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その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

綾ベン企画 VOL.14 『川のほとりで3賢人』  @下北沢 駅前劇場

2020-02-29 07:30:00 | ミュージカル、演劇

私の下北沢演劇祭の第2弾として、綾田俊樹 、ベンガル、広岡由里子の3人劇『川のほとりで3賢人』 を見てきた。東京乾電池ゆかりの芝居を見るのは初めて。

多摩川の河川敷で暮らすホームレスの男2人と市の「福祉課」の女性1名が織りなす会話劇である。時たま、多摩川沿いをジョギングし、河川敷のテント小屋やホームレスの方を見かけるので、個人的にとっても身近に感じる設定である。ストーリーは、河川敷と言うのどかな環境の中で、リアルと非現実的世界の境界を渡るような緊張感を伴ったもので、次の展開が気なるままにあっという間に95分が過ぎ去った。

小劇場での芝居をここ数年いくつか見てきているが、やっぱり役者が違うなあと感じた。綾田俊樹、 ベンガル、広岡由里子というベテラン役者が織りなす演劇は、醸し出す雰囲気、間と言い、プロを感じる。自然体だが味がある。舞台がしっかり安定している。

結局最後まで「福祉課」の馬場マチコの謎は私には解けなかったので、観劇後にちょっと残尿感があったが、楽しい祝日の午後のひとときとなった。

 

綾ベン企画 VOL.14
『川のほとりで3賢人』

日程:2020年2月21日(金)~3月1日(日)<2月24日観劇>
会場:下北沢 駅前劇場

作:てっかんマスター
演出:平山秀幸
出演:綾田俊樹 ベンガル/広岡由里子(ゲスト)

劇団KEYBOARD「だめだこりゃの王国」 @下北沢 小劇場 楽園

2020-02-16 07:11:34 | ミュージカル、演劇

 数年前から私にとって2月は演劇月間である。演劇のメッカ下北沢で「下北沢演劇祭」なるものが毎年開催されており、そのいくつかに足を運ぶのが定例となっている。今年はまず手始めに、劇団KEYBOARDの「だめだこりゃの王国」という演劇を観に行った。劇団KEYBOARDなる劇団は初めて。

 どんな作品かは全くわからないのだが、タイトルに強烈に弾かれた。若い人には分からないだろうが、「だめだこりゃ」と言えばドリフ、ドリフと言えば大爆笑、なので思いっきり笑えそうという期待感たっぷりで小劇場楽園なるアングラ劇場に。

 そしたら全然違った。喜劇どころか、思いっきりシリアスである。確かにパーツパーツでちょっとした笑いはあるが、基本、最後の最後まで真面目、そして最後は悲劇ということで、期待を大いに「裏切られた」上演だった。(駆け出し演劇鑑賞入門者の私には未だ行く演目の選び方が分からない)

 ただ期待は裏切られたものの、それは私が勝手に描いた期待なので文句は言うまい。期待を差し置いて作品として見てみると、人の「幸せ」、人の行動の動機、(恋人だったり、家族だったりの)愛などについて考える機会を与えてくれた作品だった。ただ、私のような昭和残党には感情移入は難しいところはあるのも事実。世代によって受け止め方に差がでそうだ。

 役者さんたちはどなたも熱演。主演の冨士枝鈴花さんのがんばりがとりわけ印象的だった。

 それだけに、せめて結末はもう少しポジティブなメッセージで欲しかったかな。

2020年2月5日~16日


あひるなんちゃら 〈シュカシュカ〉 @下北沢 駅前劇場

2019-09-19 07:30:00 | ミュージカル、演劇

 連休最終日、家人にひっついて下北沢へ「あひるなんちゃら」という劇団の<シュカシュカ>という芝居を見に行く。
 この劇団の芝居は3月以来。前回の<ハルサメ>もタイトルでは何の芝居か見当つかなかったが、今回も同様、タイトルでは何だか分からないし、HP見ても筋らしきものは紹介されてない。収容人数100名弱ほどの小劇場は満員で熱気むんむんだったが、この人たち、どういうきっかけでここに居るのか不思議なぐらい。まあ、私もその一人なのだが・・・。
 前回同様、ありそうでなさそうとも言えるし、無さそうでありそうもいえるが、夏の終わりの日常の一コマをコメディタッチに描いた80分の劇だった。コアな出演者は前回も出ていた人たちで、見たことある役者さんたちが中心だ。何となく始まって、何となく終わる。プロットに特段大きな山場があるという感じでもないし、強いメッセージ性もない。なので、捉えどころがなくて、感想を書くのも難しいのだが、肩ひじ張らずに80分リラックスして楽しめると言うのは本当だ。もう公演期間終了したのでネタバレも許されると思うが、シュカシュカは「朱夏」で最後にきちっと落ちもある。
 前回も感じたが、見た目、表情などの豊かさ、演技のインパクトは、石澤美和さんが最強だ。この人が居るといないとでは、舞台の印象が大きく違ってくるに違いない。
 連休の最終日をリラックスして楽しませてもらった。

2019年9月16日(月)15:00 下北沢 駅前劇場

脚本・演出

関村 俊介

出演

根津茂尚
篠本美帆
田代尚子
野村梨々子

石澤美和
市川賢太郎(肉汁サイドストーリー)
上松コナン(暮らし)
おがわじゅんや(MCR)
川久保晴
辰木さえ
田村かなみ
ヒガシナオキ(gekidanU)
松木美路子
ワタナベミノリ(ECHOES)


