黒鉄重工

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北米project 4 ~Is the order a warbird? その43【2016/03/04~10】

2018-05-15 23:45:10 | 海外旅行記

2016年3月6日(日)8時30分
カリフォルニア州チノヒルズ ホテルチノヒルズ

3日目のスタートです。この日もロサンゼルス近郊の博物館と対決します。
まずはホテルから車で45分くらいのペリスにあるオレンジエンパイア鉄道博物館 Orange Empire Railway Museum を目指します。今回の旅行で唯一の鉄道博物館です。
同博物館はロサンゼルス近辺では最大の鉄道博物館と言われています。設立は1956年と歴史の長い施設で、当初は当時消えつつあったロサンゼルス鉄道(1901~1963年)の路面電車の保存活動を主としていたようです。
その後路面電車以外の普通の鉄道車両も蒐集し始め、現在では様々な車種を所有する規模に成長しましたが、路面電車を主軸に活動しているという点は今も変わらない様子です。

今日はそういうところへ向かいます。なお天気は雨・・・。昼には止むようだけど。



また迷いました。
ハイウェイを降りて博物館まで後少しというところで道を見失いました。そこら辺の道をとろとろと走っているとバスの車庫みたいなところが見えました。

・・・よく見るとこれフィッシュボウルじゃないですか!
1960~1970年代(カナダでは1980年代まで)製造されていたゼネラルモーターズ製の路線バス「ニュールック New Look」です。6枚のガラスを使用した立体的な風防からフィッシュボウル(金魚鉢)のあだ名があり、こっちの方が通りが良いようです。4万4千台が製造され運用期間も長かったので当時の路線バスを象徴する存在なのです。
流石に近年では路線バスとして現役の車両は皆無でしょうが、機械の動態保存が活発な北米ですので少なくない数が引退後も現存していると言われています。
これも保存団体あたりが所有しているバスでしょうけども、まさかこんなまとまった数が置かれているところに遭遇するなんて。



すごいゴロゴロしてる・・・。
どこの企業で使われていたのかは分かりませんが、どれもカラフルですね。



一番奥の屋根が一段飛び出ているバスはGM製のバッファローバスです。
車内が2段構造になっているハイデッカー型の高速バスです。フィッシュボウルとは部品を共通化させてるとか。

思いがけず良いものが見れたところでオレンジエンパイアを目指します。



着きました、橙帝国!
・・・今日は日曜日なんだけど、人が見当たらないぞ?駐車場にも何も停まってなかったけど大丈夫か?
看板はOpenって書いてあるし門扉も開いているから入れるんだけど、チケット受付は閉じていたぞ。

・・・とりあえず受付は突破してしまいます。人が居ないことはないと思うんで、その時に事情を話そう(なお後でわかったことですが、敷地内を見学するだけなら入場料は無いとのことでした



敷地内に侵入。線路が敷かれておりますね。
手前の線路は架線が張られていて、電化路線です。これはたぶん路面電車が走るんでしょう。
植木の奥で分かりにくいですが奥にも線路があります。こっちは非電化路線です。車両搬入とかに使うのかな?
それにしても天気が悪いなぁ。



振り返ってみるとプラットホーム。奥には車両が止まっていますね。行きましょうか。



あったのは客車とタンク貨車なのでした。
この雑な置き方はここが定位置ではない・・・つまり動態保存車という可能性が大きいです。アメリカの博物館はこういうのばっか。



客車は座席車2両と座席/荷物合造車1両の3両編成。
手前の合造車はサンディエゴ&アリゾナイースタン鉄道(SDAE)#175。1917年プルマン製。
SDAEはサンディエゴからカリフォルニア州エルセントロまで延びる約235kmのショートライン(地方私鉄)です。アリゾナまでは行かなかったようで・・・。
エルセントロではサザンパシフィック鉄道と接続していて、ここからサンディエゴまでを短絡するのが目的の鉄道だったそうです。
しかし途中にはグランドキャニオンの山岳地帯が横たわっているので敷設は困難とされていました。そこで、なんと隣の国のメキシコを経由して線路を繋げています。そんなんアリなのか。
会社はなんと現存しているようですが、2016年に連邦破産法第11章(通称チャプター11)を申請しているようなので状況はお察し・・・。

屋根がアーチ屋根なんですが、この年代の車でもこういう屋根があるんですね。



デラウェア・ラッカワーナ&ウェスタン鉄道(DLW; ニューヨークとペンシルバニアを結ぶ鉄道)#2350座席車。1920年プルマン製。
普通の座席車に見えますが妻面に注目。窓がついていますね?あれ怪しいのでみんなも見かけた時は要チェックだ。具体的には過去に電車として運用されてた時期があったかもしれないのです。
案の定でして、客車として新製後、1930年に電車化改造されてた模様。ただし、モーターを積まない制御車いわゆる「クハ」に改造されて、新造された「クモハ」とユニットを組んでクハ-クモハの2両編成で運用され、1984年に廃車になった模様。
塗装はサザンパシフィック鉄道になっていますが、これは映画撮影時に塗り替えられたもので、#2350自体には何の縁もないらしい。



