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食堂かたつむり


監督 富永まい
出演 柴咲コウ、余貴美子、ブラザー・トム、三浦友和、江波杏子

 小川糸の原作は読んでない。だから、小生は、恋に破れた女が小さな食堂を開店する。それを下町の人たちが食べに来て、彼女を応援する。というような下町人情もんの話と思っていた。ところが、この映画、下町人情もんどころか、ファンタジーであった。つっこみどころ満載の映画ではあるが、つっこんではいけない。なにせこの映画、現実から完全に遊離した、夢幻の世界の話なんだから。
 インド人の恋人に去られた倫子は、ショックで声が出なくなる。しかたなく故郷の母のもとに戻る。豚をペットに飼っている母は奔放な女で、エキセントリック。自分の娘に倫子の倫は不倫の倫だなどという。事実倫子の父は判らない。
 倫子は料理上手。この料理の腕を生かして小さな食堂を開く。倫子の食堂かたつむりは、1日1組の客しか取らない。完全予約制。
 この倫子の料理がものすごくおいしい。食べると、恋が成就するなど願い事が叶う。
 声が出ないという設定だから、柴咲はセリフなしの演技だが、ブスッとした表情が悪くない。柴咲コウはぶっちょう面が似合う女優さんだ。柴咲のぶっちょう面演技もさることながら、余のエキセントリック演技は見事であった。このとんでも母の存在が、この映画の現実離れ具合を加速している。
 倫子の料理はおいしいらしいが、変わってる。ザクロのカレー、野菜のごった煮スープ。しかも参鶏湯とリゾットをコースで出すなんて、韓国料理やらイタリア料理やらよう判らん。極めつけが最後の結婚披露宴の料理。素材がなんせアレのアレだから。なんでこんな料理にしたかは、とんでも母の運命と大きく関わる。
 小生も料理するが、この映画の料理は再現しようとは思わない。実際に食べるとおいしいかとは思うが。
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