演劇/串田和美 演出 「K.テンペスト2019」 @芸劇シアターイースト

2019-05-28 07:30:00 | ミュージカル、演劇

 「テンペスト」の観劇は初めて。串田和美さんという演出家も名前は存じ上げていたが、作品を観るのは初めて。そして、その演劇手法も初めて経験するもので、驚き・笑いの連続だった。

 まずはシアターイースト内に入ったらびっくり。舞台が中心に置かれそれを取り囲むように観客席が配置されているのは珍しくないが、加えて、舞台自体が舞「台」では無くて平土間で、その平土間にも観劇用のいすがいくつも置いてある。どっからどこまでがステージで、どこが座席なのかわからない。既に多くの人が平土間席に座っているが、役者っぽい人とおしゃべりしてる。この観客衆も実は役者のサクラ観衆なのかと勘繰ったが、どうも違うようだった。さらに、私は平土間でなく観客席の最前列に陣取ったが、開演前に役者さんが話しかけてくるのである。「大航海時代はスパイスがヨーロッパ人にはお宝だったのは有名ですが、一握りのスパイスと交換できるのは何だか知ってますか~」なんて感じである。引っ込み思案な私はもじもじしてたが、周囲のお客さんを含めとっても馴染んだ雰囲気になった。

 そしてそんなおしゃべりがいつの間にかテンペストの場になり劇が始まっていた。他の「テンペスト」を知らないので比較はできないが、多少の場面の組み換えが施され、とっても分かりやすい展開になっていた。加えて、ユニークなのは所々で、劇に関連するような、関連が無いような役者さんの小話が挿入される。(中動態(古代ギリシャ語あった受動態でも能動態でもない話法)や「小学校の給食で隣の男の子からもらったカレーのにんじんの重さの話とか・・・と書いても意味わからないだろうけど)。いわゆる正統派シェイクピア劇とは全然違うのだろうけど、肩ひじ張らず楽しめるのが嬉しい。

 役者さんたちも熱演である。主役フロスペローの串田さんは別格として、個人的にはキャリバンの武居さんの体当たり演技が受けた。この役、この劇の中でもかなり重要パートだと思うのだが、知能は高くない収奪された側の原住民の哀楽をうまく表現していたと思う。

 この作品、音楽の使い方が特色の一つでもある。尾引浩志さんという倍音音楽家(こういう呼び名があるのも初めて知った)が、民族楽器や「口琴」などを使って、不思議な世界を演出する。そして、妖精たちを中心とした静かで清いコーラスも場を盛り立てる。

 上演時間の2時間ちょっと、アットホームで暖かい、串田一座とでも呼びたくなるような家族的雰囲気に浸かり切って、とっても幸せな気分にさせてもらった。この演劇、この後セルビアとルーマニアにて海外公演を行うという。今日のノリが、どれだけ海外にも受け入れられるのかは分からないけど、是非、成功を収めてほしい。

 

5月26日(日)13:00
シアターイースト
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出・潤色・美術:串田和美
出演:串田和美 藤木孝 大森博史 松村武 湯川ひな 近藤隼 武居卓 細川貴司 草光純太  深沢豊 坂本慶介 飯塚直 尾引浩志 万里紗 下地尚子


演劇 天野天街「1001」 少年王者舘 @新国立劇場 小劇場

2019-05-25 08:00:00 | ミュージカル、演劇

 全く新しいものを観た。2月に下北沢で見た芝居で井村昂さんという役者が目を引いて、その時貰ったチラシで次回は新国立劇場で所属の少年王者舘なる劇団で登場するというのでチケットを購入していたのだが、言葉にできない衝撃的な世界だった。

 少年王者舘というの団体は、演出家・天野天街が率いる名古屋の劇団だそうなのだが、新国立劇場演劇部門芸術監督の小川絵梨子氏もファンだという。東京では、下北沢のスズナリとか、いわゆる小劇場で活動しているようだ。

 2時間15分ぶっ通しの演劇(丁度真ん中ぐらいで1分ぐらいの間は置かれる)は筋があるようで明確なストーリーはない。アラビアンナイトを想像させるテント小屋や建物のセットが置かれるが、時間や空間は曖昧。演劇は、短めの台詞が役者たちがユニゾンし、リフレインされて展開する。台詞はシェークスピアのように、少しずらされたり、同音異義でつながれたり、多彩な活用が施される。そして、照明や映像効果(プロジェクションマッピング)を最大限活用され、役者と観衆ともども現実と非現実的の間をさまよう。後半には幻想的な群舞も入り、その意味・場所・時間不明な世界は最高潮に達する。

 登場人物も多いこと、明確な主役・脇役というのも存在せず、いくつかのエピソードが自然と連携し流れていくので、個々の役者さんは見分けがつきにくい。井村さんの存在は明確に分かったが、いくまでも全体の中の一パーツに徹していた。終わってみると、自分はこの演劇で何を観たのかと問われても、できないもどかしさもある。その観劇体験の不思議さはこれまでの経験には無かったものだったが、間違いなく私好みの世界だった。

 また行かねばならない劇団が一つ増えた。

(2019年2月19日)

2018/2019シーズン
演劇「1001」
少年王者舘

スタッフ

作・演出: 天野天街
美術: 田岡一遠
美術製作: 小森祐美加 岡田 保
映像: 浜嶋将裕
照明: 小木曽千倉
音響: 岩野直人
振付: 夕沈 池田 遼
音楽:珠水
衣裳:雪港
小道具:る
演出助手山田 翠
舞台監督:大垣敏朗

