OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

本田竹曠との出会い

2019-10-23 19:36:51 | Jazz
This Is Honda / 本田竹曠 (Trio)

サイケおやじがジャズ喫茶に出入りし始めた昭和40年代末頃は欧米に比べ、日本人のジャズミュージシャンは一段低く扱われていた現実が確かにあり、所謂和物ジャズなんて決して鳴らさない店さえありましたし、そ~ゆ~のを好きだと言える雰囲気も無かったような……。

ですから、例えばスイングジャーナル誌とかのジャズマスコミで煽りがあったとしても、積極的に日本人がやっているレコードを買うのは、金銭的な制約も厳しかった事もあり、なかなか手を出せるものではありませんでした。

ところが、そんなサイケおやじの認識を一変させてくれたのが昭和47(1972)年に録音・発売された本日ご紹介のLPで、リーダーの本田竹曠(p) 以下、鈴木良雄(b)、そして渡辺文男(ds) というピアノトリオの演奏は、その録音状態の良さもあり、強烈な迫力のモダンジャズでありました。

A-1 You Don't Know What Love Is
 通常はというか、多くのジャズミュージシャンによって夥しい録音が残されている有名スタンダード曲ですから、それがスローな展開で演奏される魅惑のメロディという安心感がある反面、サイケおやじにとっては、なんか怠いんじゃ~なかろうか……?
 なぁ~んていう生意気な先入観があったんですが、実際には力強いピアノタッチとずっしり重いビート感に満ち溢れた演奏で、じわ~っと始まるテーマメロディが次第に変奏されながらアドリブパートに入っていけば、テンポは変わらずともグイノリってやつで、つまりはグルーヴィな展開になっていくんですから、何時しかグッと惹きつけられている自分に気づいて、ハッとするほどですよ。
 寄り添いながらも自由度の高いベースやビートの芯を作り出すドラムスもイイ感じ♪♪~♪
 そして本田竹曠のピアノスタイルは歯切れが良く、音数も多い事は多いんですが、矢鱈なモード奏法は用いず、あくまでも歌心優先主義なんでしょう、ブルースフィーリングやソウルジャズの風味も滲ませるあたりは、サイケおやじが最も好むところです。

A-2 Bye Bye Blackbird
 これまた良く知られたスタンダード曲で、ピアノトリオの演奏としてもレッド・ガーランドとか、耳に馴染んだメロディですから、ミディアムテンポでスイングさせていく本田竹曠も油断は禁物と申しましょうか、時折唸り声も交じっていくグルーヴィなノリの楽しさは、ジャズを聴く喜びに直結するものと思います。
 
A-3 Round About Midnight
 おぉ~っ、これは本田竹曠のソロで演じられるモダンジャズの名曲!
 実は告白すると、サイケおやじは決して好きなメロディではなく、マイルス・デイビス(tp) とかチャーリー・パーカー(as) が残した名演ぐらいしか馴染めないんですが、ここでは録音の良さからピアノの鳴りに魅了されつつ、繊細と大胆さを両立させた本田竹曠のジャズ魂に拍手喝采! 

B-1 Softly As In A Morning Sunrise
 う~ん、これもモダンジャズでは定番演目として、ピアノトリオだけでも夥しいレコーディングが残されている事は言わずもがな、だからこそユルフンな姿勢は許されるはずもなく、本田竹曠トリオの演奏はアップテンポでガンガンにスイングしまくっているんですから、たまりません♪♪~♪
 その音数の多さから、ちょい聴きにはマッコイ・タイナーっぽいかと思いきや、ウイントン・ケリーやジュニア・マンスボビー・ティモンズ等々のハードバップ&ファンキー派のノリやフレーズを巧みに自らの個性の下地にしているとしか思えないドライヴ感は素晴らしいです ♪♪~♪

B-2 When Sunny Gets Blue
 ソウルっぽい泣きを含んだテーマメロディは何時だってジャズ者の好むところだとすれば、この曲などは最右翼のメロディーかもしれません。
 ですから、じっくりと構えた本田竹曠のピアノは言わずもがな、相当に入れ込んだ鈴木良雄のベースソロに刺激されたかのような後半の展開のおけるリーダーのアドリブは確信犯?
 そんな不遜な事まで心に浮かんでしまう名演と思うばかりです。

B-3 Secret Love
 そしてオーラスは、このアルバムの中では一番に激しい演奏で、ドラムスのイントロからフルスピードで突っ込んでいくピアノトリオの醍醐味が堪能出来ますよ。
 演目そのものも楽しいスタンダード曲ですし、スカッと痛快なハードバップが見事な大団円 ♪♪~♪

ということで、今となっては分かりが良過ぎる感も確かにあろうかとは思いますが、1972年の日本にだって、ここまで熱いピアノトリオのレコードが製作されていたという真実はひとつ!

録音状態は左右にドラムスとベース、真ん中にピアノという典型的な当時のステレオミックスで、発売同年には録音賞も獲得した事は、決して無視出来ません。

しかし同時に、サイケおやじの現在の耳と感性では、ここまで凄い演奏であればこそ、ベースとドラムスのミックスがもう少しばかり大きく、厚くなっていたらなぁ~~。

そんな贅沢な欲求も確かにあります。

もちろんCDとして数次再発されているはずですから、おそらくはリミックス&リマスターは成されているとは思いますが、サイケおやじは全く聴いた事がありませんので、今回はアナログ盤LPだけの話です。

そして当然ながら、我儘な欲求はオーディオ装置を改善すれば解消するのでしょう。

うむ、ジャズを聴くのは昔も今も……。

最後になりましたが、本田竹曠は当然芸名であり、本田竹彦とか本田竹広と名乗っていた時期もありますので、それだけにリーダー盤も多く、セッション参加しているレコーディングも相当数残されていますし、演奏スタイルもハードパップからフリーに近いところもあれば、フュージョンやソウルジャズまでもやっていながら、やっぱりサイケおやじにとっては何時も気になるピアニストです。

そして、そのあたりのレコードを追々ご紹介する所存です。
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