OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

レイドバックは快楽主義か?

2010-01-30 15:02:17 | Allman Brothers Band

Brothers And Sisters / The Allman Brothers Band (Capricon)

若い頃、それこそ一生懸命に聴いていた音楽は、齢を重ねても魅力が失せないどころか、ちょっとした偶然で、それらの一部でも耳にした瞬間、様々な事象が細部まで思い出されます。

例えば本日取り出したのは、サイケおやじにとっての昭和48(1973)年秋から冬に愛聴盤だった1枚で、オールマン・ブラザーズ・バンドにしても最大のヒットアルバムですが、ご存じのとおり、これが誕生するまでには天才ギタリストだったデュアン・オールマン、そしてバンド内では精神的にも縁の下の力持ちだったベース奏者のベリー・オークリーが、ともにバイク事故で亡くなるという悲劇がありました。

しかも両者の事故は、ほぼ1年の間に続いたわけですし、その現場も近く、享年24歳という悲劇も一緒というのは宿縁かもしれません……。

さて、これまでも述べてまいりましたが、そんなこんなでバイク好きのサイケおやじは、リアルタイムの当時から複雑な心境で、このアルバムを聴いていたわけですが、しかし中味の快楽性は否定出来るものではありません。

それは所謂レイドバックと称されていた、スワンプロックの進化形だったのです。

 A-1 Wasted Wprds / むなしい言葉
 A-2 Ramblin' Man
 A-3 Come And Go Blues
 A-4 Jellyu Jelly
 B-1 Southbound
 B-2 Jessica
 B-3 Pony Boy

ご存じのように、オールマン・ブラザーズ・バンドはデビューした時からブルースロックとR&B、そしてジャズやラテンも包括した実力を披露していましたから、スタジオ録音よりはライプセッションの方が魅力的という結果が、あの超絶の名盤「アット・フィルモア・イースト」を誕生させています。

また、それゆえにデュアン・オールマンの突然の悲報によって未完成の美学を聞かせてくれたアルバム「イート・ア・ピーチ」にも、しっかりとライプ音源が組み込まれていたのでしょう。

ですから再出発を確実に示したいバンドの意向として、あえてスタジオレコーディングの新作で勝負に出たのも、今では理解出来るところです。しかしサイケおやじは当時、完全に懐疑的で、オールマンズの新譜が出ると知っても、何ら期待はしていませんでした。

ところが友人が買ったのを聞かせてもらった瞬間、自分の不明を恥じいるばかりでしたねぇ。まさに血沸き肉躍るというか、歌うことを自ら楽しんでいるかのようなボーカル、果てしない快楽主義を作り出すピアノとギター、粘っこくて、さらに飛び跳ねるリズムとビート♪♪~♪ ハナからケツまでシビレましたっ!

ちなみにクレジットされたメンバー構成を確認すると、グレッグ・オールマン(vo,org,g)、ディッキー・ベッツ(vo,g)、ブッチ・トラックス(ds,per)、ジェイモー(ds,per) というオリジナルの面々に加え、ラマ・ウィリアムス(b)、チャック・リヴェール(p,el-p,key) が新レギュラーとなり、また悲劇の主人公となったベリー・オークリー(b) も部分的に参加しています。さらにボズ・スキャッグスのバンドからレス・デューディック(g) の助っ人も嬉しいプレゼントでした。

まずA面初っ端の「むなしい言葉」からして躍動的なリズムがうねり、スライドギターが粘っこいボーカルに絡み、浮かれたピアノが良い感じ♪♪~♪ しかも幾分、もっさりしたグルーヴが逆に明快というか、それまでのオールマンズにあったドロドロしたサイケデリックロックの残滓が消え、実に聴き易くなっています。

それは続く「Ramblin' Man」での明るいカントリーロック風味へと引き継がれていきますが、それにしてもノーテンキ寸前のイキ具合が絶妙で、まさに終りなき快楽主義の真骨頂! 実際、この曲をカーステレオで流しながらのドライブは最高ですよねぇ~♪

そのあたりはB面のハイライト「Jessica」にも明確に表現された、まさに新生オールマンズの魅力で、実際、このカントリーロッキンフュージョンの演奏は聴いても、また演じても気持良すぎますよ♪♪~♪ とくにラテン系パーカッションとアコースティックのリズムギター、オールマンズの看板ともいえるツインリードのキメのリフ、エクスタシー寸前の快楽をむさぼるピアノのアドリブ、さらに軽快なリズムと重いビートの完全融合! もちろんディッキー・ベッツのギターは水を得た魚の如く、カントリーロックのキモをジャズ的に発展させた舞い上がりフレーズがテンコ盛り♪♪~♪ 無理を承知の願いでは、全盛期のベンチャーズにやって欲しいとさえ思ってしまう、インストロックの極みつきです。

そして、それとは対をなすというか、逆に粘っこいブルースロックとR&Bの黒っぽさに拘り抜いたトラックも実に秀逸で、ユルユルなのにテンションが高い「Come And Go Blues」や「Jellyu Jelly」におけるコクがあってもスッキリした「すろ~ぶる~す」の解釈は、本当に1970年代型のロックだと思います。つまりサイケデリックの濁りを捨て去り、休日の昼間っからビールでも飲んでウダウダやろうぜっ! みたいな♪♪~♪

ですから、せ~のっ、でやってしまった「Southbound」のロック王道の演奏も、また狙いがミエミエの「Pony Boy」といったブルース味も、失礼ながら使い古された手口が逆に心地よいという結果オーライなんだと思います。

ということで、とても聴き易い仕上がりがゆえに、従来からのオールマンズ信者にはウケがイマイチだったと言われていますが、私は全く否定出来ません。むしろ恥も外聞もなく、大好きと言って憚りませんよ。その飽きる寸前の刹那の気分が快感なんですねぇ~♪

う~ん、レイドバックって「ブルースロック+カントリーロック」という図式でしょうか? 実際、以降のレイドバック流行期には、ここに聞かれる音と雰囲気がひとつの基準になっていたように思います。

最後になりましたが、サイケおやじが最初にバイクで事故ったのは、ちょうどこのアルバムに夢中になっていた頃でした。怪我や被害は大したことなくて、全くの独りゴケだったんですが、もちろんデュアン・オールマンやベリー・オークリーのことが重なって、神妙に安全運転を誓うのでした。

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