キャスト

珠水 夕沈 中村榮美子 山本亜手子 雪港 小林夢二 宮璃アリ
池田遼 る 岩本苑子 近藤樺楊 カシワナオミ 月宵水
井村 昂
寺十 吾 廻 飛呂男 海上学彦 石橋和也 飯塚克之
青根智紗 石津ゆり 今井美帆 大竹このみ 奥野彩夏 小野寺絢香 小島優花
小宮山佳奈 五月女侑希 相馬陽一郎 朝長愛 中村ましろ 新田周子 一楽
野中雄志 長谷川真愛 坂東木葉木 人とゆめ 深澤寿美子


鈴木裕美演出、チェーホフ作 演劇「かもめ」 @新国立劇場 小劇場 

2019-04-21 07:30:00 | ミュージカル、演劇

チェーホフの代表的戯曲「かもめ」を見に行く。事前に原作を読んでおいたが、面白さがもう一つ分からなかったので、あの原作が演劇になるとどうなるのか楽しみだった。

思いのほか読書のイメージと舞台が違和感なく相似形だったのが第一印象だが、「あの下りはこういうことだったのね」と舞台を見て理解できたことも多かった。「かもめ」が喜劇と言うのが原作だけではピントこなかったのだが、確かに舞台を見ると登場人物のちょっとした台詞や会話の行き違いがユーモラスで、なるほどこれは喜劇なのだ(の一面もあるのだ)と肚に落ちた。

フルオーディションで選ばれた役者さんたちというのが、今回の公演の売りの一つであるのだが、確かに各役者さんが演じるキャラクターも(私が持った)原作のイメージを忠実に表していたと感じた。中でも、イリーナ・ニコラーエヴナ・アルカージナ役の浅海さんは、さすが元宝塚スターだけあって、オーラと存在感抜群で役柄へのはまり感が半端ない。イリーナの息子コンスタンチン・ガヴリーロヴィチ・トレープレフ役(主人公?)の渡邊りょうさんは、(地声なのか稽古のし過ぎかわからないが、)声が擦れているのが気になったが、純粋で芸術の世界に革新をもたらそうとする若き情熱が良く表れていたと思う。 

公演そのものはとっても満足だったたが、依然、私自身この戯曲をどこまで理解しているのかが疑問に残る。ロシア人やロシア社会の特性を反映しているためか、感情表現の大きさ(例えば、泣く場面がやたら多い)が気になるし、感情移入できる人物が見当たらない。喜劇と悲劇の組み合わせも単純脳の私にはむず痒い。この複雑さが、この作品の価値なのかもしれないが・・・。

観衆は若者から年輩の方まで幅広かったが、かなり演劇に造詣の深い人が多い雰囲気だった。どうやってこの演劇を楽しめばいいのか、御指南頂けないかなあと思いながら、劇場を後にした。私としては、お勉強モードとなった今回の観劇であった。

 

2018/2019シーズン
演劇「かもめ」 The Seagull
小劇場

2019年4月11日 観劇

作 アントン・チェーホフ
英語台本 トム・ストッパード
翻訳 小川絵梨子
演出 鈴木裕美
美術 乘峯雅寛
照明 沢田祐二
音響 長野朋美
衣裳 黒須はな子
ヘアメイク 宮内宏明
演出助手 伊達紀行
舞台監督 村田 明

【キャスト】
朝海ひかる
天宮 良
伊勢佳世 
伊東沙保 
岡本あずさ
佐藤正宏  
須賀貴匡 
高田賢一 
俵木藤汰 
中島愛子
松井ショウキ 
山﨑秀樹 
渡邊りょう


劇団東演創立60周年記念 『マクベス』 @シアタートラム

2019-03-29 07:30:00 | ミュージカル、演劇

 

   劇団東演の公演「マクベス」を観に行った。この劇団は全く初めてだが、創立60周年ということなので随分と歴史ある劇団だ。演出はロシアのV・ベリャコーヴィッチ(故人)という方によるものだが、チラシ等を読むと随分と有名な方のようである。

 舞台は、自称〈マクベス〉ファンの私にとって大満足のパフォーマンスだった。特に、印象的だったのは、演出と役者陣。演出はシンプルなプロダクションなのだけど、舞台の中央に設置した2組4枚の回転扉を上手く使って、空間や時間経過を表していた。照明はブルーとレッドを基調にし、舞台の陰影が良く表れていて迫力あるステージとなっていた。

 役者陣の熱演も大拍手。マクベス夫妻を筆頭に、ダンカン、バンクォーらの男優陣も舞台を引き締めた。特にマクベス夫人を演じた神野三鈴さんの台詞回しの切れの良さは、以前<シンベリン>で見た大竹しのぶさんを思い出した。表情の豊かさも素晴らしい。魔女たちを、筋肉隆々の男優さんたちが、後頭にお面を被り、背中を正面に向けて前後逆に演技するという形式はサプライズだったが、魔女たちの不気味さが良く表れていた。

 台本はシェイクスピアの原作をかなり現代語に即して訳してあり、シェイクスピアの舞台にありがたちな台詞の周りくどさはほとんど感じず、とても自然体。一方で、時間内に納めるためか、カットの場面や順番をいじったところが少なからずあったところは多少に気になった。(例えば、第5幕で夫人が死ぬ場面にマクベスが立ち会っていたり、その後随分時間が経ってからTomorrow Speechが始まったりとか)。

