■素敵な気持ち / 岩崎宏美 (ビクター)
「パクリ」を堂々とやっているソングライターの夥しさは、あらためて述べるまでもありませんが、その元ネタを探し、指摘するという作業は卑屈でもあり、天邪鬼な楽しみという現実は、ご理解いただきたいところです。
もちろん、やってくれた(?)本人に問い質すなんてこたぁ~~、愚の骨頂、不粋の極みであり、逆に指摘されたソングライターその人から、「君は、そこまでしか分からなかったのか?」なぁ~んて言われたら、もはや立つ瀬はありません。
ですから、サイケおやじが「パクリ」に対しては、「ニヤリ」とする方を好むのは、そこに起因しているところが大きいのです。
逆に言えば、確かに「パクリ」と気がついているのに、その元ネタが、ど~にもイマイチ判別出来ないという、その「もどかしさ」だって、お気に入りの歌や演奏を楽しむ術に結びつけるという、それさえも前述した天邪鬼の表れと居直っている次第です。
さて、そこで本日は、そんなこんなの好例(?)と申しましょうか、岩崎宏美が昭和58(1983)年春に出した掲載シングル盤A面曲「素敵な気持ち」をお題にさせていただきます。
もちろん、それは康珍化の綴った歌詞に附された故・筒美京平が提供のメロディについて、オンタイムで初めて聞いた瞬間、これって前年晩秋から大ヒットしたマイケル・ジャクソン&ポール・マッカートニーのデュエット曲「ガール・イズ・マイン / The Girl Is Mine」だよなぁ~~~!?
という印象でして、しかも萩田光雄が施したアレンジにはイントロのギターは言うに及ばず、ストリングスやキーボード類の使い方にしても、本家本元の雰囲気を極めて大切にしているあたりは、正に職人技と思うばかりです。
ただし、故人が作り出したメロディの中で、元ネタが明確になっているのはキメのフレーズである「because the girl is mine」を「素敵な気持ち」に替え歌(?)したぐらいしか、サイケおやじには分からず、しかし、それでいて全体各所には当時流行の洋楽AORの美味しい雰囲気が塗されていると思わざるを得ないんですから、完全脱帽です。
そして当然ながら、岩崎宏美の素晴らしい歌唱力がなければ、ここまで素直に素敵な雰囲気には仕上がらなかったはずです。
実際の制作過程や現場の進行状況は全く知る由もありませんが、世界中で爆発的にウケしていたマイケル・ジャクソンの雰囲気で!?
という狙いがあったとしたら、既にアダルトシンガーに転身(?)していた彼女には、「ガール・イズ・マイン / The Girl Is Mine」が選ばれるのが必然だったと思われますし、レコードを聴く限りでも、歌手としての岩崎宏美の本気度は半端無く伝わって来ると思うんですが、いかがなものでしょう。
もしも、本当に元ネタが前述「ガール・イズ・マイン / The Girl Is Mine」だったとしたら、今回の「素敵な気持ち」は全体的にオリジナルに勝っているとは思いませんが、岩崎宏美の歌を楽しむという所期の目的は完全に達成されているはずですし、それも製作スタッフ全員のプロ意識の高さでありましょう。
おそらくは今後、故・筒美京平の徹底した研究は更に深まるはずですし、それに関与した制作スタッフについても、じっくりと掘り下げられる事を期待しております。