橋本政権が、財政再建を政権の一つの目玉にしていたわけで、結果的にそれが日本経済のカタストロフィーを招いたわけでした。で、その橋本首相や、あるいは大蔵の主計局が財政再建を強く打ち出した理由なんですが、
将来へのつけを残したくない、だとか、
このままじゃ、いつかは国債消化ができなくなる、だとか
バブル崩壊で経済対策をバシバシやったんで、赤字が膨らんでゆくことにかなりの危機感があったわけですね。今と議論のレベルはほとんど同じですけどね。
本書によれば、もう一つあるんですな。
それは、米国クリントン政権で、財政赤字削減がうまく行ってて、その対抗意識というのが行政当局の中に、あるいは橋本さんや自民党の有力政治家の中にあって、日本でも是非削減したい、という機運っていうのか、空気が盛り上がった。
まあ、それは良いんですが、問題は、なぜ米国はうまく行ったのかってことなんですな。
ルーピン回顧録によるとですな、
ルーピンは、後に財務長官になるんですが、政権発足時には国家経済会議を仕切る役をやってて、その会議で、どうやって財政赤字を縮小するかということを議論したことを本書で説明してます。クリントンは大統領選で、財政赤字の削減を選挙公約にしてたんですね。で、いろんな議論が出てくる。
1..財政圧縮は経済の縮小を招いて不況になるんじゃないか、ッてなケインジアンもいたが、
2.財政赤字の縮小が、国債価格の引き上げ=長期金利の引き下げを通じて消費や投資の増加をもたらし、
3.景気拡大効果をもたらす
4.日本やなんかの海外の投資家も財政規律をみせることで米国債を買いやすくなるに違いない、
ってことになったそうで。
米国は、レーガンが大統領になって以来、ばしばし政府の支出を増やして赤字を拡大して、その赤字をファイナンスするんで、米国は金利がバカ高くなってて、おかげでドルも強くなっちゃって、貿易赤字も拡大、いわゆる双子の赤字に陥っていたのでした。
強いドルは望ましい、なんてやせ我慢しながら、やってたわけですが、
クリントン政権はその逆をやったってことですね。
財政赤字が高金利をもたらして投資や消費を阻害している、つまり、クラウディングアウト状態であるとの認識があって、はじめて、財政支出の圧縮に踏み切ったってことですな。
単に、赤字がいかん、というモラル次元のハナシで議論しているわけじゃないっていうのがポイントで。
これは、クルーグマンが、08年のリーマン危機の直後に財政支出拡大を繰り返し訴えた時の議論にもつながってて、
クルーグマン最新コラム2
『財政赤字が長期的にはよろしくない、というのは、政府借り入れが膨らむと、金利アップにつながり、結果的に民間の投資が抑制されて、成長率が落っこちるというのが理由だが、それは、通常のハナシであって、
But circumstances right now are anything but normal.
今は違うやろ、ってことなんですね』
つまり、財政問題は、長期金利との兼ね合いでも考えろってことで、クリントン時代は、長期金利が高くて、財政支出の削減に合理性があった、ということでもあるんですな。
クルーグマンが、これに続けて、橋本政権下での緊縮財政について手厳しく批判しているんですが、
『財政再建派、緊縮財政派は、金利をもっと引き下げることもできる。どうやってかというと、緊縮財政が不景気を長引かせるとの予想から、民間の投資が意図に反して減ってしまうことを通じて金利が下がる。回りくどいんですが、緊縮財政は民間投資を冷やしてしまうということです。
これは単なる仮説じゃなくて、
The first took place in 1937, when Franklin Roosevelt mistakenly heeded the advice of his own era’s deficit worriers.
37年の米国と、
The second episode took place 60 years later, in Japan. In 1996-97 the Japanese government tried to balance its budget, cutting spending and raising taxes. And again the recession that followed led to a steep fall in private investment.
1996年~97年の日本で実際に発生したことだ』
もう、モロ、橋本政権の緊縮財政を批判してますな。
あたしゃ、バラマキや無駄は大嫌いで、公共投資を増やしても全然問題ない、みたいな主張は×だと思いますが、モラルや対抗心、恐怖感による緊縮はひどく無様で、それこそディザスタラスになるんだっていうことは言えるんじゃないですかな。
97年以降の日本の姿がそうで、
今のままだと大変なことになる、みたいな煽りがはやってますが、
そうじゃなくて、もう、今が大変なことになってるんで、
これ以上はそんなに心配いらないんじゃないかと思うわけですな、てか何とかしろよ!!
