黒鉄重工

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北米project 4 ~Is the order a warbird? その46【2016/03/04~10】

2018-05-24 22:12:28 | 海外旅行記

2016年3月6日(日)10時20分
カリフォルニア州ペリス オレンジエンパイア鉄道博物館
グリズリーフラッツ鉄道車庫

入場してからだいたい1時間くらい経ったのですが、まだ半分には差し掛かってないですかね。まだまだ続くぞ。
ちなみに雨が上がりました。青空も見えてきて、もう雨の心配はいらないです。雨上がりなのでジメッとしてるのがちょっとアレですが、これで気分も高まります。



Source of map: Orange Empire Railway Museum (http://www.oerm.org/grounds-map/)
今はグリズリーフラッツ鉄道の車庫の前に来ています。地図上だと6番です。36inch(=3ft=914mm)狭軌鉄道という文字に心が踊るのでは?
グリズリーフラッツは知る人ぞ知るという鉄道のようですが、私は帰って調べるまで何も知りませんでした。

グリズリーフラッツ鉄道 Grizzly Flats Railroad はウォード・キンボール Ward Kimball (1914~2002)が設立した鉄道です。
彼の仕事は鉄道会社の社長ではなくディズニー社のアニメーターです。なので貨物や客を運ぶ普通の鉄道ではなく、趣味のために作った庭園鉄道なのです。庭園鉄道というのは屋外に乗用可能な鉄道模型を走らせるような趣味です。王道にして至高。

キンボールは1938年に消えつつあったサザンパシフィック鉄道の狭軌路線の客車を蒐集して自宅の裏庭に敷いた線路の上を置こうと思いました。鉄道車両の個人所有というやつです。最初はどうも客車を庭に置いて楽しむだけのつもりだったようです。でも自宅の庭は客車を置けるだけの空間を既に用意していたと言われてますから、コイツ元からすんげー鉄オタだぞ。

しかし、キンボールの妻やオタク仲間からは「客車を置いておくだけだと物足りないよね、機関車も集めようよ」と提案されます。こいつらノリノリだよ。オタクはともかく妻って普通こういうの止める役なんじゃないのしょうか。
しかも、ちょうどいい具合に廃車になった狭軌用蒸気機関車がネバダの砂漠で売りに出されていました。キンボールはこのネバダセントラル鉄道の1881年製蒸気機関車を400ドルで購入して「エマ・ネバダ」という名前を与えます。

機関車と客車が揃った後やることと言えばそりゃもう、復元して、走らせるしか、無いでしょう、人として!
キンボールはもちろん妻やオタク連中も巻き込んで週末に復元作業をして、1942年になんと270mの線路と共に運転開始にこぎつけます。その時にグリズリーフラッツ鉄道を立ち上げたのです。
つまり車両自体がやや小型とは言え、原寸大の本物の鉄道車両を自分ちの庭で走らせるんだから、これはもう鉄道趣味の極致のひとつでしょう。すげーわ。
その後もキンボールは蒐集を続けていき、カブース、有蓋車、家畜車、無蓋車等、貨車も集めていき、機関庫、駅舎、給水塔といった付帯設備も建造(移築?)しました。

1992年からは、蒐集品の一部をオレンジエンパイアに寄贈し始めました。この時既に80歳近い年齢なので、そろそろ整理を始めた方が良いと思ったのかもしれません。2001年に博物館に本格的な保存施設を建設したのですが、翌年キンボールは亡くなりました。
死後も家族の手により2006年までグリズリーフラッツ鉄道は走っていました。これほどの趣味、家族の理解があればこそだよなと。そして運転を終了した翌年の2007年にグリズリーフラッツのすべての車両をオレンジエンパイアに寄贈したのでした。以降、車両はここで静態保存されています。

オタクの鑑というか行動力の化身のような人ですね。趣味に全力を出した人生は羨ましいものです。



私は上記のことは知らずに入ったのでアレでしたが、中を見て最初に思ったのが車両の小ささなのでした。軽便鉄道みたい。



サザンパシフィック鉄道#223無蓋車(1917年自社製)
SPが保有していた3ft狭軌路線用の木造無蓋車。
SPの狭軌路線はカーソン&コロラド鉄道(1880~1900)を買収したもの。ネバダ州とカリフォルニア州東部に跨って走っていた鉄道です。コロラド州までは行ってない・・・。3ft鉄道と侮るなかれ、総延長は300mile(=480km)で、グランドキャニオンの峠越えもする山岳路線なのです。
建設したは良いけど十数年で経営に行き詰まって1900年の世紀末にSPに売却したそうな。標準軌の他路線と直通できない狭軌にしたのが祟ったんじゃないかしら。
SPもよく買ったもんですが、直後に金山と銀山が見つかってフィーバーしたとのこと。とはいえそれも一過性のものなので、1930年代から段階的に廃線が進んでいって、1960年に全線廃止になりました。



