車に行くと、車内で泣き叫んでいる一朗がいた。
「もう塾に行かない!」と。
私が「夜の遅い時間だ。外で話すことはできない。教室に来なさい」と。
なかなか動こうとしなかったが、
「大事な話だから来なさい」と諭すように話す。
泣きじゃくっていたが、車から教室に向かう動きをした。
お母さんが「連れていきますから」と仰られたので私は教室に戻った。
一朗とお母さん、そして私の話が始まった。
私 :「今日先生は嬉しかったんだ」
「一朗は自分で手を上げて発表できたじゃないか」
一朗:「・・・」
私 :「何がお前を苦しめている?何が嫌なんだ」
一朗:「・・・」
「・・・周りのみんなのやるのが速くて付いて行けない・・・」
私 :「一朗、スタートした時期が違うのでそれは仕様がないことだ。
人と比べない・・・。
前の自分と今の自分を比べて成長があればそれでいい。
人には成長速度の違いはある。時間を掛けないとできない子もいる。
時間を掛けないといけない者は、時間を掛けてやり切ることなんだ。
誰しも同じ様に行かない。自分が納得できるまでやり切る。
そして自分の前の壁を飛び越える。
そういった小さな成功体験の積み重ねを続けて行くこと。
この繰り返しが大切なんだ」
私の話を聞いていただいていたお母さんが、
わが子に向けて言葉を掛けていただいた。
母:「今日のあなたは自分から手が挙げれたんだよ。すごいことじゃない!
今まで英語なんて何もやって来てない一朗が手を挙げれた!
一歩も二歩も進んだよ。先生が一朗の姿を見て涙をながされたんだよ。
野球でも一緒じゃない。最初からできる子なんていないじゃない」
私:「一朗、先生な、来週の水曜日大腸検査があるが、明日キャンセルする。
大腸にポリープがあるとそれを切除すると1日検査入院となる。
そうするとお前たちの授業に来れない。
一朗の本気の頑張りが見れなくなる。
来週の努力の結果(小テスト)、頑張って来いよ!」
一朗:小声で「はい」と・・・。
そして1週間後、一朗がやって来る日を迎えた。
(続く)