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とつぜん対談 第24回 日付印との対談

 今日の対談相手は、日付印さんです。長年、この会社のOLとして働いておられます。事務職の大ベテランです。彼女がいなければ、この会社の事務所は動きません。
 あ、ご本人が来られる前にいっておきますが、日付印さんは、いわゆる「お局さん」です。この会社では、彼女に逆らうとなにかと面倒なことになります。そのかわりに、頼るとこれほど、頼りになる人はいません。あ、お見えになりました。

雫石
 こんにちは。

日付印
 どうも。

雫石
 初めてお会いするのですが、日付印さん、予想してた感じとは違いますね。

日付印
 どう違うのよ。

雫石
 どうって。う~ん。

日付印
 どうなのよ。はっきりおっしゃい。

雫石
 いいにくいのです。

日付印
 私のこと、美人と聞いてのでしょう。

雫石
 はい。

日付印
 怒らないわ。私、50過ぎてるのよ。そりゃ若いころは、いいよる男を振り払うのに肩がこったものよ。

雫石
 そうでしょうね。もっと目鼻立ちにくっきりした方とうかがってましたから。

日付印
 確かに、若いころはお目目ぱっちり。お鼻すっきりだったわ。でも、こんな仕事を長年やってたら、こんな顔になるわよ。私の顔、のっぺらぼうでしょう。

雫石
 いえいえ、今もお美しい。和風美人でいらっしゃる。

日付印
 お世辞はいいのよ。毎日毎日伝票に印を押してりゃ顔もすりへるわよ。

雫石
 あの、まことにいいにくいのですが、それでちゃんと仕事できるのですか。

日付印
 いいにくいことを、ズバッというわね。確かに最近、私の仕事についてブチブチいう人がいるわ。

雫石
 すみませんが、ちょっとこの紙に仕事してもらえませんか。

日付印
 なによ。めんどうだわ。

雫石
 お願いします。

日付印
 ハイ。これでどう。

雫石
 うわっ。印になってないじゃない。ただの赤い丸だ。よくこんなんでリストラになりませんね。

日付印
 私を敵に回すと恐いから、会社は私を切れないのよ。この会社の女子社員は全員私の子分よ。いろいろエライさんの秘密を知ってるんだから。

雫石
 例えば。

日付印
 社長は女装が趣味よ。誰にも知られず女装クラブに行ってて、そのお金は会社の金を使ってるの。

雫石
 しかし、納入業者の受領書受付もあなたのお仕事でしょう。

日付印
 そうよ。

雫石
 これじゃ日付が判らないじゃないですか。この会社の支払いは月末締めでしょう。今月の納品か翌月の納品かわからないと困るでしょう。支払いがひと月ずれたら、納入業者も困るでしょう。

日付印
 いいのよ。そんなこと。私が今月といえば今月なの。気に食わない業者は翌月といってやるわ。だから出入りの業者も、みんな私の子分よ。

雫石
 そんなに会社で権勢を持っているのなら、女性ながらもっと出世して、女社長にでもなられたらどうです。

日付印
 いやよ。そんなバカなこと。私はヒラOLでいたいの。ヒラながら会社を裏から仕切るのが面白いのよ。バカねあんた。


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