YS Journal アメリカからの雑感

政治、経済、手当たり次第、そしてゴルフ

同盟漂流:船橋洋一

2010-02-08 06:38:36 | 書評
同盟漂流は、あとがきにある様に、船橋洋一が朝日新聞のアメリカ総局長として1993年9月から1997年8月までアメリカ側から取材した後、日本の取材を経て、1997年11月に発行されている。その当時に購入し、読んでいるはずでなのであるが全く記憶になく、昨年以来、普天間問題が話題になった時にこの本を思い出し、読み返すに至った。

読後の一番の感想としては、普天間を巡る状況は15年前と何も変わっておらず、この間日本は一体何をやってきたのかという事である。対アメリカ、対中国、日米安保どれをとっても、何の進歩も無いのである。この間日本は状況に振り回されるだけで、全体的な状況分析に基づくシナリオをいくつか作り、シュミレーションを行うという基本的な事すら出来ないようである。又、その当時、太田知事のものとで沖縄で一番の悲願であった普天間返還が約束したにも関わらず、実現出来ない日本政府は、世界に恥を曝しているのであり、自覚が無いまま米中の間でゆっくり沈没しつつあると言う事である。

特に辺野古移転に関して、ジュゴンや珊瑚礁の環境問題で反対する人達、建設会社との密約などで論じる人は、外交が分かりませんと自分で宣伝している様なものである。

登場人物が多いのだが、15年たって読み返す事で政治家や有名な人々ではなく、政府の実務レベルの人々の今が面白い。その中で2人挙げておこう。田中均と守屋武昌だ。アメリカ国防省は2人について、日本の軍事問題を戦略的に考える事が出来ると高い評価が為されてたにも拘らず、田中は小泉時代の北朝鮮との交渉で叩かれ、守屋は贈賄で有名になり、沖縄問題では途中下車した形となっている。

船橋洋一のスタイルは、ニュージャーナリズムの流れを汲むのだが、この本の出来に関しては疑問符がつくと思う。取り込むべき情報が多く、煩雑になるのは宿命だが、時間軸を行ったり来たりする事で、ある場所の流れはスッキリすのだが、全体像が上手くまとまってないと思う。読むのに一月程掛かったのは、情報量に圧倒された事もあるが、まとまりの悪さで読む気がなかなか湧いてこない事にあったようだ。

ニュージャーナリズムはあたかも見てきた様に書くために、エピソードや会議での発言や振る舞いを描く事で、登場人物が具体化する事で理解が深まる。特に、その後(本の時代後という意味)、表舞台に登場したりすると、その時点での流れスッキリ分かる様になる。(それだけに田中均と守屋武昌が今、表舞台にいない事が不自然な感じがする。)著者はノンフィクションだけではなく、取材を基にした分析も出版しているそうなので、米中関係のものは読んでみたいと思う。

沖縄に基地問題をじっくり考えたい人には絶対にお勧めの本である。(文庫も出ているようだ)

菜の花の沖:司馬遼太郎

2010-01-14 12:30:12 | 書評
「坂の上の雲」を読んだ勢いで、「菜の花の沖」も読んでしまった。

記憶では、本棚に10年くらいは積んであり、第一巻の途中で放り投げた事などを思い出しながら、今回は何とか文庫で全6冊読破した。江戸後期に函館を中心に活躍した高田屋嘉兵衛の物語で、前半は高田屋の勃興を中心に日本沿岸海運の発達、後半は高田屋嘉兵衛がロシアの捕虜になった事で、江戸幕府の開国前の外交が軸となる。

先入観としては、商人高田屋嘉兵衛のイメージが強く、ビジネス書の様に読もうとしていたが、後半のロシアとの捕虜交換(かれ自身が捕虜なんだが)を巡っては、日本の外交の原点を読んでいるようで、非常に興味深かった。日本人の持つ、暗さや嫌な所が、高田屋嘉兵衛やロシア側の記録によって炙り出されており、現代に続くいじめ、国内政治の一貫性の無さ、外交の不手際の原点を見るようだ。