 当日券で駆け込んだのだが、渡されたチケットは前から3列目。シアタートラムも全くの初体験の劇場だが、下北沢の小劇場ほどではないけども収容200名程度の小劇場で、役者さんの唾や汗が飛んできそうな距離だった。芝居の醍醐味を満喫した2時間半だった。

 

2019年3月24日(日)~4月7日(日)  
シアタートラム 

 スタッフ/キャスト
【作】W・シェークスピア
【翻訳】佐藤史郎
【翻案・演出・美術・衣裳】V・ベリャコーヴィッチ(ロシア人民芸術家)
【演出補】O・レウシン(ロシア人民芸術家)
【照明】鵜飼守
【舞台監督】相川聡
【制作】横川功

【出演】

マクベス:能登剛
マクベス夫人:神野三鈴(オフィスゆっくり)
バンクォー:豊泉由樹緒
フリーアンス(息子):椎名啓介
ダンカン(国王):島英臣(俳優座)
マルコム(息子):木野雄大
アンガス、門番:星野真広
メンティース:小泉隆弘
レノックス:原野寛之
ケイトネス:奥山浩
ロス:蓮池龍三(バオバブ)
兵士、他:内田龍磨(Pカンパニー)
マクダフ:南保大樹
マクダフ婦人:岸並万里子
娘:三森伸子(Wキャスト)、村山かおり(Wキャスト)
刺客:M・インチン(ユーゴザパト劇場)
 藤牧健太郎
 上村遥
魔女:G・イオバッゼ(ユーゴザパト劇場)
 A・ナザーロフ(ユーゴザパト劇場)
 清川翔三
 藤本稜太(フリー)


あひるなんちゃら <ハルサメ> @下北沢 駅前劇場

2019-03-17 07:30:00 | ミュージカル、演劇

 期末仕事でこの数週間ボロボロでしたが、何とかいったんひと段落。下北沢演劇祭は終わってしまいましたが、やっぱり小劇場はいいなあということで、2月に続いてストレス発散に下北沢へ。本日のチョイスは、ローカルFM局で紹介されていた〈あひるなんちゃら〉という劇団による「ハルサメ」という演目です。

 飼い亀〈ハルサメ〉を巡るコメディ。上演時間80分弱の中で、主人公の部屋で固定された状況の中で、いくつかのコントのような会話劇が織り込まれ笑いを誘います。ストーリー自体のリアリティは?なところはありますが、きっとこの劇はストーリーで引っ張るものではないので、あまりこだわらない方が良いでしょう。

 その分、役者さんと脚本(会話)が重要となると思うのですが、主人公の園田裕樹さんと弟妹役の堀靖明さん、石澤美和さんの組み合わせにが、変な兄弟妹ぶりが発揮されていて楽しかった。それ以外の脇役陣も、夫々キャラが立っていて飽きさせません。上演時間目一杯楽しませてもらいました。

 80分弱の上演でチケット2000円のお手頃価格も嬉しいです。100名程度の小劇場で役者さんの息遣いまでも感じながら観る演劇は、普段足を運ぶ大ホールでのクラシックコンサートやオペラとは全く違った面白さ、楽しさがありますね。

 観劇後は、狭いけどレトロなジャズが流れるコーヒー屋さんで美味しいコーヒーをすすり、演目を振り返りました。いつ来ても、下北はいいなあ~。

 

<セットはこれだけ>

2019316日 15:00

あひるなんちゃら <ハルサメ>

駅前劇場

 

作・演出:関村俊介

出演:

園田裕樹

石澤美和

上松コナン(暮らし)

澤唯(サマカト)

堀靖明

松木美路子

宮本奈津美(味わい堂々)

ワタナベミノリ(ECHOES

根津茂尚(あひるなんちゃら)

野村梨々子(あひるなんちゃら)

<本日、井の頭線の下北沢駅がリニューアル・オープン>


東京シェイクスピア・カンパニー〈喜劇 ロミオとジュリエット〉 /第29回下北沢演劇祭

2019-02-26 07:30:00 | ミュージカル、演劇

 

毎年楽しみにしている下北沢演劇祭なのですが、今年はスケジュールがうまく合わず、1本のみの観劇となりました。家人がチョイスした〈喜劇 ロミオとジュリエット〉というお芝居です。東京シェイクスピア・カンパニーという劇団は名前も実演も全く初めてで、どんな芝居を見せてくれるのか、期待半分、怖さ半分で下北沢「劇」小劇場へ。

会場は名前の通り、通路にパイプ椅子も入れて詰め込んでもキャパは100名も入りそうもない劇場ですが、楽日ということもあってか満員で、熱気一杯でした。俳優さんの息使いまでも聞こえて来る前列2列目に陣取り。そして、上演時間の2時間5分ほど、時間を忘れて、ストーリー展開と俳優さんの熱演に釘づけになりました。間違いなく私好みの芝居。

好みのポイントは、生き延びたロミオとジュリエットのその後というユニークな舞台設定、シェイクスピア的セリフの豊かさ(例えば「ああ、どうしてあなた『が』ロミオなの!」には超笑ったし、「ロミオとジュリエット」以外のシェイクスピア作品(例えば「マクベス」)からの引用と思われるセリフもありました。きっと他にもいろいろあるはず)、また悪魔との契約という「ファウスト」的世界、そして今の世の中「地上のこの世こそが地獄」であると言う社会風刺を織り込んだ現代ネタと言ったところで、それらが絶妙にミックスされていました。

