■Play All Night: Live at the Beacon Theater
/ The Allman Brothers Band (Epic / Legacy = CD)
☆Disc-1
01 Statesboro Blues
02 You Don't Love Me
03 End Of The Line
04 Blue Sky
05 Nobody Knows
06 Low Down Dirty Mean
07 Seven Turns
08 Midnight Rider
09 Come On In My Kitchen
☆Disc-2
01 Guitar Intro ~ Hoochie Koochie Man
02 Jessica
03 Get On With Your Life
04 In Memory Of Elizabeth Reed
05 Revival
06 Dreams
07 Whipping Post
つい最近、例のフィルモアのライブ集大成(?)の箱物を出したオールマンズに対し、そこにはやはりライブバンドとしての存在意義を強く感じているわけですが、ど~してもデュアン・オールマン存命時の音源ばかりが優遇されるのは、致し方ない現実と思います。
しかしオールマンズが以降も存続出来たのは、その宿業的な幻影と戦う心意気を持っていたからでしょう。
だからこそ、バンドの内部事情諸々から離散集合を繰り返しても、ファンはオールマンズそのものを求め続け、ライブステージでは昔っからの同じ様なプログラムを演じ続けてくれる彼等に喜びを覚えるわけでして、それをもはや伝統芸能と言われればミもフタもありませんが、現実的には巡業の集客も良好ですし、スタジオレコーディングの新作よりは、発掘音源も含めてのライブ盤が人気を集めているのですから、サイケおやじも気持ちはひとつ!
そこで本日ご紹介の2枚組CDは今年になって突如(?)世に出た恒例のビーコンシアター物なんですが、1992年3月10&11日という録音データからして、おそらくは同劇場における初めてのロングラン公演を記録した公式音源になりましょうか。
メンバーはグレッグ・オールマン(vo,key,g)、ディッキー・ベッツ(vo,g)、ウォーレン・ヘインズ(vo,g)、アレン・ウッディ(b)、ジェイモー(ds)、ブッチ・トラックス(ds)、マーク・キノン(per)、そして古くから準レギュラーだったトム・デューセット(hmc) という、なかなか充実のメンバーが揃っていますが、もちろん今日的なお目当ては「ディッキー・ベッツ vs ウォーレン・ヘインズ」のギターバトル&コンビネーション、さらには所謂ジャムバンド系のバンドアンサンブルに他なりません。
ところが、そうなると浮かび上がってくるのがグレッグ・オールマンの存在で、はっきり言わせていただければ、キーボード奏者としての実力よりも遥かに凄いのが、ボーカルの説得力ですからねぇ~~。
局地的かもしれませんが、「象徴」なぁ~んていう扱いをサイケおやじは認めませんよっ!
で、肝心の中身は、まず録音とミックスが如何にも現代的な仕上がりになっていて、クリアな音質と各人の立場がはっきりとした定位、さらには臨場感も伝わってくるという迫力は素晴らしいと思います。
ただし、それが逆に綺麗過ぎて、ネチネチした熱気とか泥臭い突進力みたいな往年のサザンロックの特質を薄めてしまっているのも、確かなんですよ……。
そういうサイケおやじの気分を皆様にご承知していただいたところで、殊更気になる前述「ディッキー・ベッツ vs ウォーレン・ヘインズ」の結論から言えば、後者の勝ちでしょう。
中でもディッキー・ベッツの代名詞「In Memory Of Elizabeth Reed」におけるウォーレン・ヘインズのギターソロの物凄さは圧巻で、ど~やったら、ここまでのプレイが可能のかっ!?!
と、思わず呆れてしまうほどです。
しかし、ど~しても避けえないのが、デュアン・オールマンの代用品的なイメージで、それはオープニング「Statesboro Blues」のド頭から、あの鋭いツカミだったスライドギターによるイントロフレーズを丸コピーしているところからして言い訳無用でしょう。
もちろん、それを「芸の無さ」というつもりはありません。
何故ならば、もしも異なるフレーズやアレンジで「Statesboro Blues」がスタートしていたら、やっぱりサイケおやじを含む大方のファンは納得しないはずです。
そのあたりが偉大なバンドを継承運営していく難しさであって、だからこそ万年一日の姿勢が伝統芸能と揶揄されたりもするわけですが、同時に尊敬と安心感を与えくれる真実を否定してはならないはずです。
そして、だからこそ、グレッグ・オールマンのボーカルが必要なのだっ!
