邦訳名は異なります。原著の直訳です。読んだのは邦訳の方。
前文を読むとやっと分かりますが、化学に出てくる量子力学を理解するために必要な数学を列挙し、どの部分がどの化学の話題に対応するかが羅列されています。
と言う風に紹介しないと、なかなか応用分野が思いつかない本でした。役立つかどうかで言うと、私があいまいなまますっ飛ばしている箇所がいくつかあったので、役立ちました。特に解析学(微積分)と無限級数の関係の所は、これが他ではなかなか見つからないのでくりこみ理論とかが謎理論化していると思います。
そのため、化学全般の数学書にはなっていません。結晶解析は必要だと思いますがほとんど無く、したがって群論はすっ飛んでいます。物理方向もテンソル解析までは至らず。数学方向もベータ関数まで出して、統計の所でパスカルの三角形が出ているのに結びつかず。
一言で言えば、とても現代風の解説です。そうそう、こんな風に習ったな、とちょっと懐かしい感じがしました。合理的で具体的計算に結びついていて、しかし、どこか足りない感じがする。その足りない感じは本物であって、20世紀後半までに消えてしまった数学の話題があり、その追跡は我が国では難しいです。多分、米国などでは図書館にその手の本が古典として並んでいるような気がします。