俳優陣も熱演でした。主演のお二人もさることながら、私的にはボス悪魔キャビレット役の井村昂さんの演技が舞台を引き締めかつ、喜劇のバランスをうまく取っていたように見えました。また、しんばなつえさんの侍女悪魔も雰囲気をコミカルにし良い味出してました。山丸莉菜さんが演じるロミオとジュリエットの娘ロザラインは、とってもチャーミングでいかにもの良家の乙女です。

リュートや太鼓を使った生演奏が入ったのには驚きました。ロンドンのグローブ座とかは大体この手の生音楽が入るので、こうした生演奏が入るだけで俄然、当地の雰囲気やシェイクスピア時代の雰囲気が出てきますね。

会場入りしてから知ったのですが、本劇は作家の奥泉光さんの原作ということです。この劇団とはつきあいが長いらしく、他にも、私の大好きな「リア王」「マクベス」を題材に書いた演劇が、既にこの劇団で実演されたとのこと。もっと、早くから知っていればなあと、後悔先に立たず。これからちょっと東京シェイクスピア・カンパニーは要フォローだなということで、さっそくTwitterでフォローさせていただきました。奥泉氏の脚本(?)も一冊に単行本化されているということなので、本も読んでみようと思います。

今年の「演劇祭」は一本しか見れなかったけど、「当たり」だったのでよかった、よかった。観劇後、下北沢の街をぶらぶらしてたら、糸魚川市の物産展をやっていたので、そこで糸魚川の日本酒の酒蔵5社飲み比べし、観劇アフターを楽しんで帰りました。下北はいいね。

 

「喜劇♥ロミオとジュリエット」

【場 所】  下北沢 「劇」小劇場

【出 演】  つかさまり / 大久保洋太郎  / 原元太仁 / 井村昂(少年王者舘) /    しんばなつえ / 三村伸子 / 山丸莉菜(流山児★事務所) / 山本悠貴 / 遊佐明史(SCARECROWS.LEG)

【作】  奥泉 光

【演出】  江戸 馨

【作曲・演奏】  佐藤圭一 

【舞台美術・イラスト】  山下昇平 【照明】  関 喜明 【舞台監督】  中原和彦

【衣装縫製】  嘉本洋子 【記録】  長田史野 【web担当】  吉田史明

【製作】  藤井由樹(Office Spring)・東京シェイクスピア・カンパニー>【製作協力】  菊地廣(K企画)

【製作総指揮】  江戸 馨

<糸魚川地酒五種セット/あんこう汁/小エビのフライ>


ナショナル・シアター・ライブ NTLive 《マクベス》

2019-02-23 07:30:00 | ミュージカル、演劇

ナショナル・シアター・ライブ(NTLive)で<マクベス>を見た。恥ずかしながら、NTLiveという企画、きっと何かで目にはしていたのだと思うのだが、全く認知していなかった。先日、松岡和子さんの「深読みシェイクスピア」が大変興味深かったので、久しぶりにまたシェイクピア劇が観たいなあと思い、探したところ偶然この企画とぶつかった。

驚いたことに、1週間限りの11回のみの上映ということもあってか、劇場のHPを見ていると予約開始日から早々に席が埋まっていき、連日満員なのである。私は予定をやりくりして、何とか最終日の上映に間に合わせた。満員のミッドタウン日比谷のTohoシネマは老若男女問わず幅広い層のお客さんで熱気に溢れており、通常の映画の倍近くの価格で上映されるイギリスの劇場のフィルムがこんなに人気があるとは、正直びっくりだった。<マクベス>だからなのだろうか???

前置きが長くなったが、公演は実に素晴らしく、流石本場ロンドンのシェイクスピアものだなと思わせるものだった。ノリスの演出は、<マクベス>を現代に読み替えたが、全く違和感なく、人間の野望や悔恨・恐れの念、そして夫婦の愛らが時代を超えて普遍的であることを示していた。改めてシェイクピアの人間洞察の鋭さに感服する。

全体的にかなり照明を落とした暗めの舞台で、舞台中央にアーチ形の橋のような「花道」を使う舞台セットは立体的で空間的奥行きを上手く表していた。首を切り取り戦果とするなどかなり残酷なシーンもあるが、効果的な生音楽も挿入され、緊張感あふれる引き締まった舞台だ。回転舞台の活用も有効で、観る方も集中できる舞台装置だったと思う。

ライブ映像ということで、映像チームによるカメラワークが視覚効果を高めていたところもある。現場で生で見たかったなあ。

役者陣では主役のマクベス夫婦の熱演が光る。ローリー・キニアは、前中盤の逡巡するマクベスと後半の破滅に突き進むマクベスを、継続性を保ちつつ成長(変化)を織り込んで上手く演じた。強気なところを見せながらも、後段、恐れ、怯えて自壊に向かうマクベス夫人のアン-マリー・ダフも素晴らしい迫力だった。また、私的には、毎回「マクベス」で注目第一のキャラである魔女たちが、現代風でパンクっぽくて気に入った。

NTLHPを見るとこれからも面白そうな演目が目白押しである。これはハマる予感。

 

原題:Macbeth上演劇場:英国ナショナル・シアター オリヴィエ劇場)

収録日:2018/5/10 尺:2時間40分(休憩あり)

作:ウィリアム・シェイクスピア

演出:ルーファス・ノリス

出演:ローリー・キニア、アン-マリー・ダフ ほか

〈初・日比谷ミッドタウン訪問、広場のゴジラ像〉

 

Cast:

