180ページあたりまで読み進み、いよいよ晶子が浜寺で鉄幹と山川登美子に初めて会うシーンになった。
このあたりになると田辺聖子の筆はさえわたり、晶子への思いがあふれているせいか、田辺聖子に晶子が乗り移ったかのような臨場感あふれる描写である。
どこかへ出かけるのも親の厳しい監督の元でしか出来ず、親の選んだ人と結婚してはじめて相手の顔を見るのが結婚式と言うのは当たり前だった時代の明治中期の未婚の女性が外で男性たちと会って歓談したり、一緒に会食したり、そぞろ歩きをするなど滅多にないことだっただろう。
鉄幹28歳、山川登美子22歳、晶子23歳・
師弟の関係と言っても青春まっだだ中の男女。
今の女性のように男性と話をする機会のほとんどなかった、しかも歌を作るロマンティックな女性・・・たちまち恋に落ちるのもうなずける。
ところで3人が初めて会った浜寺は古くは高師浜と言われ青松白砂の景勝地。
明治のころは別荘が多くたち、旅館もあった。
私は近くで育ったので、三人が浜寺の海辺の松林をそぞろ歩きする様子をありありと目に浮かべることができる。
浜寺の海岸は戦後進駐軍に接収され、松林は進駐軍の家族の住宅地になった。
浜辺は立ち入り禁止であった。
それが返還され、臨海工業地帯ができて海が埋め立てられるまで、わずかな期間であった。
それでも私は浜寺の海を忘れない。
また次の日、三人が住吉大社に行くシーンも眼に浮かぶ。
ここだけは明治のころと変わらないな。
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