さぶりんブログ

音楽が大好きなさぶりんが、自作イラストや怪しい楽器、本や映画の感想、花と電車の追っかけ記録などをランダムに載せています。

【読書録】メンデルスゾーン〜美しくも厳しき人生

2024-04-18 22:41:49 | 読書録

ひのまどか/リブリオ出版

小学校の音楽の時間に、「音楽家というのは貧乏だってみんな思ってるでしょ? でもメンデルスゾーンは金持ちのおぼっちゃまだったのですよ」と音楽の先生が教えてくれたのをいまだに覚えている。

確かにメンデルスゾーンはお金には苦労しなかったかもしれない。でもユダヤ人だということでベルリンでは言われなき差別と嫌がらせを受け、大変苦労した人だったのだ。むしろそっちの方を教えて欲しかったな。幼い頃キリスト教に改宗したけれど、そんなことはベルリンでは全く意味がなかったのね。

逆にロンドンでは彼の出自は全く問題にならなかった。バルトルディというキリスト教の洗礼を受けたことがわかる苗字を使う必要も全くなかったのだ。同じドイツでもライプツィヒでは極めて快適に過ごしている。ベルリンというのがそのように不快な土地であったとは知らなかったな。

フェリックス・メンデルスゾーンは天才的な人であり、作曲も指導も指揮もこなす。そもそも指揮棒を持つ今のスタイルの指揮を始めたのがメンデルスゾーンなのだ。そしてバッハのマタイ受難曲を皮切りに埋もれていたバッハの作品を世に出した。ベートーヴェンに対する理解も深かった。

本当にまじめで厳しくて完璧主義で、彼に指導された楽団や合唱団は大変レベルが高くなった。逆に指導や指揮に時間を取られると作曲の時間がなくなる・・そんな話どっかで読んだな・・そうだバーンスタインだ。

メンデルスゾーン→マーラー→バーンスタインの流れは指揮も作曲もこなす人たちの流れ。奇しくも皆ユダヤ人だ。

そしてワーグナーはメンデルスゾーンの中に潜むユダヤの要素を蔑視。私は、ヒトラーはワーグナーを利用しただけでワーグナーには罪はないと思っていたけれど、ワーグナーの中にすでにユダヤ人排斥の要素があったことを知るや否や、ますますワーグナーが嫌いになった。

思わず笑ったのが、メンデルスゾーンはゲーテにやたら評価されるのだが、そんなゲーテに対してメンデルスゾーンは「ベートーヴェンもちゃんと聴くべきです」と進言する。この本の前にベートーヴェンの本を読んでいて、ゲーテとベートーヴェンが不仲になった理由・・空気を読まないベートーヴェンが悪いといえば悪いんだが、ゲーテはベートーヴェンを嫌いになってしまい、彼の音楽を聴かなくなってしまっていたことがわかる。

メンデルスゾーンは38歳9ヶ月で亡くなった。忙しくて燃え尽きるようにして亡くなったから、やはり天才夭折型の作曲家といえなくもない。ナチスのせいで彼のゆかりのものは色々破壊されてしまったが、第二次大戦終了後、名誉が復活された。

メンデルスゾーンには確かに有名なヴァイオリン協奏曲や真夏の夜の夢、交響曲や無言歌、合唱曲などがあるし、そのうちの幾つかは私も歌い、演奏したことがあるけれど、メンデルスゾーンの曲や事績はそれだけではなく、まだまだ知られていない面が多い作曲家だということを、この本を読んで認識を新たにした。

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