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日めくり万葉集(24)

2008年02月10日 | 万葉集
日めくり万葉集〈24〉は但馬皇女(たじまのひめみこ)の歌。選者は八ヶ岳の麓に住みながら、自然保護活動を続けている俳優の柳生博(やぎゅうひろし)さん。

【歌】
言繁(ことしげ)き
里〈さと〉に住(す)まずは
今朝〈けさ〉鳴(な)きし
雁(かり)にたぐひて
行(ゆ)かましものを

巻の8・1515   作者は但馬皇女(たじまのひめみこ)

【訳】
口やかましい里になど住んでいないで、今朝鳴いた雁と連れ立って飛んでいってしまえばよかったのに。

【選者の言葉】
霞ヶ浦のすぐそばに生まれ育って、たくさんの雁が春になると飛んでいく。それを見て、さあー、ここを離れたいという気持ちがいつもあった。里に住む人たちは、田んぼがあって、沼があって、オオヒシクイ〈雁の種類)たちがいっぱいいるが、春になると飛んでいってしまう。あー、わたしだってここを出たいのにと。

悪口を言われたり、うわさ話の中でなんで?という気持ち。これはみんなあると思う。いつも一緒にいたオオヒシクイがいっせいにわあーっと北へ飛んでいく。わたしも行きたかった・・・と。

鳥は他の動物と違って、人間が感情移入しやすい動物。鳥に気持ちを託したい。シベリアへ一緒に行くんだというように。そのころはシベリアというのはわからないが。遠くに別の世界があるというのはわかっていたのでは?

31年前にここ、八ヶ岳、南麓に来て、木を植え始めたころ、海を見たことがないという地元のおばあちゃんが何人かいた。歩いていく以外にすべがない時代。山や海の向こうへ行くということが想像もつかない。それを彼ら〈鳥たち〉は平気でやっている。どんなにあこがれたことだろう。

歌の素晴らしさについて。
行けばよかったと詠んだ途端、もういいか~みたいなものがある。いつまでもグジュグジュしていない。こんな悪口ばっかりなら、今朝、雁たちと一緒に行けばよかったのに~と詠んでしまったら、すーっとする。そこに表現する歌のすごさがある。(おわり)

【檀さんの語り】
人妻ながら恋に落ち、ウワサに悩んで但馬皇女が詠んだ歌。雁は万葉集では60首余りと好んで詠まれた鳥。その一種類がオオヒシクイ。

〈角川書店の『万葉集』という文庫本を買ってきた。すこしは解説が載っているかなと。その中の約140首を選び、訳も載っていて、この番組を理解する助けになりそうだ。

但馬皇女については、以前に高市皇子の妻でありながら、穂積皇子との不倫に走り、そのことで噂になって悩むという歌が番組でも取り上げられていた。いかにも気が強そうな気性が歌にも表れている情熱の歌姫だ。

読むほうもその歌を読みながら、思わずがんばれ負けるなといってしまいそうな、正直で鼻っ柱の強い女性。現代でも生きていれば、人間関係に悩んだり、うまくいかなくて行き詰まる、というようなことは必ずある。

柳生さんがおっしゃったように、表現するという行為は、怒りやなにかの感情も、書いてしまったらすっきりしたから、もういいか~みたいなところが確かにある。“いつまでもグジュグジュしていない”というのは、素晴らしいことではないか。)

【調べもの】
☆繁し・茂し(しげし)
①草木などが生い茂っている。
②密集している。
③数量が多い。
④度重なっている。
⑤いそがしい
⑥わずらわしい。〈この歌の場合はこの⑥)

☆たぐふ〈比ふ・類ふ・副ふ)
①並ぶ、一緒にいる。
②かたわらに伴う。連れる。



[古語辞典・広辞苑]




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