いまだ定まらぬザックジャパンの1トップ。タイプ違う柿谷と大迫をどう起用すべきなのか?
欧州遠征の代表メンバーが発表された。注目は1トップのレギュラー争いだ。ここ最近は柿谷が出場することが多いが、まだフィットしていない。ポジションを争う大迫はまだ付け入る隙があるわけだが、そもそも2人は違うタイプ。どのように起用するのがチームにとってベストなのか?
2013年11月08日
text by 河治良幸 photo Asuka Kudo / Football Channel
最終段階でも変えやすい1トップ
今月16日のオランダ戦と19日のベルギー戦に向けたメンバーが発表された。10月の東欧遠征からは乾貴士とハーフナー・マイクが外れ、ボランチの高橋秀人とFWの大迫勇也が復帰したが、期待されたフレッシュな選出は無かった。
もっともザッケローニ監督は、スタメンを固定した10月の2試合と違い新しい選手をテストするプランを明かしており、23人の中でも思い切った選手起用があるのか注目されるところだ。1トップはここ数試合で先発出場しながら結果の出ない柿谷に大迫が挑む構図となる。
東アジアカップではそれぞれ存在感を示し得点もあげた2人のストライカーだが、その後の数試合で持ち味を発揮できているとは言いがたく、それがノーゴールという結果の要因になっていることは確かだ。
自分のスタイルをいち早く味方に理解させ、チームの中に組み込めた方が、本大会に向けた競争で優位に立つはずだが、最終段階で最も変えやすいポジションでもある。
今回の2試合で彼らがチームにフィットしない様なら、3月の試合では別の1トップ候補がメンバーに名を連ねる可能性が高まるだろう。その意味でも、彼らには高いライバル心と危機感を持ってオランダ戦とベルギー戦に臨んで欲しいところだ。
ここ5試合で4試合に先発している柿谷は高いポジションをキープして、2列目の選手にスペースをもたらしている点では一定の評価ができる。相手センターバックとの駆け引きには見応えがあるものの、そうした動き出しが味方のパスを引き出すトリガーにできていないことが大きな問題だ。
まだ合っていない柿谷と周囲のタイミング
「柿谷に関しては日本人的ではない部分がある。日本にはポゼッションであったり、パスをつなぐ、コンビネーションで相手ゴールに迫っていくというサッカー文化があり、それはJリーグでも良く見られる。しかし彼の場合は一発で裏に抜けることを好み、抜けるタイミングというものを持っている」
いまだ定まらぬザックジャパンの1トップ。タイプ違う柿谷と大迫をどう起用すべきなのか?
柿谷自身は「ボールを直接受けなくても、高い位置を取り続けることが大事」と語る【写真:工藤明日香 / フットボールチャンネル】
ザッケローニ監督がそう評価する柿谷だが、彼自身は「ボールを直接受けなくても、高い位置を取り続けることが大事」と語り、ボールを触る回数が少なくても、相手のディフェンスにオフサイドラインを意識させることで、攻撃に良い影響を与えられるという自負はある様だ。
ただ、それにしても“ここ”というタイミングで中盤の選手からあまりに縦パスが出てこないため、本来の持ち味である裏に抜けて正確な技術でフィニッシュに持ち込む形を出せていないのが現状だ。
セルビア戦やベラルーシ戦でも、ポゼッションから本田や香川と近い距離のワンツーなどで崩しかける場面はあったものの、縦のボールが出てきたのはディフェンスからの分かりやすいタイミングでのものがほとんど。
ベラルーシ戦の前半はベンチで戦況を見守っていた山口螢が「ボランチとかがボールを持った時はまず裏に動き出していた。それを誰も見てなかったというか、見ていたとしても出してなかった。曜一朗くんの持ち味なのに、そこを活かし切れてなかった」と指摘するのも無理もない内容だった。
ザッケローニ監督は「チームメートも彼の特徴を活かしていく時間が必要だ。柿谷は裏に抜けるだけでなく、下りてきてコンビネーションを生かすこともできるが、彼の特徴というものを周囲も理解する必要がある」と語る。
周りと意識が噛み合えば、十分に能力を発揮できると考えている様だ。そうでなければ、これまでとタイプの異なる柿谷を1トップで使い続ける意味は無いだろう。
2トップのほうが活きる大迫
「自分のところで決められるチャンスもあった」と語る柿谷も、噛み合わない中で何度かあった決定機を外し得点をあげられなかったことに加え、味方から欲しいタイミングで縦パスを要求できていない。
そこは合宿を通して共通理解を深める必要がある。ただ逆説的な話になるが、ザッケローニ監督が「ボールをよくつなぐサッカーをしてくる」と認めるオランダとの試合では、おそらく50%もボールを持てない。
ある程度は速攻に頼らざるをえない中で、東アジアカップの韓国戦で見せた様な柿谷のスピードと技術が最大限に発揮される期待もある。そしてもし、この世界トップレベルの強豪を相手に衝撃的なゴールを決めれば、仲間の信頼も増し、新たなエースとしてパーソナリティは否が応でも強まるだろう。
いまだ定まらぬザックジャパンの1トップ。タイプ違う柿谷と大迫をどう起用すべきなのか?
