雫石鉄也の
とつぜんブログ
遠いわが家
雪が降ってきた。予報では雨だが、日が暮れてから、急に気温が下がった。終電車を降りて、駅を出ると、地面が白くなりかけている。積もるかな。このあたりでは雪が積もることはめったにない。
コートの襟を立てる。風も出てきた。吹雪になりかけている。タクシーに乗ろうと思ったが、1台も停まっていない。しかたがない。歩こう。急いで歩けば、15分ほどで帰宅できる。今夜は鍋のはずだ。今から帰るから、鍋を火にかけ、酒を燗しておけと、女房に電話しておこう。こういう夜は、お鍋に熱燗というのが一番だ。
携帯をかばんから出した。電池切れ。しまった。会社で充電しておくべきだった。ま、いいか、女房のことだ。亭主の帰宅時間ぐらい推測できるだろう。鍋も酒も用意してあるはずだ。
雪も風も強くなってきた。気温もさらに下がってきた。たまらん。凍えてしまう。この道の一筋東にコンビニがあったはずだ。懐炉を買って、熱い飲み物でも飲もう。
おかしい。このあたりにあったはずだ。もうそろそろ灯りが見えてきてもいいはずだが。案外、遠かったのだな、あのコンビニ。あった、あれ、シャッターが閉まっている。「当店は○月○日を持ちまして閉店しました」ここ以外コンビニは知らない。しかたがない。
本格的な吹雪になった。気温は零下をかなり下回っているだろう。地面にはすでに積雪している。急ごう。
もうすぐ家だ。顔が痛い。手をポケットに入れているが、かじかんだ手はなかなか温まらない。首筋が冷たい。かじかんだ手をポケットから出して、襟を強く合わせる。首をすくめる。震えが止まらない。
家が見えてきた。灯りが見える。ほっとする。半分走るように玄関にたどり着く。チャイムを鳴らす。出てこない。もう一度鳴らす。早く出て来い。亭主が凍え死ぬぞ。玄関のガラスに影が。ドアが開いた。
「お帰りなさい。暑かったでしょう」
女房が何をいっているのか判らない。
「酒を燗してあるだろうな」
「きょうもご苦労さま。ビールが冷してあります。先にシャワーします」
靴をむしり取るようにして脱いで、家に上がった。テレビには高校野球が映っている。クーラーがガンガン稼動している。セミの鳴き声が聞こえる。部屋を通り越して庭に出た。抜けるような青空。真夏の太陽が照り付けている。熱風が顔に当たる。
「おいお前、これはどういうことだ」
振り返ると、知らない女が家の中にいた。
コートの襟を立てる。風も出てきた。吹雪になりかけている。タクシーに乗ろうと思ったが、1台も停まっていない。しかたがない。歩こう。急いで歩けば、15分ほどで帰宅できる。今夜は鍋のはずだ。今から帰るから、鍋を火にかけ、酒を燗しておけと、女房に電話しておこう。こういう夜は、お鍋に熱燗というのが一番だ。
携帯をかばんから出した。電池切れ。しまった。会社で充電しておくべきだった。ま、いいか、女房のことだ。亭主の帰宅時間ぐらい推測できるだろう。鍋も酒も用意してあるはずだ。
雪も風も強くなってきた。気温もさらに下がってきた。たまらん。凍えてしまう。この道の一筋東にコンビニがあったはずだ。懐炉を買って、熱い飲み物でも飲もう。
おかしい。このあたりにあったはずだ。もうそろそろ灯りが見えてきてもいいはずだが。案外、遠かったのだな、あのコンビニ。あった、あれ、シャッターが閉まっている。「当店は○月○日を持ちまして閉店しました」ここ以外コンビニは知らない。しかたがない。
本格的な吹雪になった。気温は零下をかなり下回っているだろう。地面にはすでに積雪している。急ごう。
もうすぐ家だ。顔が痛い。手をポケットに入れているが、かじかんだ手はなかなか温まらない。首筋が冷たい。かじかんだ手をポケットから出して、襟を強く合わせる。首をすくめる。震えが止まらない。
家が見えてきた。灯りが見える。ほっとする。半分走るように玄関にたどり着く。チャイムを鳴らす。出てこない。もう一度鳴らす。早く出て来い。亭主が凍え死ぬぞ。玄関のガラスに影が。ドアが開いた。
「お帰りなさい。暑かったでしょう」
女房が何をいっているのか判らない。
「酒を燗してあるだろうな」
「きょうもご苦労さま。ビールが冷してあります。先にシャワーします」
靴をむしり取るようにして脱いで、家に上がった。テレビには高校野球が映っている。クーラーがガンガン稼動している。セミの鳴き声が聞こえる。部屋を通り越して庭に出た。抜けるような青空。真夏の太陽が照り付けている。熱風が顔に当たる。
「おいお前、これはどういうことだ」
振り返ると、知らない女が家の中にいた。
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