湘南発、六畳一間の自転車生活

自転車とともにある小さな日常

残雪にはじける

2013年05月07日 | 山・山スキーなど
 久し振りに大きな自然のなかで遊びたくって、スキーを持って尾瀬の至仏山に向かった。久々のスキー山行にもかかわらず、今回はそれなりに滑れるアルペンタイプの山スキーではなく、細板革ブーツのテレマーク。まともには滑れないと思うけれど、さすがに20年近く前に買ったプラブーツを使うのは怖かった。斜滑降と横滑りを駆使して、とりあえず無事に残雪期の山を楽しめたらよしとしよう。

 登山口の鳩待峠に到着したのが、ちょうど日付の変わった0時。無事たどり着けてほっとした。車から出て頭上をみやると、こぼれんばかりに星が輝く。すごいとかきれいとかいうことより、最初に感じたのは懐かしさだ。どんなに空気の澄んだ冬の夜でも、日常のなかでは決して見ることのできない星空。そんな種類の特別の星空を、今までどれくらい見てきただろう。 

 5時間くらいしっかり眠り、準備をして6時少し前に歩き出す。例年に比べると雪は少ないらしいけれど、峠からすぐにスキーを履くことができる。ブナの森のなかをゆっくり標高を稼ぐ。少し前に降雪があったからか、この時期にしては雪が汚れていなくてとてもきれいだ。しばらく登っていったところで、目指す至仏山方面の景色が開けた。あまりの素晴らしさに心が躍る。すごい。そしてなんて快適そうな斜面なんだ。

 シラビソの樹林帯を抜ける前に、ゴアの雨具を羽織る。さすがに風が冷たい。そこからは明瞭な尾根を辿る。申し分のない天気で、コースミスの心配はまったくない。途中小至仏山のトラバースがどうかな?と思っていたけれど、雪質的にも斜度的にもまったく問題なかった。そしてそこから程なくして山頂に到着。写真を撮りながらかなりのんびり登ってきたけれど、それでも3時間かからずに到着することができた。

 山頂で少し休んでからいよいよ滑降開始なのだけれども、革のブーツが結構やばいことになりはじめているので、当初考えていたムジナ沢ではなく、登山口に近いワル沢に滑り込むことにする。とはいえ、久々のスキーなうえに、ゲレンデでさえも不恰好にしか滑れない細板革ブーツのテレマークということでボーゲンや斜滑降ですらおぼつかない。大丈夫か?

 いや、これがもう全然大丈夫ではなかった。ゆるい斜度と優しい雪質じゃなかったらやばかったと思う。ただ全然うまく滑れなくても、やはり僕はこういう遊びが好きなのだ。優位だからとか、うまくできるからとかでなく、ただ好きだというそういう気持ちって結構嬉しいものだ。スキーに、そして雰囲気に慣れはじめてからは少しずつテレマークターンにもチャレンジしていった。その分たくさん転倒もしたけれど、転倒もまた楽しである。とくに気持ち良かったのが、少し足を伸ばしたオヤマ沢上部。ほとんどシュプールのないきれいな斜面を滑るのは爽快以外の何ものでもなかった。

 オヤマ沢から再びワル沢に滑り込んで少しして広大な斜面は終了。あとは樹林帯を沢が流れ込む川に向かって高度を下げる。樹林帯ということもあって、ここは少し難儀。それでもコンパクトなコースということもあり、大きな苦労はなく雪に隠れた川に降りてくることができた。ここからは2度スノーブリッジを渡って20分ほどで鳩待峠。シールを貼るためにスキーを脱ぐと、すでにあやしくなっていたブーツのソールが今にも剥がれそうだ。スキーだから大丈夫だろうと山頂を目指したけれど、ツボ足だったら絶対に撤退だったな。

 スキーを履く前に、雪野原のなかでおにぎりやパンを補給。雪のある時期の定番になっている蒟蒻畑が相変わらずすごくうまい。来て良かった!

 補給後、出発地点の鳩待峠を目指して歩き出す。一か所スキーでは厳しい斜面があったのだけれども、ツボ足ではブーツが持ちそうもないので、横向きに階段登行でなんとか登り切った。そして鳩待峠に着いてスキーを脱いで、駐車場に戻る途中で左のソールが完全に剥がれた。いやぁ、ぎりぎりだった。なんとかもって良かった。決して誉められたことじゃないけれど、しっかり山頂を踏んで無事戻ってこれたのだから御の字だ。

 帰りは、近くに行ったら寄ってみたいと思っていた焼肉あおぞらでがっつりランチ。うん、うまい!その後は温泉でゆっくり汗を流してから帰宅。

 はじめて訪れた至仏山のスキーツーリングは想像以上に快適だった。モチベーションがあれば、新しい機材でまた来年訪れたい。次回はしっかり滑る!