ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

オペラ「ミレイユ」

2014-03-02 23:01:39 | オペラ
2014年2月8日新国立劇場中劇場で、グノー作曲のオペラ「ミレイユ」をみた(原作:F.ミストラル、台本:M.カレ、指揮:飯坂純、
演出:池田理代子)。

フランス語上演。日本初演。

19世紀プロヴァンス。地主の一人娘ミレイユは貧しい籠作り職人ヴァンサンと恋仲。だがミレイユの父は二人の結婚に反対する。
ミレイユには他に3人の求婚者がおり、その一人ウーリアスはヴァンサンに嫉妬し、彼を襲う。ヴァンサンは怪我をし倒れるが、
彼を殺してしまったと思い込んだウーリアスは恐怖のあまり幻影を見て誤って川に落ちて溺死。
ミレイユは重傷を負ったヴァンサンの回復を祈るため、「どちらかが不幸に見舞われた時はレ・サント・マリーへお参りしよう」
とかつて約束していた教会へ巡礼の旅に出る。彼女は教会にたどり着いたが心労と旅の疲れから力尽き、傷が癒えて駆けつけた
ヴァンサンに見守られて息を引き取る。

グノーの音楽はひたすら甘美で変化に富み面白い。

女性合唱は最初良くない。出だしが揃わなかったのが情けない。

ヒロイン・ミレイユ役の鈴木慶江はいつもながら美しく、多くの若者に言い寄られる役には説得力がある。

魔法使いタヴァンというのが登場し、これが最初から恋人たちに同情的で、この人(?)が逃げるウーリアスに呪いをかけたために
ウーリアスは死ぬことになるようだ。

ウーリアスは恋のために恋敵に打ちかかるが、致命傷を負わせてしまったと思い込み、罪の意識に苦しむ。つまりそれほど悪い男では
ないのだ。彼は渡し舟に乗って川の向こう岸に逃げようとするが、すでに運命は彼を逃がしはしない。
渡し守は白塗りの顔で、死神のよう。さらに川の中から亡者の白い手が幾つも伸びてきて彼を水の中に引きずり込む。
ただ、この恐ろしい場面で音楽が依然穏やかで美しいままなのには驚いた。はっきり言って違和感を感じた。仮にも人が一人死ぬという
のに…。

この直後の舞台転換に手間取ったのはいただけない。

主役の恋人二人を差し置いて、敵役ウーリアスの苦悩に時間を割いているのがちょっと変わっている。

鈴木は薄幸の美女をやらせたら天下一品。

ヴァンサン役の高野二郎がなかなかの好演。

パイプオルガンの音色で天国への道を表し、宗教的雰囲気の中、荘厳に幕となる。

あらすじを読んだ時は、女が砂漠を越えて遠い修道院に行きさえしなければよかったのに(二人共助かったのに)と思ったが、
考えようによっては、この話は、女性が積極的に自分を犠牲にして愛する男性を救う話と解釈できる。
能動的な愛を生きる女性は実に清々しく潔い。
コメント
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