グリズリーフラッツ鉄道#1「クロエ」蒸気機関車(1907年ボールドウィン製)
元はハワイの製糖会社ワイマナロ製糖で使われていた2号機関車「ポカー号」。車輪配置は0-4-2ST、石炭焚きの産業用機関車。砂糖の原料であるサトウキビ輸送で使われました。
1937年にボイラーの交換と重油焚き改造をされます。しかし1945年にサトウキビ輸送がトラック転換されて線路は廃線、機関車もお役御免となりました。その後1948年にジェラルド・ベストという人が機関車を購入してカリフォルニアまで運んでいきました。
同年キンボールが購入してグリズリーフラッツ仕様に改造、地味な産業用機関車から派手な色使いで再塗装されます。さらに1950年代にはサドルタンク、燃料タンクを撤去して新しい水タンクをキャブの後方に設置。これにより車輪配置は0-4-2RTになります。RTというのはリアタンク機のこと。燃料は重油から薪になりました。さらにキャブも新しく作り変えます。
鉄道模型の改造みたいなことするね・・・。ここまで大掛かりな改造をするとなると彼の中に元ネタとなる機関車がいたのかもしれませんね。
この時に「クロエ」という愛称を与えています。クロエはキンボールの娘の名前です。
最初に買ったエマ・ネバダ号は石炭焚きだったんですがこれの煤煙が近所迷惑になったので、グリズリーフラッツ鉄道の晩年はこれを牽引機に使っていたようです。薪焚きだとそういう苦情は来なかった模様。



グリズリーフラッツ鉄道#7客車
クロエ号に連結されていた開放式の2軸客車。とてもかわいらしい。たぶん製糖鉄道の貨車を種車にして自作したのではないでしょうか。
造りがウェスタンリバー鉄道やディズニーランド鉄道のそれとそっくりでして、これらの元ネタになったんじゃなかろうかと。
あとは連結器が朝顔式なのが珍しいなと。

するとここで、外からエンジン音が聞こえてきました。自動車のそれではないので、とするとディーゼル機関車が出しているに違いありません。
慌てて一時外に出て横を走っている線路へ近づいてみました。



!!!えっあっ、マジか、今日これが動いてるのか!
オレンジエンパイアは動態保存系の博物館なのは今までの収蔵品を見てなんとなく感じ取れてると思うんですが、そこの動態保存機関車のひとつがこいつです。
正体はユニオンパシフィック鉄道のEMD E8A形#942です。詳しいことはまた後で紹介するとして・・・、アメリカの動態保存ディーゼル機関車初めて見たぞ、うわーすごいぞ、でかいな(語彙力



微速前進して線路を行ったり来たりしていました。整備後の試運転?にしてもこんなデカいのをボランティアが動態保存してるのかと。
これは興奮しますって。機関士に手も振っちゃいますよ。



そしてさっき見た路面電車の車庫から車両が出庫していくところも目撃しました。お、なんだ?お前も走るのか?
これも今は無視します。後ほど後ほど・・・。



グリズリーフラッツに戻りましょう。お次は1人乗りの軌道自転車。後ろにもう1人乗せてニケツも出来る。ベロシペードと呼ぶそうな。
これを使った郵便配達サービスが19世紀には行われていたようで。当時の新聞の切り抜きによればフリル姿の女性が郵袋を持って軌道自転車を漕いでいるのですが、女性が小遣い稼ぎにやってたのかしらん?
列車との衝突が心配ですけど、どうにかなってたのでしょうかねぇ?



自転車っぽいですがペダル駆動ではなくて、手漕ぎトロッコのように前のハンドルを掴んで前後に動かして走らせます。なので自転車よりも古い乗り物のベロシペードと呼ぶのだと思います。
なかなか興味深い乗り物です。



保線用の手漕ぎトロッコです。
牽引車両の後ろに保線道具と保線員を満載したトロッコを連結して現場に向かってたんでしょう。さすがネバダの砂漠といったところでしょうか、ド田舎みたいな印象です。
牽引車の方は地味にブレーキが付いていて、意外としっかりしてるんだなと。



仕事道具。
レールベンダー、グラインダー、レールのこぎり、釘抜き等々・・・。キンボールがこれを使って線路を敷設したのかも。



別の保線トロッコ。



サザンパシフィック鉄道#65家畜車(1912年製)
歯抜けになった有蓋車のようなこの貨車は家畜車と呼び、名前通り家畜を輸送するための貨車です。これが製造された頃すでに氷で冷却する冷蔵車はあったのですが、鮮度の確保が難しい肉類はまだ生きたまま運んでいきました。
元々は3ft狭軌鉄道のネバダ・カリフォルニア・オレゴン鉄道(1880~1925年)の車両でしたが1925年に財政難からサザンパシフィック鉄道に売却しました。ネバダ・カリフォルニア・オレゴンの路線は1928年に標準軌に改軌されましたので、3ft軌間のこの家畜車は旧カーソン&コロラド鉄道の路線に転属になりました。
廃車後にグリズリーフラッツの一部になりました。
車体は形は保ってますが全体的に荒れています。でもこれ、SPを引退してから手を加えられてない原型度の高い車両なのかもしれません。



ウェストサイドランバー社#7カブース(1949年製)
総延長400km(250mile)のカリフォルニアの森林鉄道のカブースです。長物車の台枠を流用して改造したとかで。
ウェストサイドランバーの森林鉄道は1962年に廃線になりましたので、その後グリズリーフラッツに引き取られたかと。
一般的なカブースと形状は異なっているのが興味深いです。色々あるんだねぇ。

今日はここまで。


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