いじめ、意地悪については、心理学的にスタンフォード監獄実験などで、立場の違いから来るので、日本人特有のものとも思えないのだが、江戸時代の階級制度や住む場所の固定化で、日本人が同一集団を作る性質を強く持つ事で、排他的ないじめ、意地悪が強く出て来る様な気がする。

江戸時代でも、田沼意次が商品経済の本質を理解して海運業の発展もあったが、次の老中が農本主義(自給自足)に戻すなど、混乱が起きたりしている。(この辺は佐藤雅美の本で読んだ様な記憶がある)江戸時代の蝦夷開発にしても、松前藩から直轄地にしてまた松前藩に返すなど、一貫性に欠けている。幕府の直轄地経営で伸びた高田屋は、高田屋嘉兵衛の死去後数年で、松前藩の逆恨みと言うべきいちゃもんで取り潰しとなる。

外交の不手際については、鎖国している以上、公式にはロシアと外交交渉が出来ないなかの捕虜交換は、高田屋嘉兵衛の活躍も有り上手く事が進むのであるが、権限を持っている幕府の役人や担当当事者のほとんどが世界を知らないという事に関しては、現代と大差ない様に思われる。

読んでいて気持がよいのは、高田屋嘉兵衛を始め、登場する船頭達の清々しさである。海は、人の存在を矮小化させる事で、謙虚な気持を育むのであろう。(意地悪な船頭も一杯出て来るので、素質は必要であろうが)又,伊能忠敬や間宮林蔵も登場し、江戸時代後期の独特の発達を遂げた測量術等、町人が活躍出来る環境など、開国、明治そして戦後の経済発展の萌芽も見る事が出来る。

惜しむべきは、それほど必要があるとも思えない当時のロシア事情に第5巻めが費やされており、間延びしている。作家司馬遼太郎ではなく、歴史エッセイスト司馬遼太郎になっている。司馬遼太郎の年表を見ても、長い作品としては「菜の花の沖」が最後であり、体力が無くなって来た事を伺わせている。

今更、司馬遼でも無いような気がするが、好きな作家の一人である事には変わらない。

Game Change

2010-01-13 03:56:15 | 書評
Harry Reidの失言のソースは”Game Change”で、2008年大統領選挙を予備選(党の候補者選び)までさかのぼって取材した本です。TV、ラジオでは、Harry Reidの失言だけで無く、色々と話題に上っております。

未だ、ちゃんとした書評さえお目にかかっておりません。(インターネット上ではぼつぼつ出て来ております)アマゾンでは、本の出荷は1-3週間かかるようで、キンドルはもう少し掛かるようです。今の報道ぶりから、入手出来る頃には、内容が全て分かってしまって、買う気もなくなる様な気がします。書評とも、書評の書評とも言えないのですが、紹介しておきます。

先ず、人種差別失言ついでに、ビル・クリントンの失言から。民主党内、それも上院議員のヒラリー支援を取り付けようとビルがテッド・ケネディー(昨年死去)と話し合った時に、「数年前なら、オバマは私達にコーヒーをサーブしていた。」と発言した事で、ケネディーを含めて民主党上院議員はオバマに傾いた。Harry Reidの失言はそれを受けて、オバマが色が薄く、黒人訛も無いので、大統領に選ばれる可能性が高いと、どちらかと言うとホジティブな意味合いでの発言であった。ビル・クリントンは更に、オバマは経験が少なく、政治的に未だ青二才との批判もしている。

ヒラリー陣営では、密かにビル・クリントンの女性問題については、ヒラリーが密かに調べており、噂の一つは真実だった事を突き止めた。(カナダの国会議員とか、いろいろ噂があった)ヒラリーが、国務長官の依頼を辞退していた理由の一つは、就任すればビルのスキャンダルが暴かれる可能性を心配していた。オバマはそれども良いと重ねて依頼の上、実現。

ヒラリーもヒラリーで、民主党の予備選が始まる前の2007年時点、つまり民主党の大統領候補選が始まる前に、大統領移行チーム(閣僚等の候補者選びをする)を作り上げていた。あまりに時期尚早なので、スタッフはこの事を漏れない様に細心の注意を払っていた。

