【J1:第12節 鹿島 vs 名古屋】レポート:ジーコの檄に発奮した鹿島の選手たちが躍動!先制を許すも鮮やかな逆転劇で勝利を手にする!(13.05.19)
5月18日(土) 2013 J1リーグ戦 第12節
鹿島 3 - 1 名古屋 (14:06/カシマ/17,161人)
得点者:24' 小川佳純(名古屋)、40' 遠藤康(鹿島)、66' 中村充孝(鹿島)、90'+4 大迫勇也(鹿島)
それは試合開始直前のことだった。選手たちの前にジーコが姿を現す。トニーニョ セレーゾ監督が試合の指示を終えるとジーコが口を開いた。
「20年前、鹿島アントラーズができて俺たちは初めてここで試合をして勝った。あそこで始まった伝統がいまここまでになった。これからはお前たちがこの伝統を守っていかないといけない。今日の試合は絶対に負けるな!」
中2日での試合は選手たちの足を重くさせていたが、この言葉で力を得る。円陣を組むと、キャプテンの小笠原満男が最後に全員に語りかけた。
「ジーコが来てるんだから、絶対に負けられないぞ!」
その言葉通り、絶対に負けたくないという闘志を剥き出しにした試合が始まった。
とはいえ、いきなり圧倒できるほど名古屋は甘い相手ではない。鹿島のバックラインに高い位置からプレスをかけ、ロングボールを蹴らせようとする。当然ながら名古屋は田中マルクス闘莉王、増川隆洋が最終ラインにおり、鹿島はダヴィを欠いている。高さの面ではかなり不利となり押し込まれる時間帯が続いた。しかし、右サイドで起点をつくるようになると反撃を開始。大迫勇也、柴崎岳がゴール前でチャンスを迎え怒濤の攻撃を見せた。
ところが、先制点は名古屋にもたらされる。24分、右サイドを田中隼磨が駆け上がり、中央のケネディがDFを引きつけると逆サイドにいた小川佳純がフリーに。なかに絞っていた西大伍が急いでマークに戻ったが、小川が落ち着いてゴールに蹴り込み名古屋が先制点をあげた。この場面、藤本淳吾が引いてパスを受けようとしたところに中田浩二が付き、それと入れ替わるように田中がサイドを駆け上がったが、マークに付くべき野沢拓也は反応できなかった。これまではそうした守備の綻びが見られなかっただけに、中2日の疲労が残っていることを感じさせた。
だが、意気消沈してしまいそうなチームを遠藤康が救う。
「ヤスの得点が大きかったですね。あれでまたみんなが勇気を取り戻すことができました」
岩政大樹が絶賛する得点で鹿島が息を吹き返した。
起点になったのは小笠原。名古屋のボランチの背後に遠藤が侵入したのを見逃さず、縦に強いボールをズバッと入れる。これをうまくトラップした遠藤は闘莉王、増川をかわしてゴールに流し込み、鹿島が前半で同点に追いついた。
後半は一進一退の攻防が続いた。しかし、セレーゾ監督の交代策が流れを大きく変える。この日、調子が悪く攻撃面でブレーキになっていた本山雅志に代えて中村充孝をピッチへ送り出す。そして、田中隼磨の攻撃参加に悩まされていた野沢を、トップ下に移して守備の負担を軽くし、田中にはフレッシュな中村をぶつけたのだ。これで攻守両面の問題点が一気に解決され、試合の流れが鹿島に傾いていった。
そして66分、柴崎が鋭い反応からボールを奪うと、そのまま前にドリブルでボールを運びチャンスをつくりだす。ゴール左に大迫が開いており、そちらにパスをすると思った瞬間、柴崎が選択したのは左からゴール中央に走り込んだ中村。名古屋の守備陣もこの意表を突いたパスに反応することができず、キーパーと1対1になった中村は落ち着いてニアサイドに流し込み、うれしい移籍後初ゴールを決めるのだった。ファン・サポーターも長らく待ち望んだ得点だっただけに、スタジアム中が歓声に包まれた。
さらに、この祝賀ムードに大迫がダメを押す。90+4分に、ふわりとゴール前に上がったボールを絶妙なトラップから流れるようにゴールへ向き直り、DFに対応する時間を与えないままゴールを奪ってしまった。大迫はこの日が誕生日。うれしいバースデーゴールとなった。
名古屋はこれでリーグ戦4連敗。良い時間帯があるにも関わらず、急にチームが崩れてしまうのは、勝っていない自信のなさが影響しているようだ。「いまはとにかく勝点」という闘莉王の言葉が切実に響いた。
鹿島は中2日という厳しい日程にも関わらず、相手よりも運動量で勝り、団結・結束というジーコ以来の伝統を力強く見せつけた。小笠原が中盤を締め、若い選手たちがゴールを奪う。その躍動にサポーターが声援を送る姿は、「若い選手というのは支えや声援が必要なものです。できればつねに選手たちを支え、彼らが自信を持って良い環境でプレーできる雰囲気をつくり続けてもらえたらと思います」というジーコの言葉そのまま。
鹿島が御前試合で強さを見せ、3-1で名古屋を下した。
以上
2013.05.19 Reported by 田中滋
「20年前、鹿島アントラーズができて俺たちは初めてここで試合をして勝った。あそこで始まった伝統がいまここまでになった。これからはお前たちがこの伝統を守っていかないといけない。今日の試合は絶対に負けるな!」というジーコの言葉を記す田中氏のレポートである。
この言葉に奮い立ったように中二日の日程的不利を覆す逆転勝利を掴み取った選手たちを讃えたい。
ジーコイズムは確実に鹿島に根付いておる。
