愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

Wealth or Waste?

2012年04月12日 | 運営
Wealth or Waste? Rethinking the Value of a Business Major.
経営学,専攻の価値あるか―米企業が学生の問題解決能力を疑問視

Wall Street Journal, April 5,2012 (日本版2012年4月6日)に以上の見出しの記事が掲載されました。その記事の骨子はつぎのとおりです。

「アメリカにおいては学部レベルで経営学を専攻する学生は非常に多い(大学生の20%以上)が,その価値に企業が疑問を投げかけている。その主たる理由は,金融や会計の基本に焦点を置くあまり,リベラルアーツ系学部(職業に直結せず実務的でない,文学,哲学,数学などの分野の学部)の特徴である長いエッセイやクラス内討論を通じて批判的思考法や問題解決能力が培われることがないことだ。」

多くの大学の経営学系専攻において,教養教育(リベラルアーツ)が軽んじられていることが問題のようです。企業側は,経営学以外の様々な分野(歴史学や数学など)で学位をとった(卒業した)学生を採用することで,多様な人材を確保しようとしているそうです。

日本の大学でも同様のことが指摘できるしょう。1990年代初頭の大学設置基準大綱化以降,日本の大学においては教養教育が軽んじられてきました。中堅以下の私立大学では,実学志向が強まっています。多くのビジネス系学部では,学生の学力低下の影響で多く発生している学術的な授業についていけない学生に対応するために,実学と称して,会計やコンピュータ系の資格取得に関する授業を展開する例が見られます。それを「売り」にして学生を引き付けようというのです。わが商学部においても教養教育は重んじられているとはいい難く,教養教育を不要視する風潮すらあります。

しかし,学生が多面的なものの見方を身につけ,批判的な思考法を培うためには教養教育が重要であることはかねてより指摘されてきました。また,資格取得指向の授業では批判的思考法を養うことはできないと危惧する声は根強くあります。私もこれらには賛成です。

ただし,日本の大学の教養教育には問題がありました。多くの大学では各分野の専門科目を薄めたような内容の授業を大教室で展開する教養科目の開講をもって,教養教育としてきたのでした。これでは批判的思考法の形成はおぼつかないでしょう。学生はせいぜい細切れの雑学を身に付けるだけです。

現状の教育システムを改めるのは困難でしょう。私自身そんな改革に関わるのは徒労だと思っています。学生にはつぎのことを諭して,わずかな改善につなげたいと思っています。

○ビジネス系学部で身に付けた知識そのものに対して企業は評価をしない。
○資格取得が就職活動で有利になることはあまりない。
○企業は社会人の基盤ともいうべき批判的思考法や問題解決能力を獲得している人材を求めている。
○経済やビジネスに直接結びつく知識だけでなく,人文科学から自然科学まで幅広い分野の知識を獲得するよう心がけるべき。
○獲得する知識をうのみにはせず,常に批判的に吟味することで批判的思考法を身に付ける必要がある。
○討論,プレゼンテーション,レポート執筆などの知識アウトプットの機会を多く得て,その際に知識の妥当性を検討することが求められる。

せめてゼミは以上の事柄を意識して運営していきます。
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