なぁ~んて、自分に言い聞かせてしまうわけですが、実際にブルースロック王道路線の「Low Down Dirty Mean」での歌いっぷりの良さに接してしまえば、後は自ずとオールマンズの世界に惹きつけられてしまうんですねぇ~~♪ なにしろバンドとしての纏まりも素晴らしく、終盤で繰り広げられるディッキー対ウォーレンのウエスタンスイング合戦も良い感じ♪♪~♪
また、アンプラグド風味も程好いグレッグ・オールマンが十八番の「Midnight Rider」では、リードとコーラスのボーカルアンサンブルも心地良く、往年のレイドバックが現代的に再現されていますし、有名過ぎるロバート・ジョンソンの古典ブルースをカバーした「Come On In My Kitchen 」におけるアコースティックな味わいも、なかなか捨て難いマンネリ感がたまりません♪♪~♪
ちなみにアルバム全篇を通してのミックスは基本が左にディッキー・ベッツ、右にウォーレン・ヘインズという、当時のステージライブを客席から楽しんでいるのと同じ定位なので、そういう当たり前のサービスをやってくれるところも長いキャリアの証でしょうか。
ですから Disc-2、つまり後半に入ってのギター&ドラムバトルを全面に押し出したプログラム展開も、余計な心配(?)をせずに楽しめるわけでして、しかしそうなっているからでしょうか、上手い事は無類のウォーレン・ヘインズのプレイには、ど~しても感動しない、あるいは出来ないのがサイケおやじの本音なんですよ……。
また、ディッキー・ベッツからも前向きな意思が伝わって来なくて、もちろんきっちりファンが望むところは弾いてくれているんですが、これじゃ~、ウォーレン・ヘインズに押されるのも無理ないか……等々、不遜な気持ちを抱いてしまうのは前述した「In Memory Of Elizabeth Reed」と同じくウリの「Jessica」においてさえ、以下同文???
当然ながら、随所に仕掛けられているオールマンズ伝家の宝刀であるツインリードでキメるリフにしても、スリルというよりは「お約束」の様式美で、例えばジャイアン馬場の十六文キックか、アントニオ猪木の延髄斬りの如し、ひとつの予定調和になっているのが物足りないという、そんな贅沢を言いたくなります。
しかし、ここでも威力を発揮するのがグレッグ・オールマンの存在で、一応は本人オリジナルとクレジットされながら、実はブルースロックの折衷スタイルで迫る「Get On With Your Life」は、その歌いっぷりに牽引されたかのような素直なプレイがバンド全体に行き届いた名唱名演かと思います。
それとあえて特筆しておきたいのがリズム隊の安定感で、看板のツインドラムスではジェイモーのどっしり構えたシンプルなスタイルに対し、手数が多いジャズっぽいパートまで叩くブッチ・トラックスが、ベースやパーカッションをも引き連れてのリズム的興奮度は侮れません。
普通はならば飽きてしまう長いドラム&パーカッションソロがすんなり聴けてしまう「技」があればこそ、大団円に向けての「Revival」「Dreams」「Whipping Post」の楽しさは格別でしょう。
おぉ~、ちょっぴりフュージョンっぽいところもあるんですねぇ~、この頃のオールマンズはっ!?
ということで、それほどの刺激に期待するのは禁物ですが、「全て分かっている楽しみ」を求めるのであれば、なかなか絶好のアルバムです。
特にウォーレン・ヘインズのファンは必聴!
あっ、CDの裏書を読んでみたら、プロデュースがウォーレン・ヘインズになっていました。
とすれば、おそらくは膨大の残されている当時のオールマンズ音源から、我田引水的なチョイスをやったのか?
そういう推測も避けえませんが、しかしディッキー・ベッツの名誉の為に書かせてもらえば、ここでのプレイは決してダメという事ではなくて、イマイチ調子がノッていなかったという、如何にも終わりなきプロミュージャンの日々の表れと思います。
皆様ご存じのとおり、当時のオールマンズは紆余曲折を経て1989年に再集結、ウォーレン・ヘインズを含む新メンバーによる巡業ライブやスタジオレコーディングによる気合いの新作アルバムも出していた頃ですし、このライブ音源の快演「Low Down Dirty Mean」、そして「Nobody Knows」や「Seven Turns」は、そこに収められているディッキー・ベッツ会心のオリジナル曲ですから、軽んじていたらバチアタリですよ。
そして個人的には同時期の1991年にドイツでやったテレビ用のライブ映像を収めたブートやハーフオフィシャルのCDがディッキー・ベッツ的には大熱演だと思っているので、ぜひとも皆様にもお楽しみいただきたいところ!
特にブートとはいえ、件の映像で堪能出来るディッキー・ベッツのコード選びや運指、ピッキングの技巧等々は、神々しいばかりですよ♪♪~♪
だからこそ、逆に言えば、このライブアルバムに物足りなさを感じてしまうのです。
う~ん、それでも楽しんでいるサイケおやじは、本日も自己矛盾しているのでした。