将来へのつけを残したくない、だとか、
このままじゃ、いつかは国債消化ができなくなる、だとか
バブル崩壊で経済対策をバシバシやったんで、赤字が膨らんでゆくことにかなりの危機感があったわけですね。今と議論のレベルはほとんど同じですけどね。
検証経済失政―誰が、何を、なぜ間違えたか | |
軽部 謙介,西野 智彦 | |
岩波書店 |
本書によれば、もう一つあるんですな。
それは、米国クリントン政権で、財政赤字削減がうまく行ってて、その対抗意識というのが行政当局の中に、あるいは橋本さんや自民党の有力政治家の中にあって、日本でも是非削減したい、という機運っていうのか、空気が盛り上がった。
まあ、それは良いんですが、問題は、なぜ米国はうまく行ったのかってことなんですな。
ルーピン回顧録によるとですな、
ルービン回顧録 | |
ロバート・ルービン,ジェイコブ・ワイズバーグ,古賀林 幸,鈴木 淑美 | |
日本経済新聞社 |
ルーピンは、後に財務長官になるんですが、政権発足時には国家経済会議を仕切る役をやってて、その会議で、どうやって財政赤字を縮小するかということを議論したことを本書で説明してます。クリントンは大統領選で、財政赤字の削減を選挙公約にしてたんですね。で、いろんな議論が出てくる。
1..財政圧縮は経済の縮小を招いて不況になるんじゃないか、ッてなケインジアンもいたが、
2.財政赤字の縮小が、国債価格の引き上げ=長期金利の引き下げを通じて消費や投資の増加をもたらし、
3.景気拡大効果をもたらす
4.日本やなんかの海外の投資家も財政規律をみせることで米国債を買いやすくなるに違いない、
ってことになったそうで。
米国は、レーガンが大統領になって以来、ばしばし政府の支出を増やして赤字を拡大して、その赤字をファイナンスするんで、米国は金利がバカ高くなってて、おかげでドルも強くなっちゃって、貿易赤字も拡大、いわゆる双子の赤字に陥っていたのでした。
強いドルは望ましい、なんてやせ我慢しながら、やってたわけですが、
クリントン政権はその逆をやったってことですね。
財政赤字が高金利をもたらして投資や消費を阻害している、つまり、クラウディングアウト状態であるとの認識があって、はじめて、財政支出の圧縮に踏み切ったってことですな。
単に、赤字がいかん、というモラル次元のハナシで議論しているわけじゃないっていうのがポイントで。
これは、クルーグマンが、08年のリーマン危機の直後に財政支出拡大を繰り返し訴えた時の議論にもつながってて、
クルーグマン最新コラム2
『財政赤字が長期的にはよろしくない、というのは、政府借り入れが膨らむと、金利アップにつながり、結果的に民間の投資が抑制されて、成長率が落っこちるというのが理由だが、それは、通常のハナシであって、
But circumstances right now are anything but normal.
今は違うやろ、ってことなんですね』
つまり、財政問題は、長期金利との兼ね合いでも考えろってことで、クリントン時代は、長期金利が高くて、財政支出の削減に合理性があった、ということでもあるんですな。
クルーグマンが、これに続けて、橋本政権下での緊縮財政について手厳しく批判しているんですが、
『財政再建派、緊縮財政派は、金利をもっと引き下げることもできる。どうやってかというと、緊縮財政が不景気を長引かせるとの予想から、民間の投資が意図に反して減ってしまうことを通じて金利が下がる。回りくどいんですが、緊縮財政は民間投資を冷やしてしまうということです。
これは単なる仮説じゃなくて、
The first took place in 1937, when Franklin Roosevelt mistakenly heeded the advice of his own era’s deficit worriers.
37年の米国と、
The second episode took place 60 years later, in Japan. In 1996-97 the Japanese government tried to balance its budget, cutting spending and raising taxes. And again the recession that followed led to a steep fall in private investment.
1996年~97年の日本で実際に発生したことだ』
もう、モロ、橋本政権の緊縮財政を批判してますな。
あたしゃ、バラマキや無駄は大嫌いで、公共投資を増やしても全然問題ない、みたいな主張は×だと思いますが、モラルや対抗心、恐怖感による緊縮はひどく無様で、それこそディザスタラスになるんだっていうことは言えるんじゃないですかな。
97年以降の日本の姿がそうで、
今のままだと大変なことになる、みたいな煽りがはやってますが、
そうじゃなくて、もう、今が大変なことになってるんで、
これ以上はそんなに心配いらないんじゃないかと思うわけですな、てか何とかしろよ!!
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