黒鉄重工

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北米project 5 ~How do you like Canada? その34【2016/6/15~22】

2023-08-30 06:11:00 | 海外旅行記
2016年6月18日(土)12時53分
オンタリオ州トロント トロント鉄道博物館
ユニオン駅から歩いてやってきたのは「トロント鉄道博物館 (Toronto Railway Museum)」です。
鉄道博物館は広大な敷地が必要なので郊外や田舎に立地することが多いのですが、当館はダウンタウン内にあります。アクセス性が高いのです。


なんでわざわざダウンタウンに鉄道博物館があるかというと、ここはカナディアンパシフィック鉄道 (CP) の扇形車庫と転車台が残っているからです。扇形車庫と鉄道博物館の組み合わせは鉄板ですからね。
このジョンストリート扇形車庫 (The John Street Roundhouse) は1931年に建築されました。車庫は32番まであり、車庫の外周は180度を超えています。扇形車庫の中心にある転車台は37mあり、CP史上最大です。
蒸気機関車がディーゼル機関車に置き換えられて無煙化されると扇形車庫は役目を終えて1986年に閉鎖、トロント市に寄贈されました。1990年にはカナダ国定史跡に指定され、1997年にトロント市の公園「ラウンドハウスパーク」として整備されました。今は鉄道博物館の他にレストランやビール醸造所が入っているようです。
トロント市内に現存する扇形車庫は最盛期はいくつもありましたが、現存するのはここだけです。ここもよく再開発から生き残ったと思います。都会に残された鉄道のオアシスです。


あれは給水塔ですね。大型の水槽が2つもあります。32機分収容できるとなると水槽も大きいのですかね。


扇形車庫の17番線 (Stall 17) は博物館の一般公開区画になっています。他に15・16番線も博物館が使っていて、車両の復元修繕の作業に使っているらしいっす。
車両や物品が所狭しと並べられているので、意外と窮屈な印象でした。


時刻表というか列車の運行時刻表です。CPの大陸横断列車「カナディアン」2号(トロント発)と337号(ウィンザー発)のバンクーバー行の運行時刻です。2号と337号はサドバリーで併合してバンクーバーへ向かうはずです。


鉄道会社の制服です。たぶんCPの制服だと思います。


軌道自転車です。日本ではレールスターとも呼びますかね。カナダではもっぱら3輪車が用いられてきました。


そして、実物の客車です。狭いので全体を撮影するのは難しいのですよ。ダブルルーフとニス塗り木造車体が古風です。
これは「ノバスコシア号 (Nova Scotia)」。1896年プルマン製で、元々は「サンパレイル号 (Sanpareil)」という名前のドミニオンアトランティック鉄道の食堂車でした。サンパレイユというのは「比類なきもの」を意味するフランス語だとかで。また同社はノバスコシア州を地盤とする地方鉄道でした。
1912年に同車のGM専用ビジネス車「ノバスコシア号」に改造されました。1958年にCPに転属して7号車というそっけない番号に変えられて、1963年に廃車になりました。廃車後はトロントの鉄道愛好会が購入して1970年まで蒸気機関車に連結される団体列車に使われてたみたいです。それからはここで静態保存されているんだと思います。


