次に読んだのが『桜憑き』
桜に関する怪奇短編小説を集めたもので、赤江瀑の小説は『春泥歌』だけである。
赤江瀑以外に、こんな怪奇耽美な小説を書く人がいたのかと思い、その人たちの小説もいつか読んでみようと図書館へ本を返す前に目次をコピーしておいた。
読んだ中で一番印象に残ったのが坂口安悟の『桜の森の満開の下』
盗賊と都の女と満開の桜にまつわる話なのだが、かなりおどろおどろしくてあらすじをここに書くのもはばかられるほど。
後はあの「桜の樹の下には死体が埋まっている」という言葉で有名な梶井基次郎の『桜の樹の下には』
この言葉は繰り返し取り上げられて桜の持つ妖しいほうのイメージを決定づけてしまった。
私がこの言葉を聞いた時のイメージは死体の霊のようなものが桜に化身するというようなものだが、小説に書かれたものはもっと生々しい。
つまり桜は死体の栄養を吸って花を咲かせるというような。
「桜の樹の下には死体が埋まっている」という言葉だけが独り歩きしている。
毎年満開の桜の季節になるとこの小説たちに描かれたような花闇の世界へ行ってみたくなる。
しかしもし本当に実行に移せば帰ってこれないと解っているので理性で抑える。
春の夜にあくがれいづる魂の行き尽くところ桜なるべし
呪をはらむもの生まれくる春なれや美しき吐息の匂ふ花闇
散りゆける桜の幹を抱きしめて我もいきたし花闇の果て
たれか呼ぶ声聞こえたる心地して桜花びら浴びにゆく夜
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