OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ビート歌謡は小山ルミ

2012-11-04 15:35:09 | 歌謡曲

小山ルミ&ドラム・ドラム・ドラム (アポロン / ソリッド = CD)

車の運転にはピートの効いた音楽が求められる現実こそ、豊かな物質文明の証と言ったのは誰だったでしょう? しかしそれが間違いでなかった事は、カーステレオの普及と進化に殊更顕著なわけですが、並行してその場で再生される音楽ソフトにも、専任制が必要とされました。

それは通称8トラックカートリッジという、今や絶滅してしまったオーディオテープがその初期には用いられ、これはカセットテープを大型化したような無骨な外見ではありますが、1本のテープに2トラックのステレオチャンネルが4プログラム入っているエンドレス形式の音楽ソフトです。

もちろん自宅で録音するようなメディアではなく、あらかじめ作られていたものが主流でしたから、そこには一般に流通しているアナログレコードとは異なったブツも多数あった事が、時を経るにしたがって、驚きに変わっているのが現在の実情でしょう。

本日ご紹介する小山ルミのCDも、実はオリジナルの発売が昭和42(1972)年の8トラックカートリッジで、残念ながらサイケおやじは現物に接したことはありませんでしたが、一部だけは劣悪なカセットコピーで聴いていたものです。

 01 ザ・スネーク
 02 恋の追跡
 03 あの人は札幌
 04 フレンズ
 05 裁かれる女
 06 夜明けの太陽
 07 愛するハーモニー
 08 北国行きで
 09 二人は若かった
 10 今日から二人
 11 許されない愛
 12 孤独の街角

さて、ここでもうひとつ特筆されるのが、「ドラム・ドラム・ドラム」というアルバムタイトルなんですが、これは昭和40年代の我国では当たり前に作られていたピート系インスト盤の通称(?)で、主たる内容は洋楽や歌謡曲のリアルタイムのヒット曲をドラムスがメインで楽しめるように作られた企画物でした。

つまり洋楽で言えばサンディ・ネルソンのリーダー盤等々、ダンスパーティーあたりでも活用出来る演奏集であり、それゆえにドラムスは派手なタム回しとかバスドラ強調のミックス、あるいはシンバルワークのしつこさ等々、それはそれでリスナーのリズム的興奮を煽るアレンジとプロデュースの妙が、賛否を別れさせていたようです。

ちなみに件の「ドラム・ドラム・ドラム」の我国本家はジミー竹内で、鈴木邦彦のアレンジを使った爽快な演奏集は、昭和42(1967)年頃から膨大に作られています。

ところが、この音源集は、あえて「小山ルミ」を前面に出した歌物アルバムでもあり、カーステレオでの再生を優先させたのでしょうか、ある意味ではアナーキーなサウンド作りとストレンジなミックスが今も古びていません。

中でもドラムス全体の録音にジェットマシーン系のエフェクターを使い、ステレオミックスの左右に広がる音の定位が、時には疑似ステレオの如き位相の面白さまでも含んでいるのですから、たまりません♪♪~♪

そして小山ルミのボーカルが持前のエグイ感性と幾分の湿っぽさ、昭和歌謡曲ならではの演歌グルーヴやピート歌謡の味わいを表現してくれますから、収録演目がカパー中心になるのもムペなるかなっ!

もちろん演奏パートはドライヴしまくったエレキベース、タテノリ強調のピアノ、チープで派手なストリングスアレンジ、さらにはエレキギターが良い意味でのダサ~いフィーリングに徹していますから、必然的に小山ルミのボーカルがオフ気味にされたミックスも良い感じ♪♪~♪

それはまず、これがジャズロック歌謡の極みつきという、ド頭の「ザ・スネーク」から全開で、これはアメリカのジャズ&ブルース歌手としては裏街道派に属するオスカー・ブラウンの作品ですが、安井かずみの作(訳)詞がズバッとキマッた音感を提供してくれますから、一発でシビれますよっ!

また欧陽菲菲の「恋の追跡」、平山ミキの「フレンズ」、朱里エイコの「北国行き」といったリアルタイムの歌謡大ヒットカパー曲における小山ルミのロックっぽさは、独得の個性じゃ~ないでしょうか。

一方、ニューシーカーズの「愛するハーモニー」やショッキング・ブルーの「夜明けの太陽」あたりの洋楽カバーは前者が日本語詞、後者が英語詞で歌われるコントラストが、これまた小山ルミならではのハーフブリード歌謡が真骨頂ですし、沢田研二の「許されない愛」を女性歌手がカパーするという珍しい試みも、ボーカル表現がギリギリまで切磋琢磨された感度は良好ですから、全体として所謂昭和歌謡グルーヴが満喫出来ると思います。

そして気になるドラムスがメインのインストパートの処理は、どちらかと言えば画一的なキメばかりが目立ちますが、それゆえにドライヴミュージックとしては結果オーライ!

しかも現代においては、ビート歌謡としての心地良さが絶品のプレゼントになっているのですから、こういう企画は侮れません。

ということで、最後になりましたが、「裁かれる女」と「孤独の街角」は既に小山ルミ名義で発売されていたシングル曲ではありますが、ミックスを低音重視に変更した感が強く、それゆえに同一テイクの別バージョンという扱いになりますので、要注意ですよ。

また、気になるドラムスを担当しているのは、あえて「ドラム・ドラム・ドラム」の看板が使われている以上、クレジットは特にありませんが、個人的にはジミー竹内かもしれないと思っています。

ただ、それでも一番目立つのは小山ルミの歌いっぷりの良さであって、中でも初っ端の「ザ・スネーク」を聴くだけでも、この復刻音源集の価値は絶大でしょう。

ちなみに再発にあたってはメーカー独自の紙ジャケット仕様になっていますので、気になる皆様は速攻でのゲットをオススメ致します。

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