バイユー ゲイト 不定期日刊『南風』

ブルース、ソウルにニューオーリンズ!ソウルフルな音楽溢れる東京武蔵野の音楽呑み屋バイユーゲイトにまつわる日々のつれづれを

ふたりのジョー

2020-07-14 | 本と雑誌

入手したまま自宅の目の届かないところにあったようですっかり忘れていた。
見つけて読み始めたら面白かった!
確かこれ『ナンバー』に連載していたんだ。と途中で気づく。
梶原一騎氏の遺作となる原案の素を実弟の真樹日佐夫氏が原案としてまとめ(当時)若手作家の木村光一氏の手により2000年代のボクシング小説として産み落とされた本作。

流石梶原一騎!!面白いなぁというのが総合的な印象。
多分に漫画的設定ながら小説として文句なく読ませる。そう、作者木村光一氏が大胆に手を加えつつ思い切りよく筆を振るっている。これこそが原作者梶原一騎マジックなのか!とも思う。
作家(漫画家)を乗せる、創作意欲に火をつけるのかなやっぱり(現役バリバリの頃は原作に忠実に従うことをコワく求めたとも聞いたけど)。
読んでるうちに加速する感覚。

この小説の自分にとっての肝は主人公ふたりの(両者ともジョーという名を持つボクサー)一方の先輩ボクサーが挑む日本タイトルマッチの描写。後楽園ホール東側客席の風景が生々しく(挑戦者側なので西側のはずだけど自分は東側を想像した)浮かび上がる。他の何物とも違うボクシングが生み出す例え難い感情の渦を生々しく体験することができる。信じ難いこと、自分の感情で制御できないことが突然目の前に突きつけられるあの感覚が絶妙な筆致で描かれている。ボクシングにはなんだって起こりうる、そう理解して見ていても理性を失いそうになるあの感覚。他人の殴り合いを見て感じる興奮や感動、カタルシスの類とは似て非なる芯から唐突に揺さぶられるあの感じ。

やるなぁ、と思いました。

その後プロレスを書いたり、ミュージシャンのノンフクションを書いたり写真を発表したりと、活動している木村光一氏。
これだけの表現力を小説家としての活発な活動につなげているとは言えないのが正直少し残念です。

まぁ別に小説を書かなきゃならん、ってわけじゃないですし、いいのか。

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