民主党の予備選の途中で、不倫、隠し子問題が出て、脱落したジョン・エドワードについても、予備選開始時点で妻のエリザベスに不倫も隠し子もばれており、彼女はそれを承知で、内助の功を演じた。(それも、乳癌の治療中ながら)結局、不倫報道が出て、ジョン・エドワード陣営は瓦解。

予備選が最初に行われるアイオワ州で、ジョン・エドワードがヒラリ-と票を割った事で、オバマが一位となり、民主党候補への弾みがついた。

オバマに懐疑的であったバイダンが副大統領候補を依頼されたとき、選挙中は黙っているが、当選したら自分のやりたい様にするとオバマに釘を刺した。それでも選挙中に「オバマが大統領就任したら数ヶ月もしない間に、反アメリカの国々がオバマ政権を試すだろう。」との失言をしたりしていた。(これは事実となった)しかし、就任以来は、逆に影が薄くなっている。が、変なコメント(H1N1がはやり始めた時に、自分の家族は公共交通機関には乗せないとか)は時々している。

共和党側でも、マケイン婦人の不倫疑惑、今や共和党大スターのペイレンの無知ぶり、911はサダム・フセインの仕業とか、最後までバイデン副大統領候補の事をビンラディン候補と呼んだり、なぜ朝鮮半島が南北に別れているのかを知らなかったりした。(その後の人気は凄く、2012共和党大統領候補としては、知名度ナンバー1)

今更ながらに思うのは、オバマの運の良さである。運も実力と言えばそれまでですが、英語の表現で "Perfect Storm" (偶然に、何もかもぴたっとはまる)で、大統領になった事を思わざるを得ません。尚、この表現は主に大惨事、災害の時に使われるので、そういった意味でも、本当にドンピシャリです。

坂の上の雲:司馬遼太郎

2010-01-03 12:56:46 | 書評
初めてこの本を読んだのは、二十歳の時である。それから折に振れ読んできたのですが,NHKスペシャルの第一回を観て、2回読み直しました。ドラマの方は、3回まで観て、そのご都合がつかず、特に録画する事もなく4回、5回は見逃しました。

伊予宇和島藩出身(といっても、高野長英が隠れていた卯之町からも遠くはなれた農村出身ですが)からすると伊予松山藩は、言葉(方言)も違うので、近くて遠い所です。愛媛という括りで郷土なので、正岡子規、秋山兄弟にも親近感はあるのですが、違和感のある親近感です。

読んだ事のない人は、ドラマだけで無く、キチンと読む事をお勧めします。もし、ドラマの時代考証(家並み、衣装)が正確であれば、イメージを膨らます上で、非常に役に立ちます。生前、司馬遼太郎が映像化を許さなかった事を改めて考えさせられます。

読み物として面白いのは、秋山真之が海軍学校に入る所までだと思います。子規が徹夜勉強の途中で壁にもたれて眠ってしまい、その寝姿を真之が鉛筆で縁取った事を思い出す場面が、クライマックスです。何回読んでも、思わずウルウルきそうになります。

執筆された後、やや時間が経っている事もあり、新しい史実が出てきたりしており、本質的な評価は変わらないものの、司馬遼太郎史観を鵜呑みする事の危うさを改めて思います。一番の例が、乃木将軍でしょう。司馬遼太郎の帝国陸軍嫌いは、有名ですが、「乃木希典」を読むと違った風景が見えてきたりします。

国家が若かった故、又、明治維新の立役者が国家運営をしていたために、お国のために色々と無理をして戦った事が、今日の日本に繋がっている事に感銘を受けます。海軍が予算無断流用で戦艦三笠を購入したこと例などは、本来国家としてはあってはならない事だと思います。これらを英雄的と考える人々が、未だに現代日本に居る事に(文芸春秋等で対談などで出てきます)、日本の政治的、軍事的な後進性を感じます。日本人の根底に超優秀な人による理想的な専制政治の願望がある様に思えてなりません。一方で、あの当時政治手順をキチンと踏んでロシアに負けていたらと考えるとゾッとしますが、歴史に「もし」は無いし、良し悪しも無いので、詮無き事です。