サザンパシフィック鉄道(SP)#2144座席車。1917年プルマン製。
サザンパシフィック鉄道(1865~1996年)はアメリカ南部や西海岸に路線網を持っていた一級鉄道(大手私鉄)です。旅客型蒸気機関車GS-4やキャブフォワード式の貨物用蒸気機関車あたりが有名か。現在はユニオンパシフィックと合併して消滅していますが、旧SPのディーゼル機関車が今も塗装を変えずに走っているとか。
この客車は都市近郊の短距離列車に使われてたそうな。



プラットホームを抜けると・・・ヤード線のようなところに出ました。行けないわけでもなさそうなので近寄ってみます。



なんか未来的な謎客車。この車体ってアルミニウム無塗装だよね。こんなのがアメリカにいたのか。
後でわかったことですが、これはニュージャージートランジットで約10年前まで使われていたコメットI形という通勤客車です。ずいぶん遠くからやってきたね。
この客車は後にまた出てくるのでお楽しみに。



4両編成になってヤード線に留置されてました。なんでまたこんなに・・・という感じです。
後に感じたことですが、アメリカの鉄道博物館って気になった車両はとりあえず手に入れてしまって使いみちは後で考えよう、という気がしないでもなく。保存鉄道に於いては「形が残っていればなんとかなる」というのがあるので基本的には良いことと思いますが、節操なさすぎじゃない?と感じるときも時々ありますね。



コメットIの台車。台車枠が車輪より内側にあるのが特徴的です。アメリカのこういう通勤客車ではたまに見かけますね。なにかメリットが有るのかしら?



プラットホームに戻ってきて別の線路に停まっている車両を観察。
これはユニオンパシフィック鉄道(UP)#85727ホッパー車。1626年PC&M製。
PC&MはPullman Car & Manufacturingの頭文字で、プルマン社の車両製造部門です。1924年に分社化させたもので、これ以前と以後では同じプルマン製でも表記が異なっています。プルマンと言うと寝台客車のイメージが強いですが、貨車も製造していたんですね。
片側2口の仕切りを持つホッパー車で比較的小型、つまり重量物を運んでいたということで、もっぱらバラスト散布車として使われていた模様。ここでもバラスト散布車として使われているらしい。保存車を保守作業に使うっていう使い方が豪快なんだよな。



プルマン コリードン Corydon 寝台車(1917年プルマン製)
プルマンが所有していた寝台客車です。比較的近代的な見た目ですがだいたい100年前の製造というチョー古い車。しれっとこういうのが置かれているのがアメリカなのだ。
寝台は7C,2B配置・・・コンパートメント7区画、特別個室寝台(Drawing room)2区画で構成された客車です。コンパートメントは1区画につきベッド2つ、個室寝台は1区画につきベッド3つがあり、合計20寝台です。どちらも個室ですが特別個室寝台の方が格が上です。Drawing roomは通常では応接間を意味しますしね。
典型的なプルマン寝台車と異なり全て個室で構成されている点が特異な存在です。ベッド数も20しかなく、結構上級な寝台車だったのではないでしょうか。
CorydonというのはSherpherd(羊飼い)の古い言い方だそうな。車両は1944年に引退しましたが、その後みんな大好き20世紀フォックスが買い取って映画撮影用の小道具として使用したので今も生き残っているというところでしょうか。



この時代の寝台車なので台車は3軸を履いています。台車と車体を鎖で繋いでおくのは何か意味があるのか?
3軸台車はこっちでは割とよく見かけますが、日本だとほとんど残っていないのでやはり目についてしまいますよね。



ユニオンタンクカー#1701タンク貨車(1966年製)
油槽内が3区画に分かれている燃料用タンク車です。アメリカの鉄道特有の点として車両のリースというのがあります。リース会社の持つ貨車を貨物を運ぶ荷主にリースするわけです。古くは19世紀から始まり、20世紀初頭には既に車両リース産業が形成されていました。リース方式は歴史も古く方法も何種類もあるので複雑怪奇・・・ここで取り上げるのはやめときます(調べるの面倒
これの場合は貨車ですが、他にも機関車や客車もリース対象です。プルマンの寝台車も、車両はもちろん乗務員や運行サービスも一括したパッケージで販売するリース方式の一種と言えます。

ユニオンタンクカーもリース会社で、名前通りタンク車に特化した会社です。現存する会社で、今も同社の貨車がそこら中で走っています。車体に書かれる報告記号はUTLXなのでみんなもタンク車を見かけたら探してみよう。


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