一方の大迫は幅広く的確なポストワークと絶妙な動き出す【写真:工藤明日香 / フットボールチャンネル】
一方の大迫は幅広く的確なポストワークと絶妙な動き出し、ファーストタッチでマークを外してシュートに持ち込むなど、万能型でありながらスケール感のある選手だ。ただし、前線にどっしりと構えてパスを呼び込むでもなければ、柿谷の様に一発で裏を狙い続けるタイプでもない。
大枠で捉えるなら前田遼一に通じる部分もあるが、動き方がまた違うため、「コンビネーションを高めるのは時間がかかる」と語る大迫が日本代表にはまるのは簡単ではない。
Jリーグにおいても体を張りながらシンプルなロングボールを受けるより、一瞬動きながらマークを外して、正確な技術でボールを捌いており、打点の高いヘッドも似たシチュエーションで発揮されている。逆に相手に厳しく付かれるとバランスを崩す場面が目立つ。
現状を考えれば相手DFのマークを分散させやすい2トップの方が持ち味を発揮できるだろう。その意味では1トップを基本線とするザッケローニ監督が東アジアカップにおいて、彼をセカンドトップとして起用したことも理に適っている部分があるのだ。
面白いのは2人の併用起用
これまでよりポゼッションを取れなくなると予想されるオランダ戦、フィジカルの強いDFが揃うベルギー戦とも、現在の大迫が1トップで機能する見込みは柿谷より薄いと言わざるをえない。むしろ面白いのは柿谷と大迫を縦に並べる形だ。
柿谷が1トップで相手のディフェンスラインを下げ、その手前で大迫が捌く。そこから中盤を起点に2人の動き出しでバイタルエリアを襲撃する。そういったコンビネーションがはまれば、ポゼッションに勝るオランダ、フィジカルに勝るベルギーに対してもチャンスを作り出すことができるはずだ。
そうしたトライは「技術力、スピードをもって相手ゴールに迫っていく」というザッケローニ監督のコンセプトに反するものではなく、むしろ従来の戦い方を進化させる可能性を秘める。
「チームとしての理想のバランスを追求するために、自分たちの持っているものをすべて出してトライしていかなければいけない」とザッケローニ監督は展望するが、その中でも精度やインテンシティを高めるだけでなく、世界に衝撃を与えるオプションを手に入れることが必要ではないか。
「ベースを大切にしながらも、新しい選手を試していきたい」
本田、遠藤、香川を軸にボールを回すスタイルを攻撃の軸にすることは悪くない。ただ、それ一辺倒で強豪を打ち負かして行くことは不可能に近いだろう。ザッケローニ監督のこの言葉が、単に選手を取り替えるということではなく、新たなオプションを見出すためのチャレンジが含まれていると期待している。
【了】
大迫の再招集により、今一度、代表の1TOPについて記すフットボールチャンネルである。
「大迫は2TOPの方が持ち味を発揮できるだろう」と述べておる。
これには異を唱える者が多かろう。
昨季、今季と鹿島に於いて大迫が1TOPを務めるようになってチームに勢いが出たことは誰もが知るところ。
その実績が日本代表に対する大迫待望論になっていったように思える。
この記事を書いた河治氏はJリーグについて造詣が深くない様子。
そのような者が大手を振って日本代表について語ってしまうところに、サッカーメディアの浅さを感じさせられる。
それは非常に残念なことである。
注目度の高い欧州サッカーも重要であるが、Jリーグにも詳しい者に日本サッカーを広める仕事を担って欲しいと願う。