車窓の古書店

2023年09月30日 17時38分34秒 | ホラーのかけら

 

上りの南武線が武蔵溝ノ口駅に到着する直前、

右手に、アーケードのある商店街が見える。

 

 

商店街といっても、今や店の大半は飲み屋だ。

 

 

母親が溝の口の病院にしていた十数年前、

そこに1軒の古書店があった。

 

 

先日、歯科医院に行くため南武線に乗ったところ、

一瞬、あの古書店が見えた。

 

 

「まだあったんだ」

 

 

というのが正直な気持ちだった。

 

 

近々行かねばと思っていたが、

なかなか時間が取れず、

今日ようやく行くことができた。

 

このアーケード街の中ほどだったはずだ。

 



昼過ぎだったので、大半の飲み屋はシャッターを下ろしている。

 

 

3分もかからずアーケードを通り抜ける。

 

 

古書店はなかった。

 

戻ってみる。

閉まっているシャッターもしっかり確認する。

 

 

やはり古書店はなかった。

 

 

ネットで調べると、すでに閉店していた。

 

 

車窓から見えた、あの古書店はなんだったのだろう。

 

僕の願望が、今はなき古書店のまぼろしを見せたのだろうか。

 
 
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