愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

読んでみてください。

2021年09月04日 | Weblog
マーケティングを専攻するゼミ生にぜひ読んでほしい本を紹介します。

3年前にカナダを旅行した時に感じたのは、食費を日本円に換算すると高額になることです。大学を訪ねて学食をのぞいてみると、昼食で1000円近くかかります。学食は安値で提供されているはずなので、これには驚きました。日本のラーメン店チェーンの現地店を訪れると、どのメニューも日本の同等のものの2倍以上の価格です。もちろん、税やチップも払うことになるので、それが高価格印象を形成している面はありました。しかし、振り返ってみると、カナダの物価が高騰しているのではなく、日本の物価が安すぎるのです。この問題を取り上げて現状を整理して伝えてくれるのが、中藤玲『安いニッポンー価格が示す停滞ー』日経BPです。今年度前半いろいろな書店で新書ベストセラーとして取り上げられました。デフレが20年以上続く日本では、食品、雑貨品、不動産などの価格のみならず、賃金までもが先進国中最低ラインまで落ちています。この本はつぎのように語っています。「日本のディズニーランドの入園料は実は世界で最安値水準、港区の年平均所得1200万円はサンフランシスコでは低所得に当たる」と。

価格決定はマーケティング戦略において最重要項目です。デフレが何十年も続く日本の経済環境では、安値からの脱却が非常に難しくなっていますが、品質やサービス水準の向上のため、そして利益確保のためには、企業にとって価格の引き上げが重要になります。『安いニッポン』ではデフレ脱却の経済政策の議論が一部記述されています。マーケティング戦略に直接関わる議論ではありませんが、これを読んで、価格の引き上げ可能性を考察してください。

P.F.ドラッカーという経営学者は日本では大変著名で、その名を聞いたことのない日本のビジネスマンは皆無かもしれません。しかし、意外にも、日本の大学の商学部や経営学部においてドラッカーを取り上げる授業は多くありません。ドラッカーの議論が、理論や仮説の組み立て・実証というよりは、社会を見通すための思想の展開という趣があるからでしょう。ドラッカーはマーケティング活動についても洞察を重ねています。

ドラッカーの弟子が、ドラッカーのマーケティングに関する著述に対して、自分なりに整理し、自分なりの解釈を施してエッセイ集としてまとめたものが、ウイリアム・A・コーエン『ピータードラッカーマーケターの罪と罰』日経BPです。翻訳本で、原題は『Drucker on Marketing』(マーケティングに関するドラッカー)です。ドラッカー自身の著作よりも読みやすく、マーケティングについては整理されています。理論書というよりはエッセイ集なので、気楽に読めますが、大学のマーケティング関連授業の理解を深めるためには必須の本であると思います。

個人的に興味を持ったのが、新製品・サービスの導入について、企業の市場調査の過ちに関するエッセイです。その中で、定量的な調査の危険性を説いています。とりわけ発売されていない製品に対する調査は困難である、なぜならば人は手に取ることのできない製品については判断できないからだといいます。実際に出来上がった製品によって消費者テストを行う必要があると。自分の生活を振り返ってみればその通りだと思います。製品を目の前にして、あるいはそれを使ってみてようやく自分の消費ニーズに気付くのです。しかし、大学の本流授業では、消費ニーズを探ることが可能であるという前提で、マーケティング戦略の理論、アンケート調査やデータ分析手法を教えていますが、実際にはその理論や手法が通用する範囲は広くはないのかもしれません。
コメント
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