愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

できていて当たり前のこと

2011年08月01日 | 運営
今定期試験の採点期間に入っています。採点で悩まされるのが答案の誤字です。

流通が専門の私の教科試験で目立つのが「卸売業」の書き間違いです。例年どういうわけか「御売業」と書いてある答案が多数存在します。今期も授業中注意喚起をしたにもかかわらず,いくつもの誤字が見つかりました。

いつも多いのが「人件費」の間違いです。「人権費」と間違っているのです。これだと流通というよりは社会政策に関する費用のようです。今期多かったのは「購買」の間違いです。「講買」「購売」と書いてある答案が多数見つかりました。

残念なことですが,うちの学生においてはこの手の基本語の書き間違いが非常に多いのです。学力低下の現れでしょう。誤字の多い答案は何が言いたいのか分からない場合が多いのです。私は人の能力や意欲はこのようなできていて当然の基本的な部分に表れると思っています。

昔,アメリカにおけるエンジェルと呼ばれるベンチャービジネス投資家を取り上げたテレビ番組を観たことがあります。スタッフが投資家に,「海のものとも山のものとも分からぬビジネスの計画を見定める秘訣を教えてくれ」と質問すると,その投資家は笑いながら「計画書の文字が曲がっていないか,線からはみ出ていないか,誤字がないかチェックするのだよ」と答えました。

冗談のような受け答えでしたが,大学教育に携わる私には真実のように思えました。できていて当たり前の基本的なことができない学生が,複雑で高度なことを処理できたためしがないからです。誤字の多い答案を書く学生が理論やメカニズムをきちんと理解しているとは期待できないのです。逆に言えば,当たり前のことをきちんと処理できる学生は,計画性や粘り強さを持って理論やメカニズムの理解に取りかかる能力と意欲を持っていることが多い。

同じような例として,生産現場で,品質管理の要諦として,整理,整頓,清掃を掲げるのは普通のことになっています。部品や道具の後片付けさえできない人が,複雑な機能を持つ製品の組み立てなんかきちんとできるはずはないということなのです。

時間を守ること,連絡を欠かさないことも社会生活上できていて当たり前のことです。最近,こちらに連絡なく,あらかじめ指示された名古屋マーケティング・インカレ評価シートをきちんと期日までに提出しないゼミ3年生がいました。提出日の前日に確認しておいたにもかかわらずです。こちらから請求してやっと出してきました。このゼミ生に対して私はもはやインカレ参加には及ばないから,チームから外れて欲しいと指示しました。後に本人の願いからもとに戻ってもらうようにしましたが,ゼミ内にそのことに反発する声があるようです。

ゼミ生たちは些細なことを大事にしていると思っているのかもしれません。その程度のことで,チームから外すのはやりすぎと思っているのかもしれません。しかし,私はやりすぎとは思っていません。できていて当たり前のことだから厳しく叱ったのです。複雑なことや難しいことならば,できなくても叱りません。例えば,経営学の理論が理解できていなかったり,統計ソフトが使えなかったりしても,できる範囲で教員が教えるまでのことです。しかし,できていて当たり前のことができない,やり過ごす場合にはペナルティーを与えます。今回はゼミ長たちから話を聞いて,以前から不作為が続いてきていたことも受けてそう指示しました。

些細なことだからやり過ごしていいのではなく,些細なことだからきちんとやるのです。複雑なことはたいてい多数の些細なことの積み重ねです。多数の些細なことを粘り強く愚直に処理することで結果として複雑なことを処理することができるのです。反発されても,今後もしつこく諭すつもりです。

なお,研究発表も答案と同じで,誤字や言い間違いの多い学生の研究発表は論理もおかしいことが多いでしょう。
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