![Kabukicho_2 Kabukicho_2](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/e8/0bb079daf005009d7638d7e14132d63f.jpg)
ボクは、この空を見上げるような女性像に惚れていた。そのモニュメントはその頃、ボクが毎日のように通っていた新宿ビートニクスのとりわけワルばかりが集っていた『ジャズ・ヴィレッジ』のすぐそばにあった。フーテン明けの夜が白々と明け染めた新宿の朝に、いやでも目についたし、なんだか、その母さんのように逞しげな肩や、胸元に郷愁さえ感じてしまい、家出をした先の母の面影さえ感じてしまうのだった。
このレリーフ像には、2面あって反対側から見るレリーフは、これまたどうした訳か母の面影と言うよりは、長い髪を垂らした少女像のようにも見えるのであった。
無雑作に積み上げられたレンガ石の上に、そのレリーフはあってその礎石から何からが、そこだけ40年以上の年月をそのままにまるで新宿と言う世界遺産「不夜城」の遺跡の上に奇跡的に残ったモニュメントのようで、ボクは幼い頃にボクが生まれた街である長崎で見た浦上天主堂の「被爆のマリア像」を連想させたりもしていたのかもしれない。
先日、高円寺からの帰りにそこに立ち寄ったボクは、その像の礎石をなでてきた。すると、イメージはフラッシュバックし靖国通りには都電が走り、パンタグラフからフラッシュするアークが見え、歌舞伎町はジャズとR&Bの音楽で満たされ、角の銀行前ではポンが似顔絵描きをやっており、歌舞伎町公園の方から歩いてくる懐かしい仲間たちが見えたように思えたものだった。
歌舞伎町には「スカラ座」がつたをからませた古色蒼然とした佇まいで建っており、「ポニー」があり、「ニューポニー」「木馬」「ヴィレッジ・ヴァンガード」「ヴィレッジ・ゲート」などのダンモの店、「王城」もその本来の名曲喫茶で経営し「カチューシャ」もロシア料理の歌声喫茶として開いている。
そんな懐かしい幻影が見えたように思えたのだ。
ああ、懐かしき青春。ボクのフーテン時代よ!