このマルーンの鋼製車はCPのビジネス車「ケープレース号 (Cape Race)」です。1926年ナショナルスチール車輌製。元々は15台製造されたリバー形のうちの1台「リバーレアード号 (River Liard)」でした。艤装は自社のアンガス工場で行われ、男女別のシャワー室、革張りの喫煙室、展望パーラー、女性用ラウンジ、小さなビュッフェが備えられた豪華な客車でした。
1929年から全車寝台車の大陸横断列車「トランスカナダリミテッド」(モントリオール/トロント~バンクーバー)で乗客サービスのために連結されていました。しかし1931年の世界恐慌により不景気となると利益を生まないこの客車を連結する余裕もなくなり、わずか2年で撤退します。
しかし1941年に第二次世界大戦が始まると需要が高まり、リバーレアード号にも招集がかかります。復帰に際して冷房装置追加と内装改造(コンパートメント1室、ダブルベッドルーム4室)名前も「ケープレアード号」に改名されます。シャワー室などは撤去されてしまい単なる寝台車に変わり果ててしまった感もあります。
1947年、戦後のナショナリズムの高まりからカナダらしさを出すために車名を「ケープレース号」に再度改名します。この改名はCPの大半の客車に及んだと言われています。ケープレースというのは地名でして、1912年タイタニック沈没時の救難信号を最初に受信し、各地に中継した場所として知られています。
戦後は大陸横断列車「ドミニオン」で運用され、バッドステンレス客車に置き換えられる形で1954年に運用を離脱しました。その後1963年に名無しのビジネス車13号車になって1969年に鉄道愛好会に売却されました。これもノバスコシア号同様団体列車に連結されていましたが1970年代に運行されなくなりました。その後は当地に保存されて今に至ります。


金床です。鉄道工場から見つかったものだとかで。蒸気機関車などの部品はこれを使って修理や自作をしていたのかも知れませんねー。


鉄道博物館あるある、壁に貼られた各種標識。
駅名標から速度制限から線路標識から色々。


ロードスイッチャーの運転台の中に入れるかと思ったら、中には運転シュミレーターがありました。


ロードスイッチャー、つまり入換作業もできる本線用ディーゼル機関車の運転台です。実はこの目でちゃんと見るのは初めてのことですよ。
まずハンドルや計器盤が斜めに取り付けられていることですね。本線走行と入換作業を両立させようとするとこういう配置になるんですなー。
左のハンドルはブレーキハンドルです。2種類あるのは日本と同じです。しかし上側が自動空気ブレーキ(列車全体用)で下側が単独空気ブレーキ(機関車用)で配置が逆だったはずです、たしか。
右側の黒いハンドルは、上側が発電ブレーキで下側がスロットルです。ブレーキとスロットルではハンドルを回す向きが違います。


館内はそこそこに外の展示車両を見てみましょう。
これはカナディアンナショナル鉄道 (CN) の炭水車です。水槽はもうタンク車みたいな風貌ですが、この方がコスト低いんだろうなーと。


CNのEMD F7A形(GFA-17a形)9159号機のカットモデルです。本当は9038号機らしい。1951年カナダのGMD製で、1991年廃車です。
廃車後個人が所有して地道に復元をしたあと2007年に当館に寄贈されて運転シュミレーター筐体として使われている模様。


CPのアルコS-2形7020号機です。初期のディーゼル入換機で、1944年アルコ製。1985年に廃車されましたが、その現役時代の殆どをトロント市内で過ごし、入換や専用線での列車牽引等に活躍しました。廃車後にトロント市へ寄贈されています。
S-2形はアルコが車体部分を、ゼネラルエレクトリックが動力部分をそれぞれ担当して製造される共同開発機でした。


台車です。見たところでよく分からないのですが。
ディーゼル機関車といっても、動力部をGEが担当したことからも察せるとおりエンジンで発電した電気で台車のモーターを動かす電気式ディーゼル機関車です。なのでこれも電動台車なわけです。
7020号機のエンジンは稼働状態にあるとのことですが、走行もできるかはよくわからんです。


当館では最も独特な車両だと思います。ラインハートビネガーズ社RVLX101号タンク貨車です。
酢を輸送するために造られた木造のタンク体の貨車なのです。お酢と言っても工業用の酢酸が主だったそうですよ。
製造年は1938年で、当時だったら普通に金属製のタンク体は製造可能です。なのでわざわざ木製タンク体を造ったのは、酢酸がもたらす金属の腐食対策でしょう。アルミニウムなど腐食しない金属もあるんすが、まだ実用段階じゃなかったか、費用面で折り合いがつかなかったんかしらん。


台車の外側に謎の小車輪が付いていますが、用途は謎です。謎ですが一応ここにも書いておきます。

というところで今日はここまで。


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