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SFマガジン2011年2月号


SFマガジン2011年2月号 №659      早川書房

雫石鉄也ひとり人気カウンター

1位 天冥の標 断章五 サインポストB 小川一水
2位 Heavenscape           伊藤計劃
3位 ふるさとは時遠く         大西科学
4位 スワロウテイル人工少女販売処 蝶と果実とアフターノエルのポンセチ                      
   ア                籐真千歳 
5位 ダイナミックフィギア       三島浩司

 日本作家特集である。2月号である。昔は、SFマガジン2月号というと、創刊N周年記念特大号として、通常号の倍ぐらい厚かった。それが年末の大きな楽しみであった。復活して欲しい。
 さて、日本作家特集ではあるが、5編のうち純粋に今号のために書き下ろされた作品は「ふるさとは時遠く」だけ。他は、現在進行中のシリーズのスピンオフやら、亡くなった伊藤計劃の発掘原稿、刊行予定の長編の抜粋とか。これって手抜きじゃないの。
 さて、個々の作品だが、小川一水の「天冥の標 断章五 サインポストB」が抜群に面白かった。羊のゲノムとエイリアンという全く異質なモノを組み合わせた話。最後は壮大な結末となる。センス・オブ・ワンダーを感じた。傑作だ。
「Heavenscape」名作「虐殺器官」と並行した世界の話。ひょとすると、あの小説はこの話になっていたかも知れない。
 あとの作品では「ふるさとは時遠く」が面白かった。土地の標高によって時間の流れが違う。日本の中心地「高京市」は標高が高く時間の流れが速い。主人公は、そこからゆっくり時間が流れる故郷の低地へ帰ってきた。
 新連載が始まった。評論の連載で「現代SF作家論シリーズ」監修は巽孝之氏。1ヶ月1作家。国内12人海外12人の作家を、24人の評論家が論じていく。この連載は楽しみである。
 巽氏が連載開始にあたって、前説を書いておられるが、ちょっとひっかかる所が。昨年の夏、神戸文学館で「SF幼年期と神戸」が開催された。そのことに巽氏も触れておられた。その中で「小松左京や筒井康隆をフューチャーした」とある。小生、この企画のお手伝いをさせていただいた。企画に関わった者としてちょっとひと言。
 小松氏はイオの乙部さんから資料を貸していただいたり、協力していただいた。眉村さんは講演に来ていただいた。資料も貸していただいた。ところが筒井氏には全く協力がいただけなかった。文学館が依頼の手紙を送ったが返信がなかった。神戸在住の筒井氏の協力を得られなかったのは残念。
 第14回日本SF大会は1975年に神戸で開催された。そのSF大会関係の資料も多く展示されていた。筒井氏はこの神戸のSF大会の中心人物だった。実行委員長は会場に写真も展示してあった清水宏祐氏。清水氏は残念ながら一昨年亡くなっておられる。だから、この資料は筒井氏提供の物ではない。その多くは、当時同人誌ネオ・ヌル編集長だった岡本俊弥氏提供のもの。小生も一部貸し出した。
 で、現代SF作家論の1回目。鹿野司がグレッグ・イーガンを取り上げた。しかし、鹿野氏のこの文章どうにかならないか。前にも1度いったことがある。自分のコラムでだけあんな文章を書くのかと思っていたが、この評論でも同じ文章だった。読者は自分と同年輩か年下ばかりではない。年上の読者もいるのだ。鹿野氏の文章を読むと、なんで、こんな若僧にタメ口を聞かされなくてはいけない。と思う。
 で、肝心のグレッグ・イーガン論だが、イーガンのことについてはちょこっと触れただけ。ほとんどは自閉症について書いていた。巽さん、ちゃんと監修しなくちゃだめだよ。
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