目指せ! 標高1122メートル

山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

登山と日本人

2015-09-08 | 山・ネイチャー・冒険・探検の本

 『登山と日本人』小泉武栄(角川ソフィア文庫)

縄文人が山登りをしていたというわりには、根拠が今いちはっきりしない。火山の入山規制をゆるくして、自己責任で登ろうという、どうかという発言もあって、とりあげるのはやめようかとも思ったが、いいところもあるのでちょっとだけ紹介しよう。著者の小泉さんは、のんびりした登山がお好きなようで、競争して登るより、自生している植物や地理・地形など自然をたっぷり楽しみながら、登ることを薦めている。木暮理太郎や田部重治の山行をそうした登り方のはしりであると紹介している。私も賛同。個人的には、これに野鳥を追加したい。姿を発見するのは大変だが、声は聞ける。ただ関心がないと、いくらきれいな声が響いていても、耳には入らないが。

そんな木暮や田部の登場以前に、著者の言説をたどると、地理学者志賀重昂の『日本風景論』が登場してくる。日本の近代登山黎明期に大きな影響を与えた書物だ。文章は、文語調で大仰な表現なのだが、当時としては、初のベストセラーとなった日本の風景論。しかも日清戦争勃発の年の刊行だから、愛国心とあいまって、賛辞の的になったようだ。

印象に残ったのは、上記の件(くだり)だが、この本は、日本の登山の歴史を時系列に並べて説明するとともに、日本人が自然といかに関わり、向き合ってきたのかを丹念に追っている。修験道の始まり、信仰登山の発展、物見遊山としての登山、ウエストン以降の近代登山、そして深田久弥の百名山ブームから巻き起こった大衆登山の広がり、噴火を繰り返してきた火山と日本人の関係性など。登山の思想的な側面を俯瞰したい人には、うってつけの本だろう。

ほかの本・雑誌も見る

登山と日本人 (角川ソフィア文庫)
クリエーター情報なし
KADOKAWA/角川学芸出版
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする