初めて北陸本線へ遠征した時の帰り道だったと思う。EF70を存分に楽しみ、電車特急の多さに驚嘆し、満足して帰路に就いた時、どうしても撮影したいシーンが思い当たった。
関東ではもう見られなくなっていた10系客車の蒸気暖房シーンのことだ。大阪からの急行「きたぐに」の入線を待ち、ようやくゴハチのオレンジ色1灯の前照灯が近づき、しばしの停車時間を迎える。と同時にゴハチから激しい音とともに白い蒸気が立ち上がった。美しく磨かれた米原区のゴハチは、昼間でも気品を感じたが、冬の夜間で見るとさらに旅客機としての誇りと格調の高さを感じるのだ。
それまで、先人たちの写真の中でしか見たことが無かった、大きく武骨な信号柱とともに写し込み、しばし夜間に見るゴハチ+10系ハネ編成に酔いしれた。確かに連結面から吹きこぼれる蒸気を見て、ゴハチの命の鼓動を感じてしまう。時間にしたらどのくらいだったろう?一瞬の出来事のようにも感じたが、色々な想いを載せて汽笛一声もなく、ゆっくりホームを離れていく。テールライトが消えるまで見送ったのは言うまでもない。これは、未だに強烈に印象に残っているシーンなのである。
1982-02-18 501ㇾ EF5880 急行「きたぐに」 東海道本線:京都にて