得点を決めた若き選手たちもその誇りを胸に躍動しておるのだ。
これからも、鹿島の栄光を引き継いでいくために。
5月18日(土) 2013 J1リーグ戦 第12節
鹿島 3 - 1 名古屋 (14:06/カシマ/17,161人)
得点者:24' 小川佳純(名古屋)、40' 遠藤康(鹿島)、66' 中村充孝(鹿島)、90'+4 大迫勇也(鹿島)
それは試合開始直前のことだった。選手たちの前にジーコが姿を現す。トニーニョ セレーゾ監督が試合の指示を終えるとジーコが口を開いた。
「20年前、鹿島アントラーズができて俺たちは初めてここで試合をして勝った。あそこで始まった伝統がいまここまでになった。これからはお前たちがこの伝統を守っていかないといけない。今日の試合は絶対に負けるな!」
中2日での試合は選手たちの足を重くさせていたが、この言葉で力を得る。円陣を組むと、キャプテンの小笠原満男が最後に全員に語りかけた。
「ジーコが来てるんだから、絶対に負けられないぞ!」
その言葉通り、絶対に負けたくないという闘志を剥き出しにした試合が始まった。
とはいえ、いきなり圧倒できるほど名古屋は甘い相手ではない。鹿島のバックラインに高い位置からプレスをかけ、ロングボールを蹴らせようとする。当然ながら名古屋は田中マルクス闘莉王、増川隆洋が最終ラインにおり、鹿島はダヴィを欠いている。高さの面ではかなり不利となり押し込まれる時間帯が続いた。しかし、右サイドで起点をつくるようになると反撃を開始。大迫勇也、柴崎岳がゴール前でチャンスを迎え怒濤の攻撃を見せた。
ところが、先制点は名古屋にもたらされる。24分、右サイドを田中隼磨が駆け上がり、中央のケネディがDFを引きつけると逆サイドにいた小川佳純がフリーに。なかに絞っていた西大伍が急いでマークに戻ったが、小川が落ち着いてゴールに蹴り込み名古屋が先制点をあげた。この場面、藤本淳吾が引いてパスを受けようとしたところに中田浩二が付き、それと入れ替わるように田中がサイドを駆け上がったが、マークに付くべき野沢拓也は反応できなかった。これまではそうした守備の綻びが見られなかっただけに、中2日の疲労が残っていることを感じさせた。
だが、意気消沈してしまいそうなチームを遠藤康が救う。
「ヤスの得点が大きかったですね。あれでまたみんなが勇気を取り戻すことができました」
岩政大樹が絶賛する得点で鹿島が息を吹き返した。
起点になったのは小笠原。名古屋のボランチの背後に遠藤が侵入したのを見逃さず、縦に強いボールをズバッと入れる。これをうまくトラップした遠藤は闘莉王、増川をかわしてゴールに流し込み、鹿島が前半で同点に追いついた。
後半は一進一退の攻防が続いた。しかし、セレーゾ監督の交代策が流れを大きく変える。この日、調子が悪く攻撃面でブレーキになっていた本山雅志に代えて中村充孝をピッチへ送り出す。そして、田中隼磨の攻撃参加に悩まされていた野沢を、トップ下に移して守備の負担を軽くし、田中にはフレッシュな中村をぶつけたのだ。これで攻守両面の問題点が一気に解決され、試合の流れが鹿島に傾いていった。
そして66分、柴崎が鋭い反応からボールを奪うと、そのまま前にドリブルでボールを運びチャンスをつくりだす。ゴール左に大迫が開いており、そちらにパスをすると思った瞬間、柴崎が選択したのは左からゴール中央に走り込んだ中村。名古屋の守備陣もこの意表を突いたパスに反応することができず、キーパーと1対1になった中村は落ち着いてニアサイドに流し込み、うれしい移籍後初ゴールを決めるのだった。ファン・サポーターも長らく待ち望んだ得点だっただけに、スタジアム中が歓声に包まれた。
さらに、この祝賀ムードに大迫がダメを押す。90+4分に、ふわりとゴール前に上がったボールを絶妙なトラップから流れるようにゴールへ向き直り、DFに対応する時間を与えないままゴールを奪ってしまった。大迫はこの日が誕生日。うれしいバースデーゴールとなった。
名古屋はこれでリーグ戦4連敗。良い時間帯があるにも関わらず、急にチームが崩れてしまうのは、勝っていない自信のなさが影響しているようだ。「いまはとにかく勝点」という闘莉王の言葉が切実に響いた。
鹿島は中2日という厳しい日程にも関わらず、相手よりも運動量で勝り、団結・結束というジーコ以来の伝統を力強く見せつけた。小笠原が中盤を締め、若い選手たちがゴールを奪う。その躍動にサポーターが声援を送る姿は、「若い選手というのは支えや声援が必要なものです。できればつねに選手たちを支え、彼らが自信を持って良い環境でプレーできる雰囲気をつくり続けてもらえたらと思います」というジーコの言葉そのまま。
鹿島が御前試合で強さを見せ、3-1で名古屋を下した。
以上
2013.05.19 Reported by 田中滋
「20年前、鹿島アントラーズができて俺たちは初めてここで試合をして勝った。あそこで始まった伝統がいまここまでになった。これからはお前たちがこの伝統を守っていかないといけない。今日の試合は絶対に負けるな!」というジーコの言葉を記す田中氏のレポートである。
この言葉に奮い立ったように中二日の日程的不利を覆す逆転勝利を掴み取った選手たちを讃えたい。
ジーコイズムは確実に鹿島に根付いておる。
得点を決めた若き選手たちもその誇りを胸に躍動しておるのだ。
これからも、鹿島の栄光を引き継いでいくために。