Nadia Albina

Michael Balogun

Stephen Boxer

Anne-Marie Duff

Trevor Fox

Andrew Frame

Kevin Harvey

Hannah Hutch

Nicholas Karimi

Rory Kinnear

Joshua Lacey

Penny Layden

Anna-Maria Nabirye

Patrick O'Kane

Amaka Okafor

Hauk Pattison

Alana Ramsey

Beatrice Scirocchi

Rakhee Sharma

Parth Thakerar

Sarah Homer

 

Production team

Director: Rufus Norris

Set Designer: Rae Smith

Costume Designer: Moritz Junge

Lighting Designer: James Farncombe

Music: Orlando Gough

Sound Designer: Paul Arditti

Movement Director: Imogen Knight

 

Michael Balogun

Stephen Boxer

Anne-Marie Duff

Trevor Fox

Andrew Frame

Kevin Harvey

Hannah Hutch

Nicholas Karimi

Rory Kinnear

Joshua Lacey

Penny Layden

Anna-Maria Nabirye

Patrick O'Kane

Amaka Okafor

Hauk Pattison

Alana Ramsey

Beatrice Scirocchi

Rakhee Sharma

Parth Thakerar

Sarah Homer

 

Production team

Director: Rufus Norris

Set Designer: Rae Smith

Costume Designer: Moritz Junge

Lighting Designer: James Farncombe

Music: Orlando Gough

Sound Designer: Paul Arditti

Movement Director: Imogen Knight

Fight Director: Jeremy Barlow

Fight Director: Kev McCurdy

Music Director: Marc Tritschler

Company Voice Work: Jeannette Nelson

Associate Set Designer: Aaron Marsden

Staff Director: Liz Stevenson

 

Fight Director: Jeremy Barlow

Fight Director: Kev McCurdy

Music Director: Marc Tritschler

Company Voice Work: Jeannette Nelson

Associate Set Designer: Aaron Marsden

Staff Director: Liz Stevenson

 


蒼井優さん圧倒的・・・作:デイヴィッド・ヘア、演出:小川絵梨子「スカイライト」 @新国立劇場小劇場

2018-12-25 07:30:00 | ミュージカル、演劇



 本年最後の観劇。今年の新国立劇場の演劇では、前半に「赤道の下のマクベス」と「1998」という2つの力作を堪能した。9月から新芸術監督に小川絵梨子さんを迎え新シーズンが始まっているが、その小川さんの芸術監督就任後の初演出作品ということで、期待感一杯で新国小劇場へ足を運んだ。

 総出演者3名、舞台は2名の会話劇のみで構成される、以前に不倫関係にあった二人の男女を巡る話である。休憩含めて2時間40分たっぷり堪能した。

 まずは台本の完成度の高さが印象的だった。不倫男女の過去と現在の時間軸と社会階級(クラス)に起因する価値観軸の2軸が交差する中で、緊張感あふれる会話が展開される。状況こそ全く違うが、身につまされる二人の男女の会話の成り行きは、冷や汗さえ感じた。普段あからさまな形では表面には出ないが、歴然と存在するイギリス/ロンドンのソーシャルクラスの価値観差、地域差も織り込まれて、話に深みを与えている。

 また、俳優陣の熱演あってのこの舞台である。特にでずっぱりの蒼井優さんには目が釘付けだった。生で拝見したのは初めてであるし、CMやドラマで時折目にはするものの、女優として蒼井さんを注目して見たのは映画「フラガール」ぐらいで、その外見からほんわりとした癒し系キャラを勝手にイメージしていたのだが、本舞台における彼女は、切れの良い台詞回しと気持ちの入った演技が嵌っていて、女優としての高い存在感に感銘を受けた。ちょっと、これから追っかけさせてもらうかも。男優陣も浅野雅博さんは成り上がったミドルクラスの起業家を上手く演じていた。

 会場は中央に舞台を置き、ワインヤード式に観客が舞台を囲むような構成。お蔭で2階のバルコニー席からも良く見えたし、会場の一体感も感じる舞台になっていた。

 演劇界には全くのド素人なので深くは知らないが、国立劇場と名の付く劇場が小川さんのような若手演出家を芸術監督に登用するなんて相当ハードル高い意思決定だったのだと想像する。その決断が正しさを示す上々の初演出舞台だったのではないか。今後是非小川さんの演出作品には足を運んでみたい。


《舞台模型》

スタッフ
作:デイヴィッド・ヘア
翻訳:浦辺千鶴
演出:小川絵梨子
美術:二村周作
照明:松本大介
音響:福澤裕之
衣裳:髙木阿友子
ヘアメイク:鎌田直樹
演出助手:渡邊千穂
舞台監督:福本伸生
キャスト
蒼井 優 葉山奨之 浅野雅博

Staff
Written David HARE
Translated URABE Chizuru
Directed OGAWA Eriko

Cast
AOI Yu
HAYAMA Shono
ASANO Masahiro


演劇 「BOAT」 作・演出:藤田貴大(マームとジプシー) @東京芸術劇場プレイハウス

2018-07-27 07:30:00 | ミュージカル、演劇



池袋に用があった帰路、どんな話かも確認せずに飛び込みで観劇。事前知識ゼロで観るにはちょっとヘビーすぎる内容でしたが、脚本、俳優陣、演出、いずれも強く印象に残る演劇でした。

「名前」、「除け者」、「余所者」、「日常」と言ったキーワードを軸にメッセージ性が強い台詞が役者さん達から発せられます。同じ台詞が複数の場面で繰り返されるのも特徴で、言葉が波動的に強化され、見る者に訴えます。私がどこまでこのメッセージの真意を理解していたかは正直自信がありませんが、日本人や日本社会特有の世界観を凝縮しているかのようです。

俳優陣も熱演で、舞台一杯に熱と緊張感が漂ってました。私の視力では、二階最後列の自席から役者さんの表情まで読み取ることができなかったのは残念でしたが、熱量は十分に伝わってきました。

舞台はシンプルな作りながら、ボートと畳一畳ほどの大きさの仕切りボードが舞台上で柔軟に組み合わされ、場が構成されます。観る者の想像力を刺激するつくりです。映像も節々で上手く活用され、舞台効果を高めてました。

本劇の作・演出の藤田貴大さんは若手注目株の演劇人のようですが頷けます。全くの計画外の幸せな出会いであり、ハプニングでした。



2018年07月16日 (月・祝) ~2018年07月26日 (木)
会場: プレイハウス
作・演出: 藤田貴大(マームとジプシー)

出演
宮沢氷魚 青柳いづみ 豊田エリー 
川崎ゆり子 佐々木美奈 長谷川洋子 
石井亮介 尾野島慎太朗 辻本達也 
中島広隆 波佐谷聡 船津健太 山本直寛 
中嶋朋子

スタッフ
照明:富山貴之 音響:田鹿充 映像:召田実子 
衣裳:suzuki takayuki ヘアメイク:大宝みゆき 
舞台監督:森山香緒梨
宣伝美術:名久井直子 宣伝写真:井上佐由紀

あらすじ
土地は、
ボートによって発見された。流れ着いた人々は、そこで暮らし、子孫を繁栄させた。
現在も、
海岸にはときどき、ボートが漂着する。しかし、人々はそのことにもう関心がない。
ある日、
上空は、ボートで埋め尽くされた。その意味を知らないまま、人々は慌てふためく。
人々は、
ふたたび、ボートに乗って。ここではない土地を、海より向こうを目指すのだった。


演劇 『1984』 @新国立劇場 小劇場

2018-05-02 07:30:00 | ミュージカル、演劇



 「赤道の下のマクベス」に次いで、新国立劇場の演劇作品は超ヘビー級が続く。重い荷物を引きずりながら歩く様な思いで、劇場を後にした。

 ジョージ・オーウェルの小説『1984』をベースにしつつも、西暦2050年以降の世界を「現在」に置いて、そこから「1984年」の世界に入っていくという仕掛けが、単なる『1984』の舞台化とは一線を画している。

 小説『1984』は読んで久しいが、『1984』にインスパイアされて作られたテリー・ギリアム監督の映画『未来世紀ブラジル』は何度も見てきた。本劇で描かれた全体主義の管理社会は『未来世紀ブラジル』と同様だが、『未来世紀ブラジル』のブラックユーモアすらも無く、シリアスで緊張感溢れる展開、演出に背筋が凍りついた。

 何しろ、今の日本との類似性が怖い。公文書が改ざんされ、事実が抹殺される。歴史は書き換えられ、権力者が望む答えを忖度することが求められる。小説『1984』を読んだ学生時代は、ソ連や中国とのアナロジーを見て、自由主義の国に生まれた自分の幸運を単純に喜んだが、この数十年で何が日本を変えてしまったのか?

 映像・照明を駆使して、舞台が拡張される。観るものに、想像力を駆使させて世界を脳内で再構成させる。表現力豊かな演出に感心させられた。

 ウインストン役井上芳雄の熱演が光った。オブライエン役の大杉漣の演技を楽しみにしていたので、その急逝は実に残念だったが、代役となった神農直隆は大杉漣が乗移ったかのような演技で舞台を引き締めた。ウインストンの恋人ジュリアのともさかりえも好感度高い。

 この重さからは当分逃れられそうもない。 
 

スタッフ
原作:ジョージ・オーウェル
脚本:ロバート・アイク
ダンカン・マクミラン
翻訳:平川大作
演出:小川絵梨子

(翻訳)
平川大作

(演出)
小川絵梨子

美術:二村周作
照明:佐藤 啓
音響:加藤 温
映像:栗山聡之
衣裳:髙木阿友子
ヘアメイク;川端富生
演出助手:渡邊千穂
舞台監督:澁谷壽久

キャスト
井上芳雄 ともさかりえ 森下能幸 宮地雅子 山口翔悟 神農直隆 武子太郎 曽我部洋士 堀元宗一朗
青沼くるみ 下澤実礼 本多明鈴日

Staff
Original George ORWELL
Adapted Robert ICKE and Duncan MACMILLAN
Translated HIRAKAWA Daisaku
Directed OGAWA Eriko

Cast
INOUE Yoshio
TOMOSAKA Rie
MORISHITA Yoshiyuki
MIYAJI Masako
YAMAGUCHI Shogo
KAMINO Naotaka
TAKESHI Taro
SOGABE Hiroshi
AONUMA Kurumi
SHIMOZAWA Mirei
HONDA Arisu


演劇 『赤道の下のマクベス』(作・演出:鄭 義信)@新国立劇場小劇場

2018-03-25 07:00:00 | ミュージカル、演劇



 超ヘビー級の作品。節々にユーモア、希望、愛が差し込まれるものの、絶望的な状況、運命にはあがなえない。重く滴る涙なしには観ることができない。アウトコース低めに150キロで砲丸を投げ込まれたように、手が出ない、くすむしかない。

