アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

暖かな拍手に包まれて…新日本フィル定演

2021-02-08 19:00:00 | 音楽/芸術

今回も定員を半減して行われている演奏会に出向いてきた。

日頃、どこか悶々とした空気の中に身を置き、そのことに慣れさせられてきてしまったアントンKではあるが、ほんの数時間、緊張と安らぎと解放とを伴う満たされた空間の中で聴く音楽により、心が豊かになり真実に向き合うことが出来る。心に栄養が蓄えられ、目の前で繰り広げられる、オーケストラの響きの中に身を置くことが出来る幸せを感じる。演奏者が舞台に登場した時に静かに湧き起こる暖かな拍手は、ここに集まった聴衆が皆同じ気持ちでいることの証だ。

今回はマエストロ阪哲朗氏によるドイツ音楽の演奏会。モーツァルトやJ.シュトラウス、R.シュトラウスは、彼の十八番だそうだが、アントンKにとっても初めて聴く演奏に期待が膨らんでいた。その期待通り彼の音楽は、重厚な図太い音楽ではないが、メリハリのある鋭角的な音楽であり、ワルツのリズム感、デュナーミクの強調は、聴いていて納得させられた。特にJ.シュトラウスで聴かせたウィンナワルツ奏法(3拍子の2拍目を前にずらして弾く。この呼び名は正しくないか?)には感動。まるで正月に聴くウィーン・フィルそのものだったのだ。一番馴染みのあるモーツァルトの「プラハ」でも、弦楽器、木管楽器のバランス感覚は最良で、決めの音色は雄弁に聴こえ心が熱くなった。そして全体に渡ったティンパニの強打は最高で、一瞬にして別世界へと連れて行かれたのである。

しかしプログラムの中で一番印象に残った楽曲は、盟友をソロに迎え演奏されたR.シュトラウスではなかったか。アントンK自身、未聴の楽曲だったが、CLとFGのための二重協奏曲は、ソロパートが弦楽器奏者にまで及び、テーマをVnやVcにまで展開されとても楽しめたのだ。アントンKにとっては珍しい楽曲だが、ソリスト2名とコンマス崔氏率いるオーケストラの心の通った暖かな一体感を聴いたようで大満足だったのである。

だが、そろそろフルオーケストラでブルックナーやマーラーを聴きたくなっている、というのが本音かも。演奏会前日から、興奮状態で中々寝付けず、ワクワクとドキドキを以て会場に足を運ぶあの気持ち。ホールは聴衆で満席。息をするのも拒むくらいの集中と緊張で聴く崇高な音楽。また必ずその瞬間はやってくる、と今は信じたい。

新日本フィルハーモニー交響楽団 トパーズ定期演奏会

モーツァルト   交響曲第13番 ヘ長調 K.112

J.シュトラウス   ワルツ「芸術家の生涯」 OP316

R.シュトラウス     クラリネットとファゴットのための二重小協奏曲 TrV293

J.シュトラウス    ワルツ「南国のバラ」  OP388

モーツァルト   交響曲第38番 ニ長調 K504  「プラハ」

アンコール

J.シュトラウス (Norbert Rubey編曲)  ピッチカート ポルカ

指揮          阪 哲朗

CL             重松 希巳江

FG     河村 幹子

コンマス   崔 文洙

2021年2月5日 すみだトリフォニーホール