マツダとは直接関係無のだが、私がデトロイトでアメリカ生活を始めた事、現在自動車業界の末端で働く様になったきっかけはマツダのミシガン州への工場進出なので、動向はいつも気になる。
マツダが、メキシコに工場を建設する事が数ヶ月前に発表された。その流れと言ってはちょっと変だが、ミシガン州フラットロック工場では次世代の MAZDA 6 は製造しないという発表が先週あった。
フラットロック工場は、フォード・プローブ(懐かしい)の製造から始まった。元々フォードの工場なので UAW が元々存在しており、マツダは他のメーカーが経験していない労組対応の苦労もしてきているので勿体ない気もするが、ずっと不調であったので決断としては遅いくらいであろう。
マツダ単独の工場から、マツダの財政難などがあり、フォードとの合弁になっている。現在の生産車種は、MAZDA 6 と Mustang、比率は1:2で、その上、キャパの半分も埋まっていないのだ。年間10万台程度しか生産していない。(北米マツダの赤字は、この工場によるものらしい)
ビッグ3との合弁型の日系自動車の工場は、トヨタの NUMMI、スズキの CAMI (どちらもGMとの合弁)に続いて、これでまったく無くなってしまった。それぞれの事情はあるが、20年の時を経てアメリカメーカーとの合弁での工場運営と言う手法は終わったという事であろう。(後処理もそれぞれ)
で、マツダに戻るが、メキシコ工場で何を生産するかまだ決まっていないらしい。ずっと生産してきた MAZDA 6 を続けるとも言っていない。この車、出来の割には売れない。トヨタブランドだったら間違いなく20万台売れる、とマツダの社長の奇妙な負け惜しみを聞いた事があるが、昨年の販売数はたったの3万5千台である。(トヨタのカムリは33万台、ホンダのアコードは31万台)
今のモデルは、北米マーケット専用車として設計され、大型になっただけに、今更日本でアテンザと同じラインで、生産する訳にもいかないだろう。だとすると、メキシコで引き続き生産すると、単独ラインで、たったの3-4万台という無駄な事になる。では、アメリカで比較的売れている CX-7, CX-9 (各3万台弱)の現地生産と組み合わせる事が考えられるが、それなら逆に、日本で、アテンザではなく、 CX-7, CX-9 と同じラインで生産する方が合理的だろう。(
日本のニュースでは、次世代の MAZDA 6 は、防府工場になると発表してあった)
そうすると、メキシコはやっぱり小型車生産しかない。Mazda 3, Mazda 2, (Mazda 1 ってあるんだっけ?)という感じか?現在日本から輸入している Mazda 3 の10万台がメキシコに移ると、それはそれで大変そうだ。
ではなぜ、わざわざフラットロック工場から手を引いてメキシコなのかと考えると、やっぱり、南米を睨んでいるのだろう。トヨタ、ホンダもブラジルに工場を持っているが、メキシコを南米攻略の基地としようとしている様だ。リーマンショックで遅れ気味だが、2社とも小型車を生産するとの憶測がある。マツダも単純に戦略的に追随したとしか思えない。単独でやりたいはずだが、資金が足りないので住友商事と手を組むのが、ちょっと寂しい。
メキシコ市場は基本的に小型車が中心なので、当然メキシコ市場も睨んでいるのだろうが、虻蜂取らずの戦略に思えて仕方が無い。ここはいっその事、潔く、北米、中米、南米は、日本からの輸出で勝負の方が、合理的だろう。
日系メーカーも、一括りに出来ないのであるが、トヨタ、ニッサンは、北米での大型のトラック、SUV の事実上の失敗で、南米戦略を上手く立てられなくなっているような気がする。メキシコを含めて、市場の将来を勝手に小型車中心と決め打ちして、攻めようとしている風にしか思えない。
南米がダイナミックに発展すると仮定すると(仮定しているからこその進出戦略であるはずなのだが)、自動車市場はアメリカに近い感じになるのではないかと予想出来ないか?人口の割に土地が広く、資源も豊富にありそうなので、大きめな車の需要が増えるそうな予感がある。
いきなりブラジルで不得意な車種を生産する訳にもいかず、為替レートで南米に比べても人件費が安い事もあったりして、メキシコって器用な立ち位置であるが、もし、南米が期待通り経済的に大化けすると、中途半端なメキシコ進出と腰の引けた大型車への取り組みが、長期的に響きそうな気がする。
マツダは(そう言う意味ではホンダも)、大型車をラインナップしていないので、メキシコ工場は、尚更中途半端過ぎる。
北米進出で、ビッグ3との合弁を上手に利用したのはトヨタだけである。中南米進出戦略の一環として、メキシコ工場を上手く使いこなせる日系メーカーが出てくるのだろうか。答えは、20年後だ。(生きてないかも)
追記(6-23-11):
6月18日付けの日経に、マツダが住友商事と共同で、メキシコ新工場の建設とブラジルでの販売協力をする記事が掲載されていた。メキシコでは「デミオ」と「アクセラ」(Mazda 2, Mazda 3)を年間14万台生産予定、販売先は、メキシコとブラジル、将来的には北米への供給も考えているらしい。来年から日本からの輸出でブラジルでの販売を開始するとの事だ。
何かチグハグな印象が拭えない。北米で工場を締めて輸出で対応するのに、ブラジル向けはメキシコ生産(メキシコ向け分もあるけど)というのは、納得が出来ない。昨年のアメリカでの販売実績が、Mazda 6 で約3万5千台、Mazda 3(アクセラ)で、10万台をちょっと超えるくらいなのに、メキシコとブラジルで14万台も売れると、どのような Feasibility study したのか気になる。