、レベルも上げていると思う。来シーズンも大いに期待してます!
第1916回 定期公演 Cプログラム
2019年6月15日(土) 開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール
バッハ(ウェーベルン編)/リチェルカータ
ベルク/ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出のために」
ブルックナー/交響曲 第3番 ニ短調(第3稿/1889)
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ヴァイオリン:ギル・シャハム
No.1916 Subscription (Program C)
Saturday, June 15, 2019 3:00p.m.
NHK Hall
Bach/Webern / Ricercata
Berg / Violin Concerto
Bruckner / Symphony No.3 d minor (Third Version / 1889)
Paavo Järvi, conductor
Gil Shaham, violin