[サッカー]
大野俊三「鹿島・石井新監督への大きな期待」
2015年08月05日(水) スポーツコミュニケーションズ
守りのトライアングル確立を
ファーストステージではJ1リーグ8位と振るわなかった鹿島アントラーズを石井正忠新監督が率いることになりました。石井監督は住友金属工業、鹿島でともにプレーした仲。現役時代から自分の役割を精一杯果たし、汗をかいてくれる存在でした。きちんとしたビジョンを持って実践してくれる指揮官だとみています。
指導者としては鹿島一筋。コーチからの昇格だけに、チームのことは熟知しています。選手たちのこともしっかり見て、信頼度も高いでしょう。チームを託すにあたって、これ以上の人材はいません。実績のある選手と、若手をうまく融合しながら、新しいアントラーズづくりを実現してくれると楽しみにしています。
石井新監督が取り組むべきミッションは2つあります。ひとつは守備の安定です。低迷した最大の原因は、これまで鹿島の強みであった堅守に綻びが出たこと。特に守りで最も肝心なGKとセンターバックのトライアングルがずれてしまっています。
これはセンターバックのメンバーが頻繁に変わっていることが影響しているでしょう。GKも不動の守護神だった曽ヶ端準がスタメンを外れることが増えました。やはり、守備の要がしっかりしないと攻撃にエネルギーを割けません。早急にGKとセンターバックのトライアングルを確立することが急務です。
その上でボランチも含め、相手へのチャレンジとカバーをはっきりさせ、守備の決まり事をもう一度、徹底させなくてはいけません。この点は石井監督はDF経験もあるだけに十分に理解しているはずです。
もうひとつは世代交代です。前監督のトニーニョ・セレーゾもチーム若返りへの意図は感じられました。今季の開幕戦で連続フルタイム出場を続けていたGK曽ヶ端をスタメンから外したのは、その象徴でしょう。
いつまでもリーグ3連覇を達成した当時のメンバーが主力を張っていては、彼らの衰えとともに、チーム力は下降の一途です。結果は出ませんでしたが、セレーゾの方向性は間違っていなかったと感じます。
小笠原、曽ヶ端を“懐刀”に
鹿島は若手の伸び悩みが指摘されています。ここにきて日本代表の主力となりつつあるMF柴崎岳にしても、出てくるのが遅かったと言えるでしょう。本来であれば野沢拓也(現ベガルタ仙台)が抜けた後、すぐ存在感をみせてほしかったところです。世代交代は時間がかかり、簡単ではないとはいえ、この動きはもう止められない段階に来ています。
理想を言えば、MF小笠原満男やGK曽ヶ端はサブとして、重要な場面で出てくる選手であるべきです。2人とも、これまでの経験、実績からゲームを読む力は卓越しています。だからこそベンチの懐刀として、苦しい時にチームを救う役割を担ってほしいと思っています。
たとえピッチに立たなくても、控えでいるだけでチームが安心する。僕たちの時代なら、ジーコがそんな存在でした。もちろん、本人たちはまだまだ試合で高いパフォーマンスを見せられる自信があるでしょう。そこをうまく石井監督がマネジメントしながら、チームづくりを進めてほしいものです。
シーズン途中の監督就任は、立て直しの時間は短く、すぐに成果をみせるのは容易ではありません。しかし、出だしでつまづくと、余計に再建が難しくなってしまいます。就任してからの最初の5試合は非常に大切です。
その点では、初陣から2連勝を飾ったことは僕自身もホッとしています。結果が出れば、チームの雰囲気は良くなり、周囲の評価も高まります。その分、監督は思いきったことができるはずです。何より、鹿島で初期のレギュラーメンバーだった石井監督の就任は地元のサポーターも歓迎ムードです。昨今の不振で冷めかけていた熱気を再び高め、チームを後押ししてくれるのではないでしょうか。
鹿島で代行として指揮を執り、その後、川崎フロンターレの監督を経てロンドン五輪代表を率いた関塚隆さんのようなケースもあります。これは石井監督にとってはビッグチャンスです。これまで培ってきた指導力を十分に発揮し、プランを実行に移して、鹿島を新しく蘇らせてほしいものです。
個人的にはサンフレッチェ広島の森保一監督のように、名将と呼ばれる存在にのぼりつめてほしいと期待しています。 石井監督が鹿島のみならず、日本サッカー界にもインパクトを与える起爆剤になってほしい。ともに戦った仲間として、そう強く願っています。
<大野俊三(おおの しゅんぞう)プロフィール>
元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。83年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。92年鹿島アントラーズ設立 とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後 の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザ(http://kashima-hsp.com/)の総 支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、 元日本代表。
石井新監督について語る大野俊三である。
共に鹿島アントラーズ黎明期にピッチで戦った仲間が指揮官としてチームを指揮することとなった。
石井監督に託された大きなミッションとして、守備の安定と世代交代を挙げる。
今季は特に守備の不安定が目についたことは紛れもない事実であろう。
CBは毎試合のように入れ替わり、守護神も交代した。
CBについては負傷離脱と出場停止、そして五輪予選が重なり致し方のない部分があった様に感じる。
GKについても世代交代を進める上では通らざるを得ないとも言える。
しかしながら、石井監督がDFラインを固定し、GKを曽ケ端に戻したことによって二連勝を飾ったことは見逃せぬ。
まずは守備の安定、そして得点力の向上に手を付けることとなっていこう。
また、世代交代については、セレーゾの方向性は間違っていなかったと述べる。
世代交代は、難しいミッションであり、クラブ全体が挑んでいかねばならぬところ。
石井監督としても、タイトルを狙いつつ世代交代を進めねばならぬ。
大野が言うようにボランチとGKの重鎮に替わるべき選手を育て上げねばならぬ。
特にボランチは岳の海外移籍の可能性があり、どう手を付けるかが鍵となる
石井監督の手腕に注目が集まるところ。
「名将と呼ばれる存在にのぼりつめてほしいと期待」と大野の言うように、鹿島の将来は石井監督に託された。
新監督の指導に期待である。