OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

1969年型のマウンテン

2010-02-05 17:05:43 | Rock

Mountain / Leslie West (Windfall)

音楽鑑賞には「音で聴く」という楽しみがあって、例えばモダンジャズではブルーノートで有名な録音技師のルディ・ヴァン・ゲルター直々の「音」が聴きたくて、オリジナルアナログ盤を高級オーディオで鳴らすのが天国♪♪~♪

あるいはCDで知ったお気に入りの楽曲を、あえてアナログのオリジナル7インチシングル盤を探し出して聴くのも、最近の流行らしいですね。

さて、本日ご紹介のアルバムは、1970年代前半に人気が爆発したマウンテンの実質的なスタートを記録したLPで、発売されたのは1969年らしいのですが、そのジャケ写からしても、一応は主役のレスリー・ウェストのリーダー盤でありながら、同時にマウンテンというクレジットも入っているあたりが意味深です。

そして中身は元祖ハードロック王者だったクリーム直系の音楽スタイルと、これぞっ、まさに「ロックの音」が封じ込められた骨太な歌と演奏が楽しめるのです。

 A-1 Blood Of The Sun
 A-2 Long Red
 A-3 Better Watch Out
 A-4 Blind Man
 A-5 Baby, I'm Down
 B-1 Dreams Of Milk & Honey
 B-2 Storyteller Man
 B-3 This Wheel's On Fire / 火の車
 B-4 Look To The Wind
 B-5 Southbound Train
 B-6 Because You Are My Friend

と、書きながら、実はサイケおやじは初めてこれを聴いた時、失望したのが本音です。

何故ならばマウンテンといえば、以前にご紹介した人気盤「悪の華」でブレイクした後、クリームの魅力を蘇らせたドロドロにエグイ長尺アドリブ演奏を収めたライプ盤、あるいはギンギンにハードで泣きまくるギターや予想外にメロディアスな楽曲をウリにしたスタジオ録音盤という、如何にも当時のLPメインの洋楽ファンにアピールする制作方針を貫いていましたから、上記の演目をご覧になれば、1曲単位の演奏時間が短いトラックばかりでは消化不良の先入観は免れません。後追いでの負目も、当然あります。

実際、良いところで終ってしまう演奏ばっかりなんですねぇ……。

しかし同時に、妙に味わい深いというか、何度も聴きたくなってしまう中毒症状が隠されていたのも、また事実でした。

それは丁寧に作られたオリジナル曲の良さというのも、その秘密でしょう。

ただし、もっと訴えかけてくるのが、その「ロック的な音」の素晴らしさです。

このあたりは実際に聴いていただくのが一番で、私の文章ではとても表現出来ない感覚ではありますが、あえて言えば、「生々しさ」と「イキの良さ」でしょうか。ワイルドなボーカル、ベースのウネリ、ギターの泣きやカッティングのエグ味、さらにドカドカうるさいドラムスの鳴り! そういうものが、実際の現場ではダビングの作業も当然あったはずですが、見事に一発録りのナチュラル感に満ちているのです。しかも各パートの分離が素晴らしく良いのに、絶妙の団子状というか、グッと前に出て来る感じなんてすねぇ♪♪~♪

例えば冒頭の「Blood Of The Sun」では終始、同じリフをユニゾンでやりまくるギターとベースが左右のチャンネルに分かれていながら、真ん中に定位しているボーカルとドラムスを強烈に煽りつつ、イヤミなほどに「出しゃばり」です。なんとギターソロも無いのに、この熱いロック魂はっ!?!

また強烈な16ビートカッティングがハードロックギターのひとつのお手本となった「Better Watch Out」や「Long Red」でのアコースティックギターの主役度数が、完全に従来のハードロックを超えた存在感で、それはつまり「音作り」の良さじゃないでしょうか。

もちろんレスリー・ウェストならではの「泣きのギター」という魅力も御座なりにされず、「Blind Man」での正統派ブルースロックやエリック・クラプトンに敬意を表したウーマントーンが嬉しい「Baby, I'm Down」は、わかっちゃいるけど、やめられない♪♪~♪

ちなみに、このアルバムでのメンバーはレスリー・ウェスト(vo,g)、フェリックス・パパラルディ(b,key)、ND・スマート(ds) の3人組に加え、数名ゲストが参加していると言われていますが、やはりクリームを実質的に「作っていた」フェリックス・パパラルディの思惑がありますから、レスリー・ウェストも安心して身を任せたというところでしょうか。激情入れ込み型の歌いっぷり、泣き上戸気味のギターも冴えまくりですよ。

それはB面ド頭収録にしてライプでも定番となる「Dreams Of Milk & Honey」で、さらに遺憾なく発揮され、わずか3分半の演奏でありながら、相当に満腹感があります。う~ん、このギターソロとバタバタしたドラムス、蠢くベースの魅力には本当に血沸き肉躍りますねぇ~♪

またアメリカンハードの本領を聞かせてくれる「Southbound Train」、それとは対照的に英国流サイケデリックロックに拘った「Look To The Wind」という二律背反主義も潔いかぎりですし、スワンプロックの先駆けっぽい「Storyteller Man」、アコースティックギターの弾き語りで美しいメロディを歌ってくれる「Because You Are My Friend」は、来るべきシンガーソングライターの流行時代を予見していたのでしょうか。

まさに1969年という微妙な時代の分岐点に作られたのも、全く不思議の無いところでしょう。

その意味で、ご存じ、ボブ・ディランやザ・バンドで有名な「火の車」をハードロックで作り返した目論見は、ズバッと直球のど真ん中! 本当にクリームがやったら、こうなりますよっ! そうとしか言えないほど、フェリックス・パパラルディのプロデュースとバンドが一丸となった歌と演奏が、このアルバムのハイライトかもしれません。

ということで、長いギターソロやアドリブ合戦がありませんから、マウンテンの本領にシビレている皆様には物足りないアルバムでしょう。しかし「ロックの音」を自然体感出来る観点からすれば、これはビートルズの「アビーロード」と並び立つ、1969年の傑作じゃないでしょか。

もちろん収録各曲の密度も、聴くほどに感服する次第です。

やっばりマウンテン、最高♪♪~♪

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