このノンフィクション作品を読んだのは、題材となった人物に興味があったから。
北海道のボクシングジムから初めて日本チャンピオンが誕生!
長く「チャンピオンベルトは津軽海峡を越えられない」と言われたジンクスを破った快挙。
そして、その選手を一から育てたのがボクシング未経験、それまでOLをやっていた女性だった。
当時実際に「二人」の活躍を目にした自分は本当に驚いたものでした。
そのジムには当時他にトレーナーなどのコーチ陣はなく、金髪の少しムスッとした女性がセコンドに立つ姿はインパクト十分。
未経験から育てられたというボクサーも社交的な雰囲気のない少し暗くてクールな風貌。
大きなハンデがあると言われた地方ジム所属の彼がやがて「世界」の声がかかるような存在になると尚更育てた女性トレーナーに目がいく。
彼女はまだ若いのに爽やかでもにこやかでもなく、貫禄があるように見えた。
そんな、当時気になっていた女性トレーナーが沸騰するような信念と情熱で一人の選手と向き合い闘っていた様が、本人目線を中心に描かれている。
遠くから見ていた自分にはタネ明かしをされるような興味深い1冊だ。
だけど読み終えて作者への興味も湧いたのでした。
自分の思う「書くべきこと」に絞った筆致は娯楽的な親切さには欠けるかもしれないけれど、その分書き手の熱量の高さが伝わってくる。
「実話をベースに取材を重ねて書いた小説」(登場人物の名前が若干の仮名になっているのはその為?)。
事実を曲げた部分はないようだけれど、作者の力でページをめくらせる部分が強く印象に残る。
序盤、主役である赤坂トレーナーの少女時代の描写が魅力たっぷりだ。特に濃い内容ではないのに引き込まれる。
なんだかわからないけど面白そうだと思わせるところは子供の頃読んだマンガたちのようだ。
相撲部屋入門前の『のたり松太郎』や柔道部時代の『ドカベン』、ボクシングを始める前の『あしたのジョー』と言ったら言い過ぎだろうか?
そして素晴らしいことにこの本は描かれたた二人への更なる興味を呼び起こさせる。
彼ら二人の現在を知りたくなったし、
久しぶりに彼の試合の映像を観たくなったのでした。
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