 1947年、シンガポール、チャンギ刑務所で、第二次世界大戦のBC級戦犯として収容されていた日本人と元日本人だった朝鮮人が織りなす交流の物語である。上官の命令に従って捕虜を強制労働に駆り立てた朝鮮人監視員たち、ゲリラであることが疑われる住民を殺した日本人兵士、命令を下す側であった日本人将校など、絞首刑の判決を受け執行を待つばかりの囚人たちの多種多様な感情、想いが表現される。生への渇望、故郷の家族への思い、自己の行為への罪悪感・贖罪、上官へのたてた憎悪、祖国は解放されながらも自身は帝国協力者として裁かれる不合理、複雑な要素が様々に絡み合う。

 どの俳優も個性豊かで持ち味を十二分に出し切っていたが、中でもマクベスを愛し、常に明るく未来を見る朝鮮人 朴南星(清本南星)を演じた池内博之の熱演が光る。「なぜマクベスはダンカンを殺したのか。魔女や妻にそそのかされたからではない。自ら破滅の道を選んだのだ!そして俺も、上官の命でも、朝鮮人だからでもなく、この道を選んだのだ」(私の記憶によるので、正確ではない)と叫ぶ迫力は、凄まじい。

 この作品、韓国で上演されたものを一部修正して日本で上演されているとのこと。どこにどう修正が加わったのか、興味があるところではある。歴史の重み、民族の思い、人間の憎悪と愛、罪と罰、どのテーマを重く受け取るかは、観る人それぞれだろう。演劇というメディアの深みを見せつけられた舞台だった。


作・演出:鄭 義信
美術:池田ともゆき
照明:笠原俊幸
音楽:久米大作
音響:福澤裕之
衣裳:半田悦子
ヘアメイク:川端富生
擬闘:栗原直樹
演出助手:城田美樹
舞台監督:北条 孝

キャスト
池内博之 浅野雅博 尾上寛之 丸山厚人 平田 満  
木津誠之 チョウ ヨンホ 岩男海史 中西良介


ガレキの太鼓『地上10センチ』 初日 @こまばアゴラ劇場

2018-03-19 07:30:00 | ミュージカル、演劇



 昨年の「他重人格」に続いて、舘そらみさんの作品を観る。「ガレキの太鼓」という舘さんが主宰する劇団の復活公演とのことだ。

 話は、とある若者夫婦の夫くんが、余命宣告をされて、過去に例がない最高の葬式がやりたいということで、自分の葬式のリハーサルをやることにした。そこで巻き起こる一連の物語。「死」や「葬式」というテーマは重いが、真面目に面白い演劇である。

 まあ幸せなことだが、普段自分の「死」「葬式」なんて考えたこともないから、目の前の舞台で繰り広げられる芝居を観ながら、常に「自分だったら・・・」を問う自分がいた。毎日を生きるってことは、毎日「死」に向かっていることでもあるんだよね。

 公演初日だったけど、俳優さんたちの落ち着いた熱演が目を引いた。特に、奥さん役の村井まどかさんは、やや幼稚とも見える夫の希望に誠心誠意応えようとする様子が切ない。「他重人格」にも出演されていたが、そこでも、誠意をもって夫とコミュニケーションを図る若奥さんの役柄をやっておられたが、とっても嵌っている。

 普段考えないようなことを考える興味深い演劇だったのだけど、あえて、ちょっと物足りなさを言うと、余命宣告をされ、葬式のリハーサルをやりたいと言い出す夫くんである。葬式のリハーサルは面白いテーマ設定だけど、どうも、「葬式のリハーサル」なるものが余命宣告を受けた人がするリハーサルと言うよりも、むしろまだそんなことを考えたこと無いような人が行うリハーサルのようだった。余命宣告されているには、なんかリアリティが無いのである(少なくとも、無いように見える)。自分の周りに余命宣告された人が身近にいたわけでは無いので、あくまでの想像の域を出ないのだけど、自分が余命宣告されたら自分の葬式のことよりも、残された日々をどう生きるかを考えるんではないかなあ~

 舞台を劇場の真ん中に置き、観客が四方から舞台を囲むような配置は向かいや左右の観客の反応も分かり、一体感が出る。観客席は2列しかなく、ほぼ満席であるもののキャパは総勢50名強ほどのアットホームな雰囲気だからなおさらだ。目の前で芝居が展開し、俳優さんの息遣いまでが伝わってくる。このライブ感の興奮は、ちょっと大劇場のオペラや芝居ではとても味わえない楽しさだった。


⦅観劇後、劇場近くの偶然入った定食屋さんのヒレカツ定食。目茶旨かった⦆

※以下、「ガレキの太鼓」HPから抜粋

【復活公演】3年の沈黙を破り、再始動!この世界の胸ぐら掴んで抱きしめる。

■あらすじ
「いつ死ぬかわかんないもんね」
「でも明日も生きる気しかしないんだけど」
まだまだ生きるくせに俺たちは、最高の葬式の夢を見たーー。
小劇場から尻尾巻いて逃げ、いつの間にか映像脚本やWEBコラムばかりを書いていた舘そらみがホームグラウンドで膝を震わせながら数年ぶりに筆を取るハイテンション冠婚葬祭ロードムービー。
(本作は演劇公演です)
​地上10センチ
作・演出 舘そらみ

■出演者
石川彰子(青年団)
海老根理(ガレキの太鼓)
岡慎一郎
尾﨑宇内(青年団)
小瀧万梨子(青年団/うさぎストライプ)
小林樹(カムヰヤッセン)
酒巻誉洋
日比野線(FunIQ/劇団半開き)
村井まどか(青年団)

■日時  2018年3月8日(木)-18日(日)
■会場  こまばアゴラ劇場