愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

評価

2013年03月18日 | 運営
人の自己評価は,客観評価よりも高くなるものです。「あなたの自動車の運転能力は?」「クラスであなたの人気は何位?」。そんな問いに,多くの人が自分は平均より上だと答えます。この現象を心理学用語では「平均以上効果」といい,ほとんどの人に共通して見られます。主観と客観の評価のギャップはおよそ20%といわれています。周囲の評価よりも「若干高め」に見積もり,小さな優越感によって自分を下支えしているところがあります。

もちろん,人がプライドや自信を持つことは悪いことではありません。むしろ,持つべきです。問題は自己評価が高すぎる場合。わかりやすい話,勉強の成績や仕事のパフォーマンスがいまひとつ(客観評価)なのに,なぜかいつでも「俺ってグレート」状態(自己評価)では、周囲は「何様のつもりだ」と不快に感じるでしょう。

なぜ自分を過大評価し,「俺様」状態と化すのか。その心理を読み解くと……まず,パフォーマンスがいまひとつという厳しい現実は動かせないから本人は内心面白くありません。そしてそんな不振が続けば滅入ってしまい,果ては自我崩壊に陥る可能性もある。それを防ぐためには自分が秀でた点を探し出しては,ことさら自画自賛したり虚勢を張ったりして,自尊心を上げ底するしかありません。もしくは,自分を正当化するため,周囲をこき下ろすしかない。

極論してしまえば,頭の悪い人,能力のない人,嫌われる人ほど,平均以上効果のレベルをアップさせるのです(結果的に自己評価と客観評価の乖離が大きくなる)。

残念に思うのは,そうした超過大評価の人々がしばしば努力を怠ってしまうようになること。他人よりも優れているといった勝手な思い込みがあり,慢心がある。だから仕事でも何でも成長が止まってしまい,自己と周囲との評価にさらなるギャップが生じます。そして,それを補おうと再び平均以上効果を駆使しては自己礼賛に走る。負のスパイラルです。

(PRESIDENT 2012年6月4日号)


「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉を思い出してしまいました。

能力がないのに「俺様」態度をとる人はどこの世界にもいます。企業人や政治家にもいるでしょう。あまりいうとなんですが,大学教員の中にもいます。学生の中にも見受けられます。

その一方で,この人は尊敬に値すると思う人は,高い能力があるのに,偉ぶらず,周囲を慮り,向上心を持ち続ける人です。事情を知らない部外者が見れば,「俺様」は偉くて,「謙虚な人」は偉くないように見えるかもしれません。「俺様」はそれが狙いなのでしょうか。しかし,共に仕事をする周囲の人々は,内実を知り尽くしているので,「俺様」は尊敬されず,厄介者扱いです。

教育上は,「平均以上効果」はいい面もあります。高い自己評価に向けて,本当の能力を向上させるように努力する動因になる可能性があるからです。そのためには,他者評価をきちんとその個人にフィードックすること,他者評価(自己評価より低い)と,自己評価とのギャップをどのようにすれば埋められるのか,考える機会を与えることが重要でしょう。

ある程度,能力が向上し,自己を客観的に分析できるようになったならば,さらなる向上のために,周囲に感謝し,自分に常にダメ出しし続ける人物に転換できるよう促す必要があるでしょう。実ってきたら頭を垂れるように,「俺様」から「謙虚な人」への転換です。

The more noble, the more humble.

教育実践上考えていきたい問題です。もちろん自戒も込めて。
コメント
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