OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

痛快なマリガン♪

2007-03-24 19:41:57 | Weblog

本日は久々に街へ出て色々とネタを仕入れてきました。ネットやメールの通販も便利ですが、やはり現物に接しての獲物狩りは楽しいです♪

連日のストレスや疲れもブッ飛びましたですよ。

ということで、本日は――

Jerry Mullign At The Village Vanguard (Verve)


ジェリー・マリガンと言えばチェット・ベイカー(tp) と組んだピアノレス・カルテットの大当たりで、アドリブ優先のプレイヤーという印象もありますが、反面、緻密なアレンジと自由なアドリブを両立させた大人数のバンド演奏も得意にしています。

そこに一番勢いがあったのは、1960年代初め頃に率いていた「コンサート・ジャズバンド」時代だと、私は思います。

このバンドは、その名前から推察すると、おそらくダンスホールあたりでの営業はやっていなかった純粋鑑賞用のグループだと思います。実際、残された音源を聴くと、メンバー全員がイキイキと躍動して素晴らしいアドリブ合戦を繰り広げたり、反面、練り込まれたアレンジを正確に再現しつつ、ソロプレイヤーを盛り立てていく協調性が見事な演奏ばかりです。

このアルバムは、そんなバンドのライブにおける凄さを見事に味わえる傑作で、録音は1960年12月11日のクラブ「ビレッジバンガード」、メンバーはジェリー・マリガン(bs,p,arr) 以下、クラーク・テリー(tp)、ニック・トラビス(tp)、ドン・フェララ(tp)、ボブ・ブルックマイヤー(vtb)、ウィリー・デニス(tb)、アラン・ラルフ(tb)、ジーン・クイル(as,cl)、ボブ・ドノバン(as,fl)、ジム・レイダー(ts)、ジーン・アレン(bs.bcl)、ビル・クロウ(b)、メル・ルイス(ds) という錚々たる顔ぶれです――

A-1 Blueport
 アルバム冒頭を飾るに相応しい熱演で、とにかくアップテンポで自然発生的なアレンジの中、各人のスリル満点なアドリブが連続します。落ち着いたビル・クロウのベースと烈しく煽るメル・ルイスのドラムスが生み出すグルーヴも、実に良いです♪
 アドリブパートでは、リズミックなジェリー・マリガン、小型ズート・シムスという風情のジム・レイダーが快演! ボブ・ブルックマイヤーは例のモゴモゴした音色と歌心のコントラストが面白く、もちろんバンドアンサンブルでも要の働きをしています。
 そのアンサンブルは、デキシーランドをモダンにしたような集団即興演奏であり、また痛快な切れ味のキメがビシッと出た、これぞジャズの楽しみを満喫させてくれるものです。10分超の演奏ながら、全く飽きませんよ♪ ちなみにトランペットソロはクラーク・テリーかと思いますが、いかがなもんでしょう?

A-2 Body And Soul
 ジャズでは定番の有名スタンダード曲ですが、彩り豊かなアレンジが強く、ちょっとそこに気がつかないところもあります。まあ、それだけジェリー・マリガンが冴えていたのか、凝りすぎだったのか、真相不明の部分もありますが、全体をリードしてアドリブに撤する本人の意向を尊重したバンドメンバーの力量を信じて聴くしかないと思います。
 個人的には煮えきっていないと……。

A-3 Black Nightgown
 アメリカのサスペンス映画「私は死にたくない」に使われていたテーマ曲で、ジェリー・マリガンによるジャズバージョンのアルバムも傑作とされていますが、ここでの演奏もなかなかハードボイルドで素敵です。
 適度に荒っぽいバンドアンサンブルが如何にもライブという力感で、カッコイイとしか言えません。ジェリー・マリガンもツボを押えたアドリブで見事な答えを出してくれます。
 またボブ・ブルックマイヤーやクラーク・テリーの親しみ易いソロも、短いながら秀逸だと思いますが、ここではバンドアンサンプルが全てかもしれません。ズバリ、カッコイイです!

B-1 Come Rain Or Come Shine
 これも有名スタンダード曲なので、元メロディがどのように編曲されているかという楽しみがあります。もちろんジェリー・マリガンは原曲を大切にしていますが、ふくよかなバンドアンサンブルと歌心優先のジェントルな雰囲気は流石だと思います。
 ただしテンポが緩い所為か、ややダレ気味の部分があるのは残念です。

B-2 Lady Chatterley's Mother
 思わせぶりなタイトルとはウラハラに痛快な演奏になっています。あぁ、このシャープで膨らみのあるバンドアンサンブルと小気味良いリズムアレンジ! もう最高ですねぇ♪
 もちろんアドリブパートでもボブ・ブルックマイヤー、クラーク・テリー、そしてジェリー・マリガンが大ハッスル! 全体が躍動的な楽しさに満ちているのでした。

B-3 Let My People Be
 ここで聴かれるカウント・ベイシーの様なピアノはジェリー・マリガンが弾いていますが、演奏もカンサスシティ・スタイルの強烈なスイング感があって、なかなか楽しいものになっています。
 そしてこういう演奏が十八番になっているボブ・ブルックマイヤーのオトボケも良い味ですねぇ~♪ メル・ルイスの噴出し笑いのようなドラムスも素敵だと思います。
 またジム・レイダーはレスター・ヤングの役割でしょうか、ソフトで流麗なスイング感に黒っぽい感覚も滲ませて好演すれば、クラーク・テリーは自然体のジャズ魂を披露して貫禄を聞かせてくれます。あぁ、何時ものことながら、これがジャズだと思います♪

ということで、ジェリー・マリガンばかりでなく、バンドメンバーが一丸となって作り出した楽しいライブ演奏なんですが、良く聴くと、若干のテープ編集疑惑もあると感じます。しかし良いアルバムには変わりないので、あえてその部分は書きません。

それと、この雰囲気、つまり緻密なバンドアンサンブルと自然発生的なノリ、そしてアドリブ優先の演奏という醍醐味は、秋吉敏子のビックバンドに通じるものがあると感じています。

もちろんそのルーツはデューク・エリントンやカウント・ベイシーなんでしょうが、モダンな味わいのカッコ良さは、明らかにジェリー・マリガンが増幅したものでしょう。

機会があれば、ぜひとも聴いてみて下さいませ。ジャズ喫茶の大音量だと、痛快に燃えますよ♪

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