久しぶりに読み直して気づいたのは、司馬遼太郎は主要登場人物の中で、秋山好古が一番気に入っていたのではないかと言う事です。かれの臨終で話が終わって居る事が、それを示していると思います。日本の騎兵を創設した事も職務として当然と考えており自慢するでも無く、戦場でも常に落ち着いており,最後は陸軍大将にまでなりながら、地元の学校の校長先生で終わる人生に、威厳のある清々しさを感じます。

明治日本勃興のひたすらに懸命な日本の姿が、題名と相まって、高揚感をもたらすイメージをずっと持っていました。読み返してみて、幕末から日露戦争の時代が、現代と切り離れていない事に考えが及ぶに至って、日本が背負い続けている国際社会で分相応の主導権をつかむ事の出来ない宿命に寂しい気持になりました。

アメリカ彦蔵:吉村 昭

2010-01-02 00:45:12 | 書評
アメリカに住んでいるので、必然的に日米外交史に興味があります。元々幕末の歴史が好きだという事もあり、ペリーで唐突に始まったとばっかり思っていた日米史の底流には、中国を巡る国際社会、アメリカの捕鯨、アメリカ南北戦争、(当たり前ですが)複合要因があり、そのひとつひとつがテーマとして面白く、現代に至っている続いてます。歴史を純粋に楽しむ位に昔で、教訓として学べる位の現代との連続性、絶妙な時代でもあります。

「アメリカ彦蔵」は、日本人漂流者でアメリカに帰化し、日米外交史の幕開け時代に淡々と自然体で貢献したジョセフ・ヒコの伝記小説です。内容については、読んでもらうしかありませんが、アメリカに生きるものとして、ヒコの生き方に強く感銘しました。

13歳で漂流後アメリカに暮らす事になったので、その若さ故、アメリカ人に可愛がられ学校教育まで受けさせてもらい、英語の読み書きは不自由無くなったが、日本語は平仮名の読み書きレベルであり、明治維新後、英語教育の急速な充実で、かれ自身が自分の存在価値が日本社会の中で次第に薄れて行く事を感じてします。こうして心理的な漂流がいつまでも続く過酷な運命を受け入れながら、淡々と生きたヒコに日本人の矜持を感じます。はからずも、そして、恥ずかしながらも、かれに自分を重ねてしまいます。

日本の沿岸海運の発展で結果的に漂流者が増え,アメリカ捕鯨産業の石油発見までのつかの間の隆盛で太平洋に繰り出す捕鯨船等が増えた事で、救助される漂流者が増えることになりました。

主にクジラの油が欲しかったアメリカの捕鯨は、直後の石油の発見で急速に衰えます。又,南北戦争の影響で、アメリカからの中国への通商(主に綿花輸出)が必然的に低調となり、太平洋への政治的軍事的優先順位が落ちます。一方で、南北戦争の終結により落ち込んだ武器需要の穴埋めとして日本の倒幕側への販売があります。

石油は、その後第二次世界大戦から現在に至る軍事的歴史の主要因であり続け、捕鯨は、水産資源を考える上で反捕鯨だけの単純な事で終わらない状況になってきております。

ヒコの様な個人を題材にした事で、歴史を複眼的に眺められる様にした吉村昭の着想は素晴らしく、他の著作にも同じ事が言えます。

関連した本では、「ペリーは,なぜ日本に来たか」「勇魚」を推薦しておきます。

ぼくらの頭脳の鍛え方:立花隆、佐藤優

2009-12-30 00:41:32 | 書評
ぼくらの頭脳の鍛え方をシカゴの本屋(三省堂)で立ち読みしてきました。

紹介されている本が400冊、今更読めるわけも無いので対談の内容からこれらの本を読んだ気になり,そのエッセンスを2人がどのように活用しているかを楽しむ本です。(高校生や大学生なら制覇を志しても面白いかも。)

土井たか子、勝間和代、湯浅誠の本質を見抜いている所は、鋭い。(簡単に納得し過ぎか?)

佐藤優は、文芸春秋で連載されていたインテリジェンス交渉術の後半の一部を読んだだけですが、経歴からしても気骨のある人のようです。神学を勉強してソ連専門の外交官というのも、ツボに入っております。文章は劇画調なのが少し胡散臭い感じがあります。

立花隆は、臨死体験まではほとんど読んでいると思います。どの分野の本も楽しく読めたので、興味の方向が自分と似ているのだと感じておりました。自分がガンになった事で、ガン研究、治療に力を入れられているようです。

NHKで取材ドキュメンタリーを観ましたが、英語が下手なのにビックリしました。アメリカが題材の著作は、膨大な文書を読み込んで、インタビューの部分は、結構自分勝手な解釈が入っているのではかと思います。

立花隆は、年齢的にも寿命を悟った感じがあり、なぜか自分の読書遍歴(知的冒険、散策?)を商売にしております。非常に歪んだ自己顕示欲の発露ではないでしょうか?そう考えると膨大な情報に支えられたいろんな分野で結構専門的にも深いと思われる著作に、そこはかとなく漂う胡散臭さも納得出来ます。

良くも悪くも頭脳が鍛えられた私には、面白いだけで役立ちそうにはありません。買って損は無いですが(新書で987円、買う気がなかったのでアメリカでの値段はテェックし忘れてました)、立ち読みで充分です。

Stack and Tilt

2009-12-25 04:22:28 | 書評
Stack and Tilt の本 は期待を裏切らない素晴らしいものでした。

12月号のゴルフダイジェストに、エッセンスと6段階の練習法が掲載されておりますので、ちょっと味見したい人は参考にしてみて下さい。英語ですけど、6ステップの見出しと写真だけでも、スイングの骨格と具体的なイメージが出来ると思います。

提唱者の2人も認めている様に、このスイングは飛距離と方向性のバランスを極大にする事を目標にしておりますので、スイング中に急ぐ所がありません。よって、私の様に思いっきり打ちにいく傾向がある人は、特に、右足で腰を蹴り上げて行くタイミングに注意する必要があります。

体が硬い人は、バックスイングで右足を伸ばす事で、下半身が回るので、上半身の捻りも連られて大きくなり、オーバーザトップ、ダウンがアウトサイドに行き難くなり、思い切り振ってもスライスしなくなります。ダウンでの風景が変わってきますので、暫く、ゆっくりスイングする事をお勧めします。

日米「振り込め詐欺」大恐慌 副島隆彦

2009-12-09 13:41:40 | 書評
副島隆彦は、財政、経済問題に強い今日版落合信彦です。陰謀説の系統の人のようです。

日米「振り込め詐欺」大恐慌は、めちゃくちゃな所と(数字でか過ぎ、煽りすぎですが)経済,財政分析が玉石混淆になってます。圧倒的に石の方が多いですけど。2009年4月に書かれた本なので、六ヶ月で既に化けの皮が剥がれています。

ビラリーが、2011年にオバマ大統領とバイデン副大統領の辞任で大統領になる。大統領の第三位継承権は下院議長なので、それまでに国務長官を辞めて、下院議員に当選し議長になるのは、先ず不可能です。ビルクリントンの実父がウィンスロップ ロックフェラーで、ヒラリーもロックフェラーの後ろ盾があると言うのには、呆れ返りました。バイデン副大統領が実力が無い人と書いてあるのは当たってます。

オバマ大統領に能力があるとするところからアメリカの政局を分析しているので、的外れになってきております。彼が統制経済体制を認めないとありますが,現状は全く逆でそちらの方向性が強い。

ニューヨーク株式の動きを、大恐慌時と比較してして底値を計算しているが、これもはずれ。石油、金の話はもう少し先の予想しているので、これは結果待ち。ドルもアメリカ国債と表裏一体で2011年の暴落予想なので、これもドキドキしながら待つしかありません。

アメリカの財政、経済については、興味深い分析もあるのですが,背景が陰謀説になっているので、胡散臭くなっているのが残念です。アメリカの不良債権の指摘は鋭いのですが、金額が大きく見積もり過ぎです。

日本の政局や事件には疎いのですが、中川昭一の酔っぱらい記者会見の真相は、面白いけど???です。

リーマンショックを当てた事で名が上がったと自分でも言ってますが,その本を読んでみたいものです。

1500円を出す価値ありません。本屋の立ち読みで15分位の暇つぶしにはなります。

経済学をめぐる巨匠たち 小室直樹

2009-11-29 00:37:32 | 書評
何年が前から,一度経済学をちゃんと勉強したいと思っておりました。パートタイムで大学院へ行く事もずっと考えているのですが、現実は厳しく、実現しそうにありません。まあ、勉強は結構好きなのですが熱心ではないので、学校は馴染ま無いのかもしれません。

書店やAmazonで経済学を俯瞰出来る様な本(英語の)を探していたのですが、ふと本棚にあった「経済学をめぐる巨匠たち」を再読してみました。経済学を創始からシンプルに説明してあり、現在の問題点まで鋭く指摘している素晴らしい本でした。

先ず、経済学を古典派とケインズ派に二分し、その識別条件は「セイの法則」を公理とするか否かとしております。「セイの法則」は市場に供給される全てのモノは売れるという法則です。この法則を公理とすれば古典派、信じなければケインズ派となります。供給サイド(古典派)、需要サイド(ケインズ派)と考える事も出来ます。又,経済学は、資本主義の歩みとともにあるので、ヴェーバーで資本主義発生のメカニズム、私的所有権の絶対性と抽象性について説明してくれてます。

なんと言ってもこの本の一番の価値は、シュンペーターの「資本主義は成功故に滅びる」の予言から、現在進行形の政治、経済状況を的確に分析している事である。2004年出版ですが、5年経っても少しも輝きを失っていません。現在を理解するために経済を抜きには出来ないので,経済学の知識も必需です。先ず,この本で本当にシンプルな原理原則を押さえておく事が出来ます。

尚、小室直樹は名前を知っているだけで、著作等は知らないのですが、今後出来るだけ読んでいくつもりです。インターネットで調べた限りでは、奇行等もありエキセントリックな人物との評もありますが,この本の印象と経歴からも、博学でその上素人にも分かり易く学問を教えてくれる希有な人物だと思います。

数年前購入した時に読んだ(と言う行為の)記憶あるのですが、内容は一つも頭に入っておりませんでした。私は一体何を読んだのでしょうか?懲りずに、英語(日本人以外の著作)で経済学を俯瞰出来る様な本を探すと思いますが、これ以上の本には出会える様な気がしません。

10-10-10 By Suzy Welch

2009-10-17 02:01:24 | 書評
10-10-10は、人生指南書(?)です。Suzy Welch自身の経験と、彼女が10-10-10コンセプトを紹介する中で相談を受けた人々の体験談をもとに書かれております。Welchでピンと来る人はもいると思いますが、前GE CEO である Jack Welch の奥さんです。

といっても、彼女自身この結婚の前に、Harvard Business Reviewの編集長をしたりしてますので、女性編集者、ジャーナリストとして以前からそれなりになは知られておりました。でも結婚後は一気に有名になりました。ついこの最近までJack Welchと一緒にBusiness Weekのコラムを持っていたりしました。

10-10-10は、10分、10ヶ月、10年の事です。この3つの時間を考える事で、正しい判断が出来るという物です。仕事だけではなく、恋愛、子育て、友情と人生の全てに効用がある事を例を引きながら説明しております。人は判断を下す時に、長期には間違っていると気づきながらも、その時の対人関係や感情でやってしまう事を10-10-10を導入する事で、正しい判断になると言う主張です。

この本を読んだのは数ヶ月前で、暫く意識して10-10-10をやっておりました。一番効果的なのは仕事に関する判断で、嫌でも何でも今やらなければ10ヶ月にはとんでもない事になるのを明瞭に意識出来るので、しんどい事をやる時のモチベーションになります。当たり前の事ではあるのですが、こういった方法論を使うと簡単に判断の結論が出るので助かります。

ところが、仕事に関していうと10年というのは想像出来ない未来ということに気づいて愕然としました。(ひょっとすると私の想像力が足りないのかもしれません。)結局、概念的にならざるを得ず、方法論というより自分の哲学に鑑みてという事になります。まあ、10年後というのはそんな物かもしれませんね。

短期、中期、長期で判断していく事は大切なので、方法の一つとして10-10-10と唱えて考えてみるのは良い方法だと思います。別に3-3-3でも5-5-5でも構わないと思いますのでその辺はお好みで。

書評の書評:宮家あゆみ

2009-10-16 01:44:56 | 書評
アメリカには、いろんな分野で頑張ってらっしゃる人がいるのですね。宮家あゆみさんは、旦那さんと一緒にアメリカンブックジャムを運営されているようです。

朝日新聞ウェブページでの彼女の連載は時々ぼんやり読んでおりました。基本的にはベストセラーを紹介しているので、アメリカの雰囲気を映し出して感じを持っておりました。但し、今週分は内容が気になってじっくり読んでみましたが、政治分野には余りお詳しくないようで、反オバマ本との括り方に違和感を感じました。Culture of Corruption は確かに表紙もオバマ大統領ですので理解出来なくもありませんが、Catastropheの方はもっと幅広く議会、ロビイストまで幅広くカバーしてます。総じて民主党を批判しているのではありますけれど。

自分自身でもCatastropheは一ヶ月前くらいに購入して一応目を通しているので、反オバマに収まらない政府による個人への介入への憤りが幅広く書かれております。但し、内容的には糾弾するだけになっているのでインパクトに欠ける感じでしたので、書評を書くまでに至りませんでした。

Culture of Corruptionの方は、内容については著者のテレビインタビュー等で知っていたので、結局は購入せずに、空港等で立ち読みで済ませました。

どこまで真実かは議論のあるところですが、オバマ大統領を筆頭に民主党は本当に金まみれですね。伝統的に共和党の支持ベースは金持ちで、金持ちのための政策と批判されておりますが、民主党のように税金で自分が再選出来るようにがっちり固める意地汚さに比べると、まだマシですね。民主党は過剰な福祉、バラマキ政策で政府に頼る人々を必要以上に作り出し、この人達を自分の再選のために利用してます。

これらの保守系の本がベストセラーになっているのが、オバマ人気によるあだ花なのか保守回帰の始まりなのかは、これから本格的になる健康保険改革や来年の中間選挙ではっきりすると思います。

What Americans really want...Really

2009-10-12 13:32:25 | 書評
例えば、私が誰かに平均的な日本人の考えを聞かれてもバランスの良い回答はなかなか出来ないと思います。ましてアメリカで、それも日本生まれの日本人の私がアメリカ人の考えている事を的確に把握するのは非常に難しいと思っておりました。一方でアメリカ政治や経済を書いているので、日々の情報以外でベースとなる知見を持っておきたいといつも考えておりました。そんな中で見つけたのがWhat Americans really want...Reallyです。先月発行されたばかりで、折からの大不況の影響も織り込んだ分析がされているので今後役に立ちそうです。今更ながらにこの2年は、アメリカに経済だけではなく大きな影響を残しそうです。

企業からの依頼でマーケティングの一環として調査したデータが豊富で、分析が非常に身近に感じられます。やや、数値データを使いすぎている感じは否めませんが、その辺は逆に多くの人々を連想させるのに役立っているようにも思えます。

面白い話を一つ。スターバックスがアメリカ人が一杯のコーヒーに$4(それ以前は、$0.99)を支出出来る事を発見(?)したのですが、ダンキンドーナッツが実施した目隠し味見テストで、同じ種類のコーヒーならダンキンの方がスタバより美味しいとの結果をもとに、スタバより安くて美味しいを強調した宣伝を行い成功した例が出ておりました。マックが展開するマックカフェも同様ですが、スタバと同等以上のコーヒーを安く供給する事で、スタバのライバルはまるっきり新しい増収源を得た事になったのです。

教訓は2つ、1、特に小売業の場合、売価の固定観念にとらわれてはならない。2、最終的には、商品の本質価値(上記の場合、コーヒーのあり)が大事。ダンキンファンの私としては、高すぎるスタバと不当に低く評価されているダンキンコーヒーにいつも不満を持っておりましたので、この部分だけでも本の購入意義がありました。因に、今でもアメリカ最大コーヒー小売りはダンキンとの事です。



愛と幻想のファシズム

2009-09-13 13:16:56 | 書評
村上龍は、これと「コインロッカーべイビー」以外はほとんど読んでおりませんが、この2作は傑作だと思います。

で、「愛と幻想のファシズム」ですが、圧倒的な身体能力を持っている主人公が傑出しています。狩猟という特殊で、私を始め日本人のほとんどに理解不可なものではあるが、主人公の心技への圧倒的な自信が、複雑でてんこ盛りな状況、展開を最後まで引っ張ってくれます。

又,80年代半ばの作品なのに、世界経済の行き詰まりを設定してあり、村上龍の勘の良さが際立っております。それに加えて日本人離れしたスケールの大きいエピソードを重ねてあるので、面白くない訳がありません。

村上龍は、精力的に世界を旅する事と、自分の体を鍛える事、超一流のアスリートに接する事で、作品を書いて来た作家だと思います。テーマは経済なのですが、多分それはどうでも良い事だったのではないでしょうか?この後、経済の広がりと深さに取り込まれて、そっちに行ったような気がします。

年をとって、最近は体鍛えてないような気がしますが、今はどうしているのでしょうか?

書評の書評:ものづくりの国際経営戦略

2009-09-12 11:38:41 | 書評
アメリカに住んでいて、歯痒いのは、日本の新刊の入手が思うように出来ない事です。よって、定期購読している新聞、雑誌の書評を読む事で、ほとんどの本は購入もぜす疑似的に読んだ気になっております。半年とか一年経っても気になる本は、日本出張とかで購入する事になります。本は購入するだけで内容の8割は読んだ事(内容に興味があるから購入するので、その内容についてその他からの情報も気にしているのが根拠)と同じになると誰かが言っておりましたが、書評読む事で内容の何割が分かるのでしょうか?

さて、「ものづくりの国際経営戦略」新宅純二郎、天野倫文編 有斐閣は、定期購読しているエコノミストの9月15日号に紹介してありました。

そのなかでアーキテクチャー論というのがあり,それは「企業が扱う製品や行程、ビジネスモデルの基本的な設計思想に関する理論」だそうです。全てのアーキテクチャーは「擦り合わせ(インテグラ)」と「組み合わせ(モジュラー)」の両極のどこかに位置づける事が出来るというものです。

長年の自動車部品製造業界で日系と米系の間で仕事しています。常々、アメリカの現場で戸惑っている駐在の方に、「日本の自動車製造は、寄木細工(擦り合わせ)、アメリカはレゴブロック(組み合わせ)ですよ。」と事ある毎に話していたので、まさに我が意を得たりです。日本メーカーの擦り合せ要求を、アメリカのサプライヤーが感覚的に分からず、あるモードで設計機能を微妙に満たさないものが出来てリコール寸前までになった生々しい個人経験もあります。

日系自動車メーカーが北米進出して25年になり、互いに影響し合って、現在は、日米メーカ-ともアメリカでの製造に関しては両極から真ん中に移動して来ており、似てきたなーと感じております。個人的には、特に車は工業製品(組み合わせ)で充分だと思っております。日本車というか日本人は工芸品(擦り合わせ)を目指しており、サプライヤー側から見た場合、品質過剰な感じがします。

本書は製造業全般の話で、アーキテクチャー論の他に組織能力論、産業地理学論の合計3つの方法を使って分析しているとの事です。3,750円とご立派な値段の本ですが